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時空機士クロノウス  作者: 宰暁羅
凍結機士編(前編)
96/119

凍結機士編(前)IF・望んだ未来、望んだ世界

凍結機士編(前)のIFシナリオです。

果たして、どこら辺からIFシナリオが始まっているのか?

予想してみると面白いかもしれません。多分、答えられません(笑)




 観客席は、大観衆に埋め尽くされていた。

 聞こえてくる、熱狂の大歓声の叫び声。

 それらが三人の名前を叫んでいることに、気付かぬことは出来ないだろう。


 コハル様! コハル様!!!

 ロォズちゃん! ロォズちゃん!!!

 パレーダたん! パレーダたん!!!


 三人の名前が次々と吠えられる。

 人々は求めているのだ。

 これから決戦に赴く我らに、勇気と感激の調べを与えてくれる者たちの名前を。


「……コハル様、は分かります。ロォズちゃん、もまぁ分かります。何故、私は野太い男の人の声で……」

「まぁまぁ。人気はあるのはいいことだぜ?」

「そうですよ。パレーダ、私達の中で一番男性人気が高いんだから。儲けもの、って思わなくちゃ」

「それは……はぁ、そうでしょうね。私のファンになってくれる方々に、文句などありません」


 ステージの端。

 黒いカーテンに仕切られたその舞台袖に、名前を告げられた3人が集められていた。

 皆が皆、綺羅びやかな衣装で、己の出番を待ちわびている。

 一人はパレーダ。九夜小春の指揮する天空騎士団在籍の、キーボーディスト。

 一人はロォズ。天空騎士団待望の新人騎兵であり、ドラマー。

 そして、一人は小春。先代勇者の実の娘にして、烈風機士の大神官。戦場では『奏でる戦乙女』の異名を誇る、ギタリスト。

 彼女たち3人が、ムー大陸において初めて生まれたバンド『プリンセス・ヴァルキュリア』のメンバーであり、今宵、兵士たちにその音楽を伝えるために招集された鼓笛隊であった。


