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この転生に抗議します!  作者: 淡星怜々
第一章 ラインアース王国編
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010話『闇属性と夜ご飯』

 現在E級パーティーの俺たち《レーシィ》が、A級パーティーにならないと話が進まないと知って、不安がる俺を見てミズキは大声で笑いだした。


「おい、ちょっと笑いすぎだぞ。エリスも寝てるんだからな」

「あはは……ごめんごめん。君の顔が面白すぎてさ」


 頭に着けているよく目立つ白い髪飾りを弾ませながら、ミズキは笑い続けていた。


「全く……あと君じゃなくてレイニィだと言っているだろ?」


 何回も俺はレイニィという名だと注意するが、彼女は一向に直そうとしない。


「うーん、わかってるんだけどさ……なんかこう、上手く言えないけどね。所でさ、レイニィ君は何属性適正なのかな? 」


 どこか俺を小馬鹿にしたようなミズキの問いに、俺は若干の腹立たしさを覚えるがあえてそこはスルーしておく。それよりも、俺が抱える問題の方が大事なのだ。


「俺は……闇属性適正者だ。言うのが遅れてすまん……お前が嫌なら今からでも脱退してくれても構わない」


 俺が抱える問題、闇属性適正。巷では「世界から嫌われた属性」や「死神」と揶揄され、文字通り嫌われている。


「あー、世界から嫌われた属性ってやつね」


 しかし、何故かミズキはそれを聞いても表情を一切変えず淡々としていた。


「君は、怖くないのか……? あの闇属性だぞ? 」


 驚きはしたが、何となく嬉しかった。今まで俺の問題《闇属性適正》を受け入れてくれたのは、母とエリスだけだった。

 実の父から嫌悪され、ロメニアーティ家に仕えていた使用人たちからも敬遠されてきた、慣れてはいたつもりだが、やはり悲しいものなのだ。


「えぇ、少しも怖くないわ。その闇属性について正しく知っていればね」


 ミズキはコルフィを飲みながらそう答えた。そして、口に付いたコルフィを拭いながら、話を続けた。


「良い? 闇属性っていうのはね、単に他の属性よりも保有魔力量が多くなってしまいがちの属性なの。そして、その膨大すぎる魔力量に上手く対応できなかった時、体内から魔力が溢れ始める」


 ミズキは、俺の表情を逐一確認しながら、丁寧に話を進めた。


「漏れ出た高濃度な魔力は、自分自身だけでなく周りにいる人間にも悪影響を及ぼし、やがて死に至らしめるって訳なの」


 初めて知った。衝撃すぎて返す言葉が頭から出てこない程だった。高濃度の魔力は、人体にとって害になるのか……初耳だ。

 というか、なぜその事実を皆は知らないんだ?


「そ、それなら、何で俺の周りの人間は大丈夫なんだ? 」


 とにかく、今一番聞きたいのはそれだった。

 今まで生きてきて、俺の周りで死んだ人はもちろん、何かそういう病気を患った人もいない……


「何でだろうね。君が特別だからなのかな」


 ミズキは考える動作を一通り見せたが、それが真剣なものなのかは分からない。

 どういう事なんだ、もう頭が痛くなってきた……


特異能力ユニークスキルっていうのがあるんだけど……多分関係ないね」


 その特異能力という物は、獲得出来るのは非常に稀で、神からの贈り物と呼ばれるほどらしい。

 俺がそんな大層なものを授かっているとは……残念ながら考えにくい。


 だが、そうなると……余計に訳が分からない。


「どうして闇属性は、こんな扱われ方をしているんだ……」


 幼少期から理不尽に嫌われ、邪魔者扱いされてきた。これが人生一周目だったなら、とっくに心が折れていただろう。


 いや……実際問題、既に心は折れかけていた。

 だから父親が死んだ時、何も思わなかったのかもしれない。


「そんなの知らないよ。ただ、そんな思考を持っているのは、この国と二つの大国くらいよ」


 そう、なのか……

 二つの大国か……この世界の全てを牛耳っている。と言っても過言では無い程、絶大な力と栄華を誇る国。

 この国の北部にあるカラトニア連盟大国と、南部のワリナル大陸にあるギリナスア連合大国だな。俺でも名前くらいは知っている。


「ね、ほらエリスちゃんが起きるまでに夜ご飯作っちゃお」


 それからミズキは打って変わったように眩しい笑顔を見せながらそう言った。

 そして、キッチンの方へと消えていった。


「うーん……ここは、どこ? 」


 目を擦りながらそう言ってエリスはベッドから身を起こした。

 その顔はまだ寝ぼけているようだった。


「おはよう、エリス。気分はどう? 」


 あの動揺ぶりを見てからだと、どうも気を使ってしまうな。

 でも、落ち着いたようで良かった。


「あ、はい。レイニィさん、エリスはもう大丈夫です。心配かけてごめんなさい」


 エリスは小さな頭を、また申し訳なさそうに下げた。

 そんな事しなくても良いのに……俺は、その頭を優しく撫でてあげた。


「はーい、お待たせ! さ、食べよ食べよ!」


 それからしばらくして、ミズキはそう言いながら、湯気が立つとても美味しそうな料理の数々を運んできた。食欲がそそられる良い香りが部屋いっぱいに立ち込め、まさに幸せの匂いと言うやつだ。


「これが海鮮と麺を一緒に炒めたやつで、こっちがパルクっていう、まぁスープだね。そして、メインディッシュがバルバルのステーキ! さぁ、召し上がれ!」


 バルバルってなんだろ、見た感じは牛肉っぽいな。パルクはミネストローネに似たような見た目だ。


「いただきます! 」


 三人声を揃えて合掌する。どこの世界でもこれは変わらないんだな。

 思った通り、バルバルはまんま牛肉だった。パルクはミネストローネというより、赤い色をしたクラムチャウダーのようだ。麺料理もパスタとは違った感じで美味しかった。




「食べたー! ご馳走様、ミズキは料理もできるんだな」

「はい、お粗末さまでした。私を舐めちゃいけないよ? これくらい朝飯前ってもんですよ」


 ミズキは鼻を高くして誇らしげに平面の胸を叩いた。しかし、それほど美味しかった。エリスも満足気だ。


「それでね、レイニィ。大切な話なんだけどね、聞いてくれる? 」

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