進展
散らかったテーブルを避け、使われなかったテーブルの椅子に座ってボウっとする俺。日課になりそうで怖い・・・
「ラビーはおるか」
いきなりのじゃが入ってきた
「着くのが早すぎないか」
まだ2日目だ、それも朝・・・
「馬車の運搬は冒険者に任せ、全員騎馬で来たのじゃ。徒歩は危険も増えるしのお」
他のメンバーは馬への世話をしているらしい
ラビーさん達がぞろぞろ降りて来て頭を抱えるお馴染みのポーズ。俺がいつものように耳をモフって行くと、スッキリした顔のラビーさんの目にのじゃが入ったのだろう
「クリス姫、久し振りだけど。何か用なの?」
少し口調を改めたラビーさん
「暫く滞在するのじゃ、勿論金は払う故。客じゃぞ」
のじゃが俺に視線を向けながら言う
「良いけど、何人なの?」
確認は当然ですね
「16人じゃ、ラムが死んだ赦せ。他にもランとテンとチェリーとユキーが死んだ」
辛そうに話す。のじゃ
「誰に殺られたんだい?」
怒りで言葉の修正が解除されてる・・・
「キングリー5匹に襲われての・・・」
「よく生き残れたね・・・」
ラビーさんが不思議そうにのじゃを見るが、のじゃの視線が俺に向いたのに気付き
「そう言う事ね。仇は討ってくれたようだね、ありがとう。ガンジー」
俺に頭を下げるラビーさん
「ラムさんて知り合いですか?」
聞くと
「従姉妹だよ。なつかれててね・・・」
「そうですか・・・」
と小さく返した
馬の世話を終えたシルエット達が店内に入って来たが。事件はこの時起きた・・・
俺を見付けたシルエットが俺に歩み寄り
「ご主人様、ご要望は御座いませんか?」
と聞いて来た瞬間、のじゃ達以外の周りが固まった・・・
「驚いたであろう、妾達も驚いたのじゃ。お前達にも驚いて貰わねばのお。ガンジーよ、妾が知っておるだけで3回を超えた故。回避不可じゃ!」
俺が何か言う前に、のじゃが被せるように言った後。カカかと笑いながら確定事項のように告げられた。パトロンドの獣人達は誇り高く力を尊ぶ気風が強い。そのような場所で、ご主人様と言う事葉は特別な意味を持つらしい。主従関係であれ恋愛であれ、終生尽くすと決めた相手にしか使わず。二回その言葉を許し、3度告げられた場合は、認めたと見なされる。とのじゃに教わる
「そうなのか?」
と聞く俺に。全員驚いた顔のまま、頭をカクカク前後する。ローラさんに聞こうと思って聞き忘れて。呑んだくれてた罰か・・・
「王宮一の才で誰もが認める気品と美貌。兄上でさえ断られた。氷と呼ばれたシルエットが、ご主人様と呼ぶのに何が不満なのじゃ!」
のじゃに又叱られた・・・でも王宮一の才は気になる
「シルエット、計算は出来るのか?九九は聞いた事が有るか?」
訊ねると
「計算は足し算引き算で有るなら何桁でも、ローレシアのクライム発祥の九九で有れば。既に習得済みで御座います。ご主人様」
これは拾い物だと思い
「解った、条件付きで認めよう。追いてこい」
二階へ向かうと、後ろから。のじゃの気が早いのお、とか。ローラさんの頑張ってガンジー。等の声が聞こえた
話しをしようと振り返ると、服を脱ぎ始めてるシルエットが・・・
慌てて止めた
「俺はお前と恋愛するつもりはない。それでも良いのか?」
「はい!」
「側近としてコキ使うが良いのか?」
「はい!」
「どんな苦痛にも、苦労にも耐えられるか?」
「はい!」
全てに嬉しそうな力強い返事が返って来て。気持ちが固まる
「これからお前は俺の側近だ。あくまでも側近だからな!俺の事はガンジーと呼べ」
側近を強調し2回も繰り返すあたりに漂うヘタレ感が哀しい
「はい!ガンジー様」
話は纏まったので階下におりる
のじゃに、早いのうと言われたが。無視して
「シルエットは俺の側近にしてローレシアに連れて帰る」
と告げて外に出る
「ミニラ来て」
「はぁいパパぁ」
ラハーニュへのミニラの着陸は許可を貰っている
「ミニラ、シルエットを乗せてキングリーを剥製用に狩れる?」
「だいじょうぶだよお、パパぁ」
「シルエットを守ってやってくれな」
「わかったぁパパぁ」
シルエットを手招きする
「シルエット、乗って袋に入れ」
「はい!」
ミニラに乗っていれば経験値は確実に入る。
シルエットの腰を持ち、持ち上げて。ミニラの頭に乗る手助けをする。シルエットの苦難の日々が始まった、試練とも言うが・・・
ラバーニュの北東30キロにも。帰らずの森が広がっている。モンスターの国と呼べる程に広大な帰らずの森が、パトロンドとドワーフの国交を妨げ。争いを防いでいた
「ただいまあ、パパぁ」
外に出て、ドラゴンが降りるから離れるように叫ぶ。1時間足らずでミニラは帰ってきて、足元にキングリーを置く
