開始2
「ミニラ、手首にロープ巻くから下ろして」
「はぁい、パパぁ」
ミニラの両手首にロープ巻いて縛ると、そのロープに通して。ワッカ状のロープを2ヶ所作った。足場の悪い場所に立つときは、ほんの少しの支えでも随分楽に立てて。安全度も増す
「ミニラ、塔の一番上に明かりが付いてる所が目標だから覚えて。それで窓の所に手の先を乗せる感じで止まって欲しいんだけど、出来る?」
「まかせてえ、パパぁ」
俺が行くよりシルエットが行く方が、信用して貰う為の時間が省略出来るし。シルエットが乗ってるなら、とドラゴンに乗る不安も減るだろうと考え。迎えはシルエットに行って貰う事になってるので、ミニラへの指示が増える
「明かりが消えた、シルエット頼むな。1枚目の紙は用意したな、行ってこい!」
ミニラが飛び立つ、ゆっくり飛んでも1分と掛からない距離しかない
暗闇の中の作業なので、経過が全く解らない・・・時間が長く感じる。不安と心配が膨れ上がりそうになるが、ミニラの声で安堵する
「いっかいめもどるよお、パパぁ」
「落とさないようにな」
「まかせてえ、パパぁ」
直ぐに第一陣が到着して、直ぐに飛び立つって行く。総勢11名、片手に2人づつ4回の往復予定だ。感付かれる危険を避ける為に全員が無言を遵守中だから、不気味な程静かだ。4回目の往復が終わり、ミニラは上空に消えた。
「向かう先は、クリス姫様の館です。全てその時に話しますから。今は我慢して下さい」
城からかなり離れたので、要点だけ伝えた
のじゃの館の入り口には誰も居なかった、軽く扉を叩くと直ぐに扉が開き。見知ってる顔が現れる
「早く、中にお入り下さい」
招き入れられて、案内される
「こんな事じゃろうと、思うておったが。全員連れ出すとは大事じゃな」
のじゃが言う
「人質に取られたら面倒だからな」
普段の口調で言ったので、軟禁組が驚いた顔をする
「お歴々の方々、挨拶が遅れて申し訳有りませんでした。私はガンジークライム、ローレシアにて名誉飛龍将軍の名を授かりし者です」
俺の名乗りを聞いて、更に驚く軟禁組。母ちゃん話して無いのかな・・・
「お父様、お変わり有りませんでしたか?」
「シルエットか、久し振りだな。ん、綺麗になっておらんか?」
ギクッ!顔を弄ったのは俺です。他の所も・・・すみません
「シルエットはガンジーに恋をしておるでの。ガハハハ」
のじゃさん、爆弾投げないで下さる・・・
「シルエットが、恋・・・・・?」
父ちゃんが挙動不審に・・・
「お父様、わたくしなどより。お母様の方が余程、綺麗になられてますわ」
シルエットが方向転換させた
「それよ、何だあの若返り様は。驚いて呼吸も忘れたわ」
あれも・・・俺です。すみません
「お母様が喜んで、ガンジー様に手料理をご馳走されました」
こら!戻すなシルエット
「ガンジー殿、何故生きておるのだ?」
不思議そうな顔で見てくる、父ちゃんが・・・母ちゃんの料理っていったい・・・
「それくらいで良いじゃろ、今は大事な話が有るのじゃ」
のじゃの止めが入り、明日の話に戻った
明日の午後一から、審議会が始まるので立ち会って貰う考えである事。準備が有るので2時過ぎに、会場の教会に来て欲しい事。それまでは見付かる可能性を考え、この屋敷から出ない事。移動する場合は全員で、などを頼んだ
「姫、話がある。2人だけになれる場所はあるか?」
そう聞くと、ついて参れと言われ。案内された場所は、のじゃの寝室だった
「押し倒しても良いぞ」
ベッドに腰掛けたのじゃが言う
「倒すか!其れよりプレゼントの話だ。ゴロウが帰って来る」
のじゃに近寄り、耳元で囁いた
「それはまことか!」
のじゃも小声だ
