06話『カラナ神国』
おはようございます。神官私たちの朝は、とても早い時間から始まります。今日も激務が待っている事でしょう。
まずは、神々が住まう天空祭苑まで歩いて出勤します。五分ほどで着くので、そこまで苦ではないです。
「おはようございます、聖王神様。本日も良き一日となりますように」
それから大界聖王神様に朝の挨拶をします。
ですが、ここからが大変なのです。
鬼頭祭神様を初めとして、陽宋祭神様、海命祭神様、氷舞祭神様は、寝起きの機嫌が尋常じゃないほどに悪い。
今は、冬季。つまり、氷舞祭神様が主に御仕事される時期なのですが、この時期に関係ない2人の神様は特に機嫌が悪い。
しかし、ただ機嫌が悪いだけならそれで良いんです。というのも、天空祭苑は少し混乱状態にあります。
鬼頭祭神様のミスを庇った多くの神官が国外追放され、当の本人も無期限の謹慎処分となっているのです。
え、何のミスかって? それは、私たちにも……
聖王神様はいつも『神たるもの常に責任感を持て』を口が酸っぱくなるほど言っておられます。
緩やかな昼下がり、暖かな太陽光を全身に浴びます。
こんな日は洗濯物を干すのが楽しくて仕方ないですね。
そんな穏やかな日常ですが、少しだけいつもと違うようです。
「鬼頭祭神様は、悪くありませぬ!何者かに嵌められたのです」
ここ最近あの方を庇おうとする神官が多くなってきている気がします。
それが少し狂気じみているように私は感じます。
私は聖王神様の担当神官の為、あまり言えた立場では無いのですが、少し変です。
一体彼らは何を?
「良き天気だな」
少し考え込んでいると、急に声をかけられた。それも聞いたことのある……
「こ、これは氷舞祭神様……!はい、とても良い天気でございます」
心臓が止まりかけた……
一神官に神様直々にお声をかけて頂けるなんて! それに私は元々はこの方を担当したかった……
「して、難しい顔をして何を考えておるのだ?」
この方には、お見通しだったようだ。わざわざ隠す必要も無いでしょう。
「はい、最近鬼頭祭神様の神官達がよく見えるなと……」
ここで変に隠すと、私にもあらぬ罪が被せられるかもしれません。
「そうか……確かにそうであるな」
と言って氷舞祭神様は、とぼとぼと帰っていく神官を眺めた。
その表情には、呆れだけでなく同情の念が感じられた。
「高亜君殿は、人望に厚いからな。致し方ないのやもしれぬ。だが、これはちと異常だ。私の方でも少し調べてみるとしよう」
鬼頭祭神様は、神々の間では高亜君殿と呼ばれる。氷舞祭神様が、ここまで興味を示すとは非常に珍しい。
きっと何かを感じ取ったに違いない。そう思うと、私も非常に興味が湧いてきました。
その時、神官や神々全てを集めるための鐘が天空祭苑に鳴り響いたのです。
この鐘が鳴った時は、正しく非常事態。急いで聖王神様の元へ向かいましょう。
「よく集まってくれた。早速本題に入るとしよう。現在、鬼頭祭神高亜君に謀反の疑いがある」
聖王神様が発したその言葉に、集まった神官や神は驚愕した。
鬼頭祭神様に限ってそんなことは無いと。
鬼頭祭神様は、天空祭苑きっての聖王神好きで有名なのです。
そんなお方が謀反など起こす訳ない、ありえない。
だが、ここで脳裏によぎることがありました。それは、無罪の罪を着せられた腹いせと言うべきでしょうか。
無期限の謹慎処分は、捉えようによっては神界からの除名処分とも取れるようです。
ですが、私は知っています。
聖王神様は近々それを解除すると。
しかし、こうなった以上それも叶わないかもしれません。
このままいくと、鬼頭祭神様は「大罪神」の汚名を着せられる。私に出来ることは無いのか……
やはり、真相を聞くしかない。――
私は、こっそりと天空祭苑を抜け出し鬼頭祭神様を探すことにしました。
しかし、大きな問題がありました。それは、どこにいるのか分からないのです。
先程から、姿が見えない。恐らく他の場所に行かれたのだろう。
「鬼頭祭神様はどちらに?」
歩いていた鬼頭祭神様の担当神官に尋ねてみた。しかし、返答は無い。それも、誰一人返してくれなかったのです。
明らかにおかしい、怖すぎる。よく見ると、彼らの目は虚ろだ。何かあったに違いない。
「私が天空祭苑を危機から守ってみせる」
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