057話『不穏』
「これで終わりかな……」
ルータッタとその他パーティーの連合パーティーは、獣王様からの依頼をそつなくこなし帰り準備を始めていた。
今日が藝華に着いて、三日目になる。もうこの気候にも慣れたものだ。
「アマンダイトはん、先行きますよ」
神乎に呼びかけられ、私は急いで数台の馬車の内の一つに飛び乗った。
「なんや、アマンダイトか。ほんま、落ち着きないなぁ」
そこに乗っていたのは、ロキ。そして知らない男の数人だった。
ロキは非常に優秀だ。戦闘能力はもちろん、状況判断能力が並外れて優れている。魔力量こそ普通だが、使い方が上手いのだろうか……私には分からないが、とにかく器用という言葉が似合う。
「そや、知っとるか? レイニィの噂」
「レイニィの? 知らない……」
ロキは、にやけ顔で話し始めた。
「あいつな、複雑やねんけど色々あって出来た国で領地貰ったらしいで。領主様っちゅうわけや」
「そう、なんだ……」
私は彼が少し遠い所に行ってしまった気がした。少し心に穴が空いてしまったかのような。
「私も頑張らないと……」
「ん? 何か言ったか? 」
***
人元歴459年3月、ギラスナ王国王都――
「お集まりの紳士淑女の皆々様、お待たせ致しました。ギラスナ王国女王! ミタビア陛下の御成でございます! 」
はぁ……憂鬱だ。なんで俺がこんなパーティーに出席しなければいけんのだ。
俺は今、急に呼び立てられてミタビア主催のパーティーに来ている。どうやら各地の領主や、貴族やらが集められているようだ。
俺、そんな偉い友達いないしなぁ……帰りたい。
「お、君は確か……レイニィ君だったっけ? 」
壁際で気配を消していると、急に声をかけられてしまった。女の人の声だ、誰だろう……
「お初目にかかります、レイニィ・ワインデッドと申します! ……って、キズナさんか」
恐る恐る顔を上げると、そこには一度会ったことのあるサーペント領の領主である、キズナさんが立っていた。
「僕で悪かったね」
彼女の頬が膨れた。ご立腹のようだ。
「すいません、どうも緊張してしまっていて……」
そう言うと、キズナさんは少し機嫌を直してくれたようだ。
「おじょう……」
キズナさんの後ろにいた、性別不明の黒い人が彼女に何か耳打ちした。
従者か……あれ、そういえばスズテナさんどこ行ったんだ? 目を離した隙にどこか行ってしまった。
「レイニィ君。ちょっと話がある」
その従者からの話を聞いて、彼女の様子が変わった。
今までとは打って変わって、いつにもなく真剣な表情だ。
彼女の後ろを歩き、パーティー会場の二階。その奥にある一室へ入った。あれ、俺……何かしたのかな。
「遅いぞ、キズナ」
「まぁまぁ……」
その室内には、既に二人の男が座って待っていた。
「まぁまぁ、そう言うなよ。僕だって頑張ったんだからさ」
「何をだ……おや、君がレイニィ君か。初めまして、俺は東雲清和だ。よろしくな」
始めにキズナさんに、遅いと文句を言っていた男。東雲清和は、自己紹介をして軽く手を振った。よろしくという意味だろう。
「これはこれは、あのロメニアーティ公の……おっと、私は結城秦衛という」
もう一人の男は、結城秦衛……どちらも超大物じゃないか……二人ともラインアース王国時代から有力貴族のトップオブトップを走る、俺は次元の違う人達だ。
「お二人のお噂はかねがね、お会いできて光栄です。改めまして、レイニィ・ワインデッドと申します」
俺はきちんと自己紹介をして、頭を深々と下げた。
「ワインデッド……そうか、君はワインデッドの末裔だったか! ははは、偶然というのも恐ろしいものだな」
清和は、ワインデッドという名を聞き言った。そして、俺の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
「お前の父親になるのか? ルーレットとは昔、仲が良かったんだよ」
「そうだったんですか、私は父の顔すら見たことがなくて……」
清和は自分の頭を掻き、それは仕方ねぇよと呟いた。
これ以上追求するのは止めておいたほうが良さそうだ。
「それで、キズナさん。なぜ僕をここに? 」
「あー、この二人に会わせたかっただけ! 」
彼女がそう言って笑った時、ドアが勢いよく開いた。
「あなた達、ここにいたのね! 」
入ってきたのは、女王ミタビアとスズテナさんだった。
「お止めしたのですが……」
「私だけ仲間はずれなんて……ずるい! 」
***
「そうだ、ずっと聞こうと思ってたんですけど……清和さんとか秦衛さんみたく、和名の人と僕やキズナさんみたいに洋名の人と分かれているんですか? 」
この世界に来てから、ずっと疑問に思っていたことを遂に聞けた。以前、一回皇女様に聞いたことがあったが、知らんわ。と言われてしまった。
「そうだね、それは私が答えよう。その原因は祖先を辿れば答えが見えてくる。この世に生きる人間は大きくわけて二つのグループに分けられる。一つは、自由王国レーイルナをルーツとする人間。こちらが和名の人が多い。そして、イングラテル皇国、こちらが洋名だね。簡単に言うとこんな感じかな」
ミタビアは、そう説明した。なるほど、そういう事か。少し納得した。
***
「姉様、あの男。どう思いますか」
「そうね、あれでも隠しているようだけど……ほぼ黒じゃないかしら。でも焦りは禁物よ」
二人は頭に着けていたホワイトブリムを着け直して、屋敷の掃除を何事も無かったかのように始めた。
掃除が粗方片付いた頃、王都に出かけていたレイニィとスズテナが帰ってきた。
その音を聞いて急いで玄関に向かい、二人揃えてお辞儀した。
「お帰りなさいませ」