「お前が一番欲しいプレゼントだろ、未だ誰にも言うなよ」
笑いながら小声で告げた
その日はのじゃが用意した部屋で眠り、翌朝少し遅い時間に起きた。長い一日が始まる
本来は近衛兵に対する為に、ブラパン家のブラパン騎士団の出動を要請するつもりだったのだが。ミラージュに脚下された、クーガーが居れば。近衛たちは、王命よりクーガーの命令を優先するのだそうだ。クーガーが近衛の総司令だとか・・・タイガン騎士団が出張って来ても、容易に対抗出来ると断言された
その為、危険を承知で。当初の予定に無かった軟禁組を教会に呼ぶ事になったのだが・・・
朝食の時もクーガーと顔を合わせたが、別に変わった様子も無く
「娘はお前の嫁には絶対やらん!」
世間の父ちゃん達の決まり文句は未だ言われていない
のじゃが小声でゴロウの名前を出さずに、誰が護衛しとるのじゃ?と聞いて来たので。こっちも小声で、魔槍将軍。と答えたらひきつった顔が笑えた
俺とシルエットは、いったんブラパンの屋敷に戻る。俺が衣服を着替える為に
仕立てた服は、白で見る者が見たら。海軍の軍服だと直ぐに解っただろう。詰め襟が堪らない、アクセサリーも金の鎖が3本胸のボタンから胸ポケットへ長さを変えて流れている
「見慣れない形の服ですが、上品で素敵ですね。何処に出しても恥ずかしくない貴公子振りですよ」
母ちゃんが褒めてくれたので問題無いだろう。
シルエットは、一緒に買い物に行った癖に声も出せないで口元を押さえていた
「では、行って参ります」
馬車を出して貰い、会議場の教会へ向かう
「待たせましたか、兎族族長殿」
教会の前に立っていた、爺さんに言う
「なんとまあ、着る物と言葉使いで。ここまで化けるとはのお」
笑い過ぎだろ爺さん
「打ち合わせ通り宜しく頼みます。族長殿」
爺さんは手を軽く上げて答える
さあ、猿芝居を始めよう
爺さんに連れられて教会に入り、最前列に座る爺さんの後ろに座った。全員の入場が終わり、タイガン、巫女、国王の順で入場。
国王は特設の玉座に座り、タイガンは壇上左の椅子の横に立ち。巫女は正面中央の女神象の横に立った。
「審議を始める前に、問おう。ラビト殿、発言権を持たぬ者が居るが何故だ?」
爺さんの名前はラビトだった、兎だからか?この質問は想定通り
などと考えてたら
「ガンジー、始まりましたね。私は何をすれば良いのです?」
女神様の声が、教会だから聞こえて当然なのだが・・・
「芝居は私が演じます。女神様は、私がお願いしたタイミングで。大きな雷鳴を1回鳴らして下さい」
「それだけですか?つまりませんね、奇跡とかは要りませんか?」
女神様は遊ぶ気満々だ・・・・
「結構です」
ゆっくり話す暇が無いので、さらりと流した
「これは、我等の信託の御子なれば。同席させ申した」
爺さんが予定の返事を還した。もしこれでも追い出そうとすれば、巫女も退出させなければならない。それでは国王派の負けが確定する
「信託の御子なれば、仕方が無いな。では審議を始める、議題を述べられよ」
タイガンが仕方無い・・・と認めた
「議題はブラパン侯爵以下11名の軟禁解除、及び復職に対して再審議して頂きたい」
爺さんが予定通り告げると、女神が涙を流した。白い象に赤い涙を流したので直ぐに解る
「女神様がならぬと仰せです」
巫女が言った
「女神様がお怒りです。その様な些事には関わっておらぬ。今回は許すが、次ぎは許さぬ。許さぬ証に雷鳴を轟かせよう。と仰いました」
俺が嘘を並びたてる
「偽りを申すな!巫女様は真実しか語っておられぬ。偽物なのはお前だ、真実を素直に申せ偽物御子よ」
タイガンが捲し立てる