「ん。みんな揃っているな」

「鮫介! ちゃんと来てくれたんだな!」

「そりゃ、呼ばれたからな。パレーダ、ロォズも、今日はよろしく」

「はい、よろしくお願いします」

「『時空』の大神官様までいらすとは、ロォズ、感激です!」


 そこにひょい、と姿を現したのは、時空機士の大神官、音無鮫介。

 現代の勇者にして異世界からの来訪者、そして小春の婚約者でもある彼は、小春が手に持っているギターと似て非なる楽器を持っていた。

 それこそは彼の愛用の楽器、ベース。そう、彼はベーシストなのだ。


「しかし、今更だが……お前らみたいなガールズバンドに男の僕が参加するのは、本来、あまりよろしくないことなんだがな?」

「なんでだ? あたしの婚約者なんだから、もっと胸を張れよ」

「……まぁ、お前が僕を婚約者として吹聴しているみたいだし、そういう空気があるなら、構わないけどさ」

「そうですね。私たち『プリヴァル』のファンで、コースケ様の名前を知らない人はいないでしょう」

「なにせコハル様が、ライブをする度にコースケ様の名前を出していますからね! まぁ指輪も付けっぱなしですし、公然の秘密ってやつですよ!」

「そうか……そうなのか……そうか……」


 ずぅん、と沈んだ顔で小春の顔を見やる鮫介。

 しかし小春はよく分からない、といった様子で首をひねった後、にぱっと太陽のような笑顔を浮かべ、


「よく分かんないけど! お前が心配するようなことは何もないと思うぞ、鮫介!」

「……まぁ、ライブには街角で演奏してたころからたまに参加してたしな。余計な心配だったか……」

「? 余計な心配って、どんなだ?」

「僕とお前が婚約者って話が無かったら、パレーダもロォズも僕が食ってるって話になってると思うよ」

「まぁ、そうでしょうね」

「??? コースケ様は食人鬼なのですか?」

「いや、そういう意味じゃなくて」

「だったら、大丈夫ですよ! コースケ様が遠慮する必要なんかありませんって!」


 ロォズもまた、にかっと小春と同じく太陽のような微笑みを浮かべる。

 瞬間、その場にいた小春とパレーダが「ぐぉぉ!」と怪物のような叫び声を上げ、その場に崩れ落ちた。


「せ、聖人! 聖人か、ロォズ!?」

「眩しい……っ! 目が灼かれるわ……っ!!!」

「えええっ!? だ、大丈夫ですか、二人とも!?」

「……お前ら、いつネタ合わせしたんだ? ……ったく」


 足をバタバタと上下に揺らす小春のミニスカートから伸びる白い太ももから目をそらし、顔を赤くした鮫介がボヤくように呟く。

 その時、新しく雇った調律師の青年が鮫介を呼びに来た。

 色々な仕事を転々としてきた、何も出来ないけれど調律だけは完璧にこなせる青年だ。青年は一礼をして、


「コースケ様! ベースの調律が完了しました! 様子を見ていただきたいのですが!」

「分かった、今行く……それじゃあ、小春。僕は行くけど、これ以上ロォズを困らせないようにな」


 鮫介が去ると、小春はつまらなさそうな顔で身を起こし、ブー垂れる。


「はぁ……せっかく一緒のライブだってのに。普通、婚約者のあたしには、もうちょっと、こう……何かあっても、いいんじゃないのか?」

「最近はライブで忙しくて、久しぶりに顔を合わせたんですものね。気持ちは分かります」

「パレーダ先輩もデガスドーガさんとしばらく会っていませんからね」

「待って、ロォズ。私が誰と会ってないって? んん?」

「わっぷ……か、顔近いですパレーダ先輩……っ」

「パレーダ、あまりロォズを脅すなよ。お前がデガスドーガをどう想っているかは、当のデガスドーガを除く天空騎士団のみんなが知っていることなんだからな」

「えっ……嘘……!?」


 顔を真っ赤に染め上げ、愕然とした表情を見せるパレーダに苦笑しながら、小春はロォズの顔を見上げる。


「それにしても……このバンドがここまで長い付き合いになるとは思わなかったよ」

「そうですか? 私は、このバンドを始めたときから『ビッグになる!』ってずっと思ってましたけど」

「ああ、そうじゃなくて……初めてお前と会ったときのことさ」


 小春は目を瞑り、初めてロォズと出会ったときのことを思い出す。

 部隊『青鋼の槍』の新人騎兵だった、ロォズ。私の案内役に指名され、パレーダと三人で、仲良くおしゃべりしたっけ。

 そこで、バンドを組むことを提案し、パレーダもロォズも乗り気で了承した。いや、パレーダにそう伝えると、「乗り気ではありませんでした」と否定されるのだろうけど……

 とにかく、あれからロォズを天空騎士団に誘い、バンドを組んで、私達は街路を中心に活動するようになった。

 このムー大陸では、まだまだバンド活動というものに厳しい。

 それは、イミニクスが絶えず襲撃してくる現状のせいなのだろうが……

 それでも私達は任務の合間を縫ってファンを地道に増やし、ライブ活動を成功させていった。

 おそらく、領主のアルキウスやマホマニテなどの後押しもあり――

 それでも、ここまでの人気が出たのはただ単に「虹の七機士の大神官がバンドをやっている」というだけではなく、実力も認められたから、だと信じたい。

 そうでなかったら、私達のバンドは「お遊び」として一蹴され、一ヶ月も経たないうちに飽きられ、忘れ去られていたことだろう。


「あの時、お前が死ななかった(・・・・・・)から、今のあたし達があると思ってさ」

「確かに、あの時は九死に一生を得ました(・・・・・・・・・・)。あの時のブラッディ・モールの攻撃が、後僅か横に逸れていたら……私の命は無かったという話です」

「無事で良かったよ。あの時は何度も病院に押しかけて、医者の先生から怒られったっけな。でも、おかげで鮫介が言うところの『命の大切さ』というのを沁み沁み思い知ったよ」


 ははは、と笑う小春は、やがてパレーダと共に真剣な表情をしてロォズに向き直り、同時に頭を下げた。


「……うん。これからもよろしくな、ロォズ」

「このバンドのドラムはロォズ以外考えられません。どうか、私達とこれからも仲良くお願いします」

「ど……どうしたんですか。嫌ですよ、私はいつまでも、3人一緒に頑張りますって!」


  頭を下げられたロォズは困惑し、慌てて二人の肩を抱く。

 ぎゅう、っと抱きしめられた二人は顔を見合わせ、やがてどちらともなく、ふふふ、と笑った。


「そうか、そうか。なら、今夜も盛り上げていこうぜ!」

「ええ。今夜はまた格別の舞台ですが、そんなものは慣れたもの。私達三人で、いつも通りの演奏をしましょう!」

「はい! 私達3人ならば、きっと大丈夫ですよ!」


 3人、一緒になって笑い合う。

 今宵。『プリンセス・ヴァルキュリア』の面々は、イミニクスを一掃するための最終決戦に参加する兵士たちの鼓舞を依頼されている。

 考えるだけで、大変な仕事だ。

 でも、やれることはやっておきたい。

 何よりも、今まで戦い抜いてきた兵士たちのため。

 それを想い、彼女たちは演奏という己の兵装で、彼女たちらしい戦場に立つ。


「よっしゃ、行くぞ!!!」

『応っ!!』


 そうして、リーダーの宣言と共に、ライブは開催された。

 勝利。

 ただ、その一言を願って。




と、いうわけで凍結機士編(前)のIFシナリオでした。皆さんの予想は当たっていたでしょうか? え、卑怯? ははは、なんのことやら(笑)

こうしてバンドを組んだ彼女たちは、数々の戦争をバンドの力で味方をバフし、勝利勝利。現在は最終決戦を前にして、気持ちを新たにしているのです。

ちなみに鮫介がベーシストなのは、ギター(とヴォーカル)は響太郎が独占しているからです(笑)ある日バンド活動がしたくなった響太郎は迷うこと無くギターを選択し、それを見た鮫介は自分からベースを選択してサポートに回ったのでした。大人ですねー(笑)

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