「大丈夫か?」
無事に帰ったシルエットがミニラの頭から降りるのを手伝いながら聞くと
「はい」
と元気な返事が返ってくるが、今晩は痛むだろうと少し心配になった
店内に入ってラビーさんを呼び
「パトロンドに来てから、かなり負担を掛けてますから。プレゼントです。ギルドで換金して下さい」
遠慮するラビーさんに押し付けた。今回パトロンドに来てから、銅貨1枚さえ受け取って貰えて無いのだから・・・・
キングリーは大きかった身長450センチ荷車にも載らない。パンシーさんがギルドに走り、剥製用のキングリーが有るからと告げて。半信半疑の職員を伴って来たのだが・・・キングリーを見るなり全力疾走でギルドへ戻り。材木を運ぶ巨大な荷車と職員10人を引き連れて来た。ギルドの職員が戻る迄は、ラビーさんとローラさんがキングリーに手出しされないように見張っていた。
ギルドへ付いて行ったパンシーさんが、青い顔して帰って来たので。何か有ったのかと聞いたラビーさんが固まり、慌てて駆け寄って再度聞いたローラさんとメロデイも固まったので。心配になった俺が聞くと。剥製にしてからオークションに掛けるが、今ならギルドが金貨2300枚で即買い取ると言われたらしい。
俺は、笑いながらギルドに売れば良いと言ってやった。余り高く売り過ぎると金と命の両方を狙われると。冗談の言葉を添えて
四人はカクカク頭を上下させて全員でギルドへ向かうようだ
のじゃが、何事じゃと聞くので。キングリーが金貨2300枚で売れたと教えてやると。それで当たり前なのじゃ、妾でも金貨千枚さえ持った事が無い故のうと言われた。俺の感覚が完全にズレてるらしい・・・・
「シルエット、買い物行くからついてこい」
「はい!」
歩きながら位階が上がる傷みに付いて聞くと3回程経験が有るらしいが、3回しか無いとも言える。今晩、地獄だろうなあ。そう考えると可哀想になった
綺麗な感じの宝石屋さんが有ったので寄ってみる
「好きな物を選べ」
私には勿体無いですとか遠慮するので、俺からのプレゼントが受け取れないのか?と言って無理矢理選ばせる。素面なのに、酔っ払いのおっさんの言い草である
シルエットの視線が少しだけ釘付けになって。移動した棚で物色している隙に、視線が止まった宝石を見る。白銀に輝く鎖に白銀に輝く台座、中央に透き通ったルビーが嵌められている。金貨5百枚の値札が付いていた。白銀の鎖を触って調べると高純度の白金だった。妥当な値段だ
「これにしますと言われたのは」
よく似たデザインの銀製の鎖に少し濁った小さなルビーが嵌められていた
店員を呼び
「これを包んで欲しい」
ど頼み、それとこれも頼むと言って釘付けだった首飾りを手に取り。シルエットの首に掛けてやり
「よく似合うな」
と誉めた。遠慮されるかと身構えたが、驚いた顔のまま固まった奴がいました。自分が気に入った部下にはトコトン甘い
金貨510枚を払い店を出て、シルエットが何か言い出す前に
「何故俺なんだ?」
と聞いた。確かに傷は治したが、ここ迄心酔される覚えが無い。ミニラにも怖がらずに乗れるのは、俺に対する信頼以外考えられない。長い付き合いなら解るが、初めて会ったその日にだ。その事で余計に分からなくなった
「わたくしは、自分に自信を持っておりました。少し頭が回る、少し他より美しい。たったそれだけの事で・・・・うわべだけで中身の無い男達を軽蔑さえしておりました。顔に傷を受け、鼻が失われ顔の形も変わってしまった自分を見て。死にたい、もう生きて行けない。と思ってしまった自分に自分の姿に気が付いてしまったのです。自分も中身が空だと・・・外見が変わっただけで才能等どうでも良くなるような些細な才能を誇り、簡単に失われる美しさを誇っていた愚か者だと。その時ガンジー様が私の前に立ち、醜い私の顔を見ても顔色ひとつ変えず治療して下さいました。その上で形が少し変わったと言うだけで許せと言われるガンジー様に神を見てしまいました。ガンジー様が神では無い事は解っておりますが、私の神なのです。そう思う事だけは譲れません、お許し下さい」
そう言われて納得してしまった。女性が顔にあれだけの傷を受けたら死にたくなるだろう、その絶望の最中に綺麗に治されたら。感謝の気持ちが突き抜けたんだろうと納得するしかない。
後は本人の頑張り次第で大事にしてやれば良い。優秀な部下は是非欲しい、校長先生+教師+会計士と言う苛酷な未来が待ってるが・・・
そのまま歩いてると武器屋が有ったので入るが。残念ながらシルエットが持てそうな武器は無かったので、ドラゴンの姉妹亭に戻る
「位階が上がる経験をした事が有るか?突然痛くなるやつ」
のじゃにいきなり質問した
