036話『天空祭苑』
「遂に今日があれから三日目の日か……! 」
俺が天空祭苑に招かれるという約束の日がついに来てしまった。
行く時はどんな感じなんだろう。急に転移させられるのかな、それともお迎えが来るのかな……何にせよ少し楽しみ。
「ご機嫌いかがでしょう。レイニィ君」
急に目の前に姿を現したのは、いつもと変わらずあの女神官だった。
「ちぇっ」
「もしかして今、私が現れたからと舌打ちしました? 私泣いちゃいますよ」
期待した俺が馬鹿だった。そりゃそうか、わざわざ新しい人行かせるより、今まで通り顔見知り行かせるわな。
「まぁいいですけど……そんなことより参りましょうか。神の住む国へ」
そう言い女神官は、俺の手を握り爪先で地面を軽く叩いた。
すると、いきなりふわっとした感覚が体中を巡り、目を開けると俺は真っ青な空の中にいた。
「飛び心地はいかがです? まぁ、悪くてもどうしようもないのですが。カラナ神国まではあと数分で到着するので、精々我慢してください」
たまにこの人ほんと口悪いよな。だが、飛び心地は悪くない。
それにしても良いなぁ、俺も自力で飛べるようになりたいな。
飛行術式とか無いのだろうか。
「さてと、さぁ着いた。ここがカラナ神国。そして、天空祭苑だ」
俺の目の前に広がる壮大な建物……これが噂の天空祭苑か!
思っていたよりもなんと言うか、これぞ神殿! って感じでは無いんだな。石造りではあるが、ゴシック建築っぽさもありつつ現代っぽさも孕んでいる……俺の語彙力じゃどうにもならないけど、とにかく壮大だ!
「下界より、レイニィ様がいらっしゃいました」
「やっと来おったか」
レイニィとやらがどれ程の男なのか、我の目で確かめてやる。あんな手紙を寄越すなど……生意気なやつだ全く。
以前、少しだけ対面したことはあるが……あまり記憶に無い。そんな生意気な奴なら、記憶に残ってると思ったのだがな……
「この扉の先に神はいらっしゃる。心の準備は出来たかい? 」
「もちろんだ」
大きな石造りの扉が音を立ててゆっくりと開く。さてと、神様ってのがどんなクソ野郎なのか……楽しみだ。
「よく来たな抗議者。歓迎しよう」
やっぱりそうだった。あの時、一番奥に座っていたでっかいおっさんが聖王神か。それに、抗議者なんて俺にピッタリじゃないか、死神などよりもずっとな。
「そのご様子ですと、僕がしたためた抗議書は読んで頂けたのですね。それで、本日はどういったご用件で? 」
聖王神の両脇に控えていた二人に睨まれた。
だが、聖王神が椅子の肘置きに頬杖ついているのが無性にイライラするんだよな……!
「お前無礼だぞ」
「今手打ちに……」
「やめなさい。ルナ、レオ」
二人はルナとレオと言うらしい。神様に怒られてしょんぼりしてやがる。これは傑作だ。
「今日お前を呼んだのは、少し話がしたいと思ったからだ。あの大罪神のしでかした件については悪いと思う」
何だ、思っていたよりも穏やかだ。てっきり殺されるのかと。
「我々も一度はあやつを捕らえたのだがな……易々と逃げられてしまった」
まだ逃げ続けてんのか、何がしたいんだろう。自分が悪くないなら逃げずにちゃんと話し合いでも何でもすれば良いのではないか?
それとも、それができない何かがあるのか? あ、そうだ。これは聞いておかないと。
「ところで、聖王神様は『悪者』について何かご存知で? 」
「あぁ、星占神の予言に出た者か。 我にも詳しいことは分からぬ。だが、大罪神はえらく気にかけておったな」
いくら聖王神と言っても、流石に詳細は分からないか。全く、何処のどいつなんだよ。
それから、しばらく色々と話した。前世の事や、転生後に起こった事など。しかし、聖王神はずっとその話に興味があるようには見えなかった。
そんな不毛と思われる時間が過ぎ、帰る空気になってきた。
「そろそろ、お開きの時間であるな。ご苦労であった。また来ると良い」
やはりか、やっと帰れる……長かった。
「お疲れ様、どうだった? 神様と話せるなんて滅多に無いよ」
「どうもこうも……不愉快でした」
女神官は、それを聞いてアハハと苦笑いするしかなさそうだった。
「あなたは、鬼頭祭神の居所知ってるんじゃないですか? 」
「え、どうしてそう思うの?」
「勘です」
女神官は、いきなりそう言われたからか少し驚いたように見えた。
俺自身もなぜこんな事を言ったのか、よく分からない。ただ単にそんな気がしたからだ。
「これは驚いた、私は何も知らない。そもそも、大罪神となった後は一度会ったことがあるかどうか……だからね」
俺の見当違いか。最近急に勘が冴えるような事が稀にある。古代遺跡のあの時だってそうだ、それにエリスが言うことだって何となく分かった。どうしたんだ、俺は。
「それじゃ、君を人間界まで送るよ。また会おう」
女神官がそう言った瞬間、ガクッときてそのまま意識を失った。その狭間で、「感が良いな……全く厄介だ」と聞こえたような気がする……
「知ってる天井だ……ってあれ、ここは」
目を覚ますと、ベッドの上だった。あれは、夢……じゃないよな。
「お客さん、そろそろ着きますよ」
「分かりました、ありがとうございます」
そんなことをしている間に目的地の、共和国とやらに辿り着いたようだ。歓迎してくれると良いんだがな。
さて、鬼が出るか蛇が出るか……楽しみだ。
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