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024話『藝華-①』

 「ありがとう、おじさーん! 」


 延々と伸びる緑色の地平線。所々に木が立ち並び、巨大な岩がどっしりとその腰を構えている。青空を行く巨鳥と照りつける日光。

 まさしく、自然を詰め込んだかのような所だ。


「ここがエリスの故郷……」


 乗せてくれた貿易商のおじさんと別れ、港から少し歩くとだだっ広い草原に出た。

 地図を見る感じ狐人族ルーナットの集落はもう少し先のようだ。


「おーい、ミズキ大丈夫か? 」

「よ、よゆーよ……」


 ロンに背負われて、ミズキは死にそうな声でそう答えた。

 船酔いも行くとこまで行けばあんな風になるんだな。


「そういえば、まず冒険者協会行かなきゃじゃなかったっけ?」


 カテラが急に思い出したとそう言った。俺は記憶を遡り、エルフのお姉さんが言っていたことを思い返した。


「――では、あちら藝華に着きましたらすぐに冒険者協会へ向かってください。さもなければ不法入国者となりますので、くれぐれも気をつけてください」


 そうだった……危ない危ない、完璧に忘れていた。もし思い出せてなかったらと思うと……


「よ、よし……早く冒険者協会に行こう」


 ***


「こんにちは、冒険者協会藝華支部です。本日はどのようなご用件でしょうか」


 藝華の協会の受付嬢さんは猫耳かぁー!さすが獣王国だ……!


「入国の申請をしたいんですけど……」

「承りました……しばらくお待ちください」


 と言って、奥に戻ったお姉さんを待つこと数分……中々帰ってこない。

 四人は併設されてる酒場で藝華限定のスイーツを食べている……羨ましい!

 それにしても遅いな……何かあったのか?


「お待たせしました……! 少しトラブってしまって、失礼ですが……あなたがレイニィ様ですか?」


 トラブった……それで身分確認とは、絶対俺たちヤバいやつだ……! どうする……流石に誤魔化すのは無理がある、ここは正直に言うべきか……クソ、お姉さんの天真爛漫な明るい笑顔が逆に怖い!


「は、はい……そうです……」


 覚悟を決め、恐る恐る答える。すると、お姉さんの目がより一層輝いたように見えた。


「やはりそうでしたか! 貴方様が闇属性適正者……私、お会いできて光栄です! 」


 お姉さんは、カウンターから身を乗り出して少し早口でそう言った。……え? 闇属性適正者って忌み嫌われる感じじゃなかったか?


「す、すいません……取り乱してしまいました。混乱なされているのも分かります。ラインアース王国では闇属性というのは忌避されるものですからね……」


 打って変わったように急に冷静を取り戻したお姉さんは、よく分からないことを口にした。

 あ、でも待てよ……前にミズキが、こんな感じのことを言っていたような。


「そうなのです、ここ獣王国藝華では闇属性は逆に人々を救い、正しい道へと導く……そう!正しくかの英雄の様な物なのです! 」


 やはり、お姉さんは興奮気味にそう言い切った。

 なんか情緒不安定だなこの人……


「英雄? 」


 この世界では聞き慣れないその単語に少し引っかかった。勇者なら聞いたことがあるんだけど……


「あら、ご存知ないのですか? あのマァーサルカの英雄譚に出てくるやつですよ! 」


 ですよ! と言われましても、全くもって初耳です。藝華ではポピュラーなのだろうか、王国では聞いたことがない。


「とにかく、入国許可証を確認しました! 藝華を楽しんでいってください! 」


 そんなこんなでやっと正式に入国する事が出来た。

 これが冒険者だったから楽だったものの、一般だと更にめんどくさかったらしい……そう思うと寒気がする。


「あ、すいません! あと一つだけ良いですか? 」

「なんですか? 」

「これからすぐに王城へ向かってください。獣王様がお待ちです」


 最後に爆弾だぁ、それもかなり大爆弾だ……しかし、断る訳にもいかないのでとりあえず行くしかない。


「みんなー、これから王様のとこに行くぞ……」


 やっとエリスの故郷に行けると思ったのにな……もう目と鼻の先なのに……!


「しょうがないわね! 行くわよみんな!」


 船酔いから完全復活したミズキはいつもよりウザさが増しているように感じた。


 ***


「突然呼び立ててすまぬ、よく来てくれた」


 藝華の王都は、巨大な石壁に覆われていて難攻不落を体現したかのようだった。中央にある王城もそれっぽかったし。

 うーん、それにしても流石獣王だな……見た目が百獣の王と名高いあのライオンと同じだ。それにめちゃくちゃでかいし。絶対強いよこの王様。


「我はライオネル・スズラナだ。そしてこっちが……」

「私は獣王軍統括戦士長、ギナーラと言う。よろしく頼む」


 ギナーラさん、綺麗な筋肉が付いた大きな体に灰色の髪でフサフサそうな耳……あれどこかで見覚えのある耳と尻尾だ。


「もしかして、ギナーラさんは狐人族だったり……?」

「あぁ、そうだが。よく分かったな」


 やっぱりか! エリスと一緒だもんな。


「なるほどな、後ろに隠れてるその小さいのも狐人族だな」


 彼女は、俺の後ろに身を隠していたエリスを見つけ、腑に落ちた様にそう言った。


「えぇ、そうなんです。今回藝華に来たのもこの子の故郷に行くためで……」

「そうか、なら私が案内しよう。行く時になれば言ってくれ」


 うわ、この人めっちゃ優しい! 最初はその見た目もあってすごい怖い人だと思ってたが……やっぱり人を見かけで判断するのは良くないぞ……!


「あーそろそろ良いか? 他国のパーティーに頼らなければならぬ程にまずい状況なんだ」


 しまったという顔で、後ろへ下がるギナーラさん。

 そして俺たちを頼らなければいけないこの国の現状を聞くと鳥肌が立った。




「王女様が誘拐ね……」

「私たちが何とかしてあげないと! 」

「そ、そうですね! 」

「あぁ、俺たちができることならやろうじゃないか」

「だけど、ほんとに大丈夫なのこれ? 」


 カテラの指摘も痛いほどわかる。多分これ大丈夫じゃない。

藝華編が遂に始まりました!比較的短めになる予定ではいます!


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