「唐突じゃのお、当然有る。強くなる為には必要なのじゃ」
そう返してくれたのを幸いと
「多分今晩、シルエットが痛みに襲われるから介抱してやって欲しい」
と告げると、納得出来ないながらも
「もしそうなったら。任せるのじゃ」
と言って貰えた
ラビーさん達に大金を持って歩くと疲れるとボヤかれたのは笑い話だ
今日は、のじゃ達団体が来たし。大金運びで疲れたから休みだと正面の入り口に。本日休業の札が下がった・・・そんなに休んで大丈夫何だろうか・・・
夕方から始まった大宴会。酒がどんどん空けられる
「妾も胸を見られて、乳も触られたんじゃがのお」
シルエットの首飾りを目敏く見付けたのじゃが俺をからかう
「私も裸にされましたし触られました」
私も私もと、口々に言う女達
「私何か、パンツ1枚にされましたし。太ももとか触られました。責任取って下さいね!」
悪のりされてる気がする
「その上、妾達の前で堂々と風呂に入りおったのじゃ」
パンツ一丁が抜けてる
そこまでキョトンとした顔で聞いていたラビーさんが笑いだして
「お前達、怪我でもしたんだろう。だいたいガンジーを幾つだと思ってるんだよ」
って言ったが、一番驚いたのは俺だ。ラビーさん達の傷は治して無い
「19か20才くらいじゃな」
のじゃが言う
「確か15才だよな、ガンジー」
ラビーさんが聞き、俺が頷く
「「「「「「「「「「「「「「「「「え、えええっ!」」」」」」」」」」」」」」
ラビーさん達とシルエット以外が驚きの声を上げる。シルエットは俺の歳等どうでも良いみたいな顔してる
「俺が15才だと変かよ!」
憤慨すると
「変に決まっとるじゃろ!その強さ、その落ち着き様。普通とは到底言えんのじゃ」
あれ・・・アッサリ言い返されたとか考えてたら。シルエットが痛みに襲われだしたので、飲み会どころで無くなる
「この痛がり様は尋常では無いのじゃ。大丈夫なのか?」
のじゃが酔いが吹き飛んだように慌てる
「大丈夫だが、間違い無く痛い。身体を撫で続けてやってくれないか」
俺が頼むと、のじゃ達が頷いてくれたので。シルエットを二階へ運び寝かせた
店内は俺とラビーさん達だけになった
「さっき、俺が怪我を治しただけだろうと言ってたけど。何で知ってる?」
正直に聞くと
「裸を見たとか触られたとか全員で言われれば。それくらいは想像出来るし、ガンジーならやれそうだと思っただけだよ。ガンジーが女達を辱しめたと信じるより。まだ回復魔法の方が納得出来る、二日酔いも直せるしな。って言うか本当に使えるんだな」
誉められたのか、嵌められたのか微妙だ
「解ってると思うが、秘密だぞ」
口止めだけは、忘れない
「爺ちゃんが、何でも話してやると言ってたよ。その代わりギルドに金落とせだそうだ」
笑いながら言ってくれる。気を使わせてるなあ・・・・
「それと、何で15才の事を話題にしたんだ?別に隠して無いから問題無いけど」
単純な疑問だ
「一応15才は成人、でも16才迄はある程度許されるのが常識」
ローラさんが教えてくれた。ローレシアだと15才は成人だと認識されるが。パトロンドでは執行猶予が付くのか・・・獣人の方がおおらかなんだ。勉強になります
「それとねガンジー、クリス姫と一緒にいる娘達は全員族長かそれに次ぐ力を持つ者の娘達だからちゃんと覚えて置けばガンジーの役に立つ時も有るよ。全然覚えて無いでしょ」
メロデイさんに笑われたが、全員有力者の娘と言うのは侮れない
シルエットの事が気掛かりなのか全員が酒を控えて話をする。眠気も何処かに行ってしまった・・・明け方が近付き始めた頃にのじゃが降りて来た
「やっと眠ったのじゃ」
疲れた顔でのじゃが言う
「お疲れ様です」
俺が言うと
「フム、15才と思って見れば、15才に見えぬ事も無いのお」
酷い事を言われた気がする
「そう言う姫は、言葉使いが爺さんみたいじゃないか」
と言い返す。やっぱり大人気ない
「これは仕方ないのじゃ、のおラビー」
何故かラビーさんに振る
「姫の髪を見てみろガンジー。王族の中でクリス姫だけが、髪の色が違うんだよ」
言われて見直す。ゴロウは焦げ茶色だったが姫の髪は白と黒・・・・熊の白と黒。あ!
「パンダか?」
言って見た
「よく知ってたな。ずっと東の獣人の国の王族がパンダだ。その国の姫が輿入れしたのが六代前で、姫の爺様もパンダだったのだが。爺様が姫を可愛がって手元で育てた結果が、のじゃ言葉だよ」
解ったけど・・
「ラビーさんが話したのが何故だか解らないな。何か有るのか?」
凄い秘密とか言い難い事とか
「何回も聞かれるので面倒なのじゃ」
丸投げしただけだった・・・・
少し眠ろうと言う話になって部屋へ戻った




