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032話『藝華-⑨』

 「陛下、賊国(人和国)の首都もそろそろ落ちましょうぞ」


 ラインアース王国、王の間でその国の王は何とも良い知らせを聞いていた。しかし、その顔は曇ったままだった。

 ラインアース王国とロナー人和国間で起こったこの戦争も、そろそろ終わりが見えてきた。王国側の一方的な物だったのだが……首都陥落まであと一歩なのだ。


「はぁ……人和国にいる全兵を直ちに撤退させよ。これは王命である」

「何を仰いますか、王よ! 」


 その場にいた大臣達は揃って顔面蒼白になり、その王の無茶苦茶な命令に耳を疑った。


「聞こえなかったのか? 王命である」


 しかし、王は至って冷静だ。大臣達は凍りつき、しばらくして一人が走って部屋を出ていった。



 それからの国内の混乱は言うまでもなかろう。街は端から端まで戦勝だ! とはやし立て、お祭り騒ぎ。そんな中出された撤退命令……取り次ぎ締結された停戦協定。

 国民だけでなく、有力貴族に至ってもその理由は明かされることは無く、国内は国王に対する不信感で溢れ返りそうだ。

 そして、遂にそれは溢れてしまった。ある有力貴族が不信感を募らせる国民や貴族を束ね上げ、大規模な革命を起こしたのだ。


「遂にこうなってしまったか、一体どこから狂ってしまったのだろうな……」


 暗く、ひんやりとした部屋で一人王は頭を抱えた。残った側近は数少なく、大きくなり続ける革命運動を止める術も既に無い。王政が崩壊するのも時間の問題だろう。


「王! ここも既に危険です、こちらへ! 例の話、何とかなりそうです……! 」

「そうか……よし、行くとしよう」


 この状況を打破出来るわけではない、しかし王国を守るため唯一残された道。


「それでは行きましょう。ギラスナへ」


 ***


 人元歴457年1月。国内に発生した革命勢力を鎮圧出来ず、国王ら十七名が跡上都市国家ギラスナに亡命。同地で亡命政権を成立させた。

 そして、旧ラインアース王国領ではラズナール共和国が成立した。


 なぜ、王国内でそれまでに大規模な革命運動が起こったのか。

 それは、国王が敵国(人和国)の首都陥落直前で兵を撤退させたからだと言われるが、それは定かでは無い。それだけがきっかけだと考えない学者もいるようだ。その学者が提唱する説は、『ラインアース国王に対し、連盟・連合・協商のそれぞれ3人の国王が何らかの圧力を掛けたのでは無いか』というものである。言うなれば三大国干渉である。

 これもよく考えると理にかなっているところがある。問題のロナー人和国と、カラトニア連盟大国、ギリナスア連合大国、協商連合王国は四国で同盟を締結している。

 そう考えると、本当にこの説が正しいのではと思えてくる。

 だが、この判断は国王として正しいものでは無い。そこに如何なる理由があろうとも。


 ***


「ほんとに……何がどうなっているんだ」


 やっとの思いで古代遺跡から帰ってきた。

 気分が重い、何のやる気も出ない。エリスはまだ眠ったまま、ミズキは……あの光景を思い出すだけで胸の奥底が締め付けられる。

 自分の不甲斐なさにはもう飽き飽きしてきた。ロンとカテラが魔人だった。気が付かなかった自分に更にもどかしさを感じ、深く自己嫌悪に陥る。

 自分自身も大怪我と、魔力の使いすぎでもう一歩も動けない。詳しく聞くと、魔力が完全に底をついていたらしい。

 まぁだけど、王女様が無事に保護されたのは良かったな。


「この度は、私のせいで……本当になんとお詫びすれば良いのか……」


 獣王国藝華の第一王女兼現人巫女(あらひとのみこ)様。

 先程、山盛りの果物を抱えわざわざ病室まで来て、謝って帰って行った。その目からは大粒の涙が溢れていた。ほんとに良く出来た御方だ。

 その付き人さんから聞いたのだが、どうやらラインアース王国は実質滅亡したらしい。

 亡命政権とやらで何とか存続しているとかしてないとか……なんかよく分からん。生まれ育った故郷が無くなったと聞いても、不思議と悲しくなかった。感情が破綻してしまったのかな。



 重い体を起こして、全身の痛みをひしひしと感じながらため息をついた時、ドアがノックされた。誰だろうか。


「レイニィ、起きているだろうか。ギナーラだ」


 ギナーラさんか、彼女もきっとこの事件について責任を感じているのだろうな……俺がどうぞと言うと、失礼すると言って入ってきた。顔を見ると、少し泣いたのだろうか、目元が少し腫れていた。


「今回の件だが……全ては私の責任だ。私がもっと早く気づけていれば……」


 ギナーラさんは、言葉を詰まらせながら凡そ俺の予想通りの事を口にした。そして、驚くべき事も同時に。


「……あの男、バエルは私の幼馴染と言えば良いのだろうか……まぁ、色々と腐れ縁なんだ。少し、私の昔話を聞いてくれるか? 」

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