「これは異な事を言われる。信託を疑うのは不敬で有る、信託を否定するには信託が無かった。と言う事を証明して見せよ、と言われたのはタイガン殿ですぞ。御子様が信託を聞いてないと証明して貰えるのですかな?それに、巫女様が信託を授かる折りに雷鳴が鳴らずばこの者の首を落とせば済む事では無いですか」
これも打ち合わせ通り
「我々も、審議を見ても宜しいですかな」
クーガー達が入って来る
「貴殿等には、軟禁の沙汰が下っておるはずだが。何を考えておられる?ブラパン殿」
タイガンが言う
「いやあ、我等の元に信託の御子様が来られて。女神様の信託を話されたので、塔から出て参った次第ですが。結果を見る迄はどちらの御子様か巫女様の信託を信じれば言いか分からず。沙汰に従う訳には参りませんな。しかし直ぐにも答えが出る模様ですし、暫く待つくらいは問題ないのでは?タイガン殿」
議会が始まった時点で国王派の負けは決まっている。議会が始まる前に手を打たれればヤバイな、くらいの賭け率だ。後は国王派が苦しまずに負けるか、苦しんだ挙げ句に負けるかの違いくらい
当然な事のように審議は可決されて行き、可決される度に赤くなったり。次々に可決される度に、涙を流すかどうか悩んだ挙げ句に不安で青くなったりと、国王派の顔色を見てるのも面白かったが、そろそろ大詰めを迎える
「今迄は審議じゃったが、次は決議についての議題を出したいと思う。議題は、タイガン侯爵家の爵位剥奪と現侯爵の投獄について。決議理由は御子様の信託で判明した女神様のお怒りを鎮めねばならぬ故の措置じゃな。決を取りたいと思う、賛成の者は・・」
爺さんの言葉が最期迄発せられる前に
「なりませぬ!女神様は御許しになりません」
女神象が赤い涙を流した
途端に低い地響きのような予鳴が響き、続いて耳を塞ぎたくなる程の雷鳴が鳴り響いたそのあと・・・
その場に居る者達は騒然となり、俺の顔が情けない顔になる
「みなに伝えます。この者ガンジーは私の愛し子です」
女神様の声が頭の中に響く
「女神様、あんまりです・・・そりゃあ、この世の生有る全ての生き物は女神様の愛し子に違いないです。嘘は仰ってませんが、この言い方は誤解しか生みません。そんなに私の女難に苦しむ姿が楽しいですか?」
思わず、女神様にぼやいてしまう
「ガンジー、雄々しく生きなさい。楽しみにしていますよ、ホホホホ」
雄々しく生きれば、地獄しか待ってないじゃないですか!
前世の記憶が言っている、女性は強かで恐ろしいと・・・・
その場の者達が女神様の声に思考が停まっているのに反して。教会の天井から落ちて来る人影が、俺の目にはリーフだと判別出来たその影は。タイガンの隣に降り立つと、剣を横に軽く振った。
タイガンの首がコロコロと床を転がる、前に飛び出し対峙する俺に深く頭を下げながら
「済まん、お前の言う通りだった。あそこはとんでもない所だったぜ」
謝るリーフ。やっぱりバカだ・・・
「やっぱり馬鹿だな、お前。お前の腕なら兵の百や2百は問題無いだろうが。ここを何処だと思ってる?教会だぞ!教会で血を流したお前は神敵にされるぞ・・」
呆れながら言う
「あ!内緒にしてくれ・・・」
逃げ去るリーフに、呆れが尽きない・・・・
「クーガー殿、前国王を拘束して貰えますか」
退位なんて関係ない、既に前国王で十分だ
「女神様に許されたいか?」
崩れ落ちて、放心している巫女に聞く
「えっ、あ、ゆ、許されるのですか?これ程の罪を犯したのに」
「女神様は言われた、お前の行動次第だと。牧場へ行け、行って子供達を守れ。子供達を慈しみ育て上げろ、それを成し遂げた時。お前は許されるだろう」
逃げて怯え暮らすのも、子供達の為に生きるのも。自分で決めて貰おう
偽巫女が慈母の鏡と言われるようになるのは、未だ先の話




