パトロンドへ3
男爵邸で門番に来訪を告げて貰い、案内されて館の客間のソファに座った
「いらっしゃいませ、ガンジー様」
今日も小さなレディのおもてなし
「美味しい紅茶をありがとうございます。今日は私もお返しを致しましょう」
両手の間にみるみる生まれるクリスタル。30センチ程の高さ迄育ったら形容を整えていく。大きな尻尾が出来上がり両手に胡桃を持って、かじる寸前に口を少し開けた栗鼠の出来上がり。
キラキラした目で見ているミリアに
「どうぞ」
と差し出しながら、孫バカ殺すにゃ刃物は要らぬと頭では考えてる積もりで、子供には激甘のガンジーであった
「わぁ、素敵」
喜ぶミリアにデレッデレの二人組微笑ましい・・
ミリアが退室したので本題に入る
「漁師達の件は人魚達が採取した魚介類を漁師達が販売する事で緩和、人魚達のトラブル対策に女性冒険者51名を配置して当たる事になりました。後は男爵殿との税の交渉になります」
「対処が早いですな、税は売り上げの1割で問題無いでしょう。人魚の滞在に付いては何か利点が有れば名目が立つのですがな」
「利点は港と海岸付近からサメンとイカーン等の強いモンスターが激減する事では弱いですか?」
「何故、激減するかによりますな」
「人魚達が狩りまくります」
「人魚達で勝てるのですか?サメンでも5等級扱いの強さだと言うのに」
「サメン程度なら1対1で勝てる人魚が相当数居ますよ」
「そんなに強いのですか、過去の記憶とかなり違いますな」
「ご自分の目で確かめられますか?」
「是非」
腕自慢の騎士を選んで連れて行って貰う事にした
「リンリン、その騎士の相手して。殺さないようにね」
酷い言い方である。特に先日迄、奴隷と馬鹿にしていた騎士にとって。
現実は非情で有る。あっさり負けて、今度は真剣にやるからの言葉。二度目も負けて俯いてる。それを見ていたネリーの瞳が光ったのは秘密です
「十分利点が納得出来ました。人魚達の滞在費は免除します」
念入りに、騎士も兵士も近付けないようにお願いする。危ないので・・・・
昼過ぎに漁師達が帰ってくる
「最後は少し値引きしたけんど、全部うれただよ。これが全員の売り上げだで」
袋からはバラ銭の山が、その中から銀貨22枚をより出して漁師達に2枚づつ渡すと驚いた顔で
「昨日貰ったのに、又貰って良いだか」
「昨日の分は昨日の分です。これは今日の分、明日もお願いしますね」
リンリンに鉄箱の洗浄を任せて、袋にバラ銭を詰め込み冒険者ギルドへ
「これを入金して貰えますか」
ギルドのカウンターへ行き。受付の女性にバラ銭の入った袋とギルドカードを渡す
「かしこまりました。それとこれが依頼の明細です。お預かりした白大金貨だと56日で保証金が消滅致しますので。それ迄に依頼を取り下げるか、他地域の冒険者ギルドでも結構ですので入金が必要になります」
明細には51人分の1日当りの対価と1割りの手数料が書かれている
暫く待って居ると
「お待たせ致しました。入金が完了致しました」
と明細が渡された。銅貨385枚銀貨226枚金貨2枚。合計金貨28銀貨4枚銅貨5枚と書いてあったのを見て途方に暮れる。数えるのが面倒でギルドに来たが、コイン毎に分けて有る明細を見て納得してしまった。人魚達は馬鹿ではない、だが教育を全く受けて無い。数を数えるのと計算は別問題、硬貨毎の枚数は把握出来ても公約数何て解らない。お金を使った事が無いのも痛い・・数十枚の紙の束を電卓も無くメモ用紙で責算しながら幾つも有る大きな袋の硬貨の枚数を疲れた顔で数える自分の姿が見えた・・・・嫌だ!そんな面倒な事は絶対したくない!
砂浜に戻りネリーを探す
「ネリー、そろそろ仕事終わりの時間だろ?終わったら話しが有る」
「解った」
リンリンと漁師の扱いと手順について話を煮詰めた。もしトラブルが発生したら何も考えずに群島を目指せとも
ネリーが向かって来る
「話しとは何だ?」
「計算は得意か」
「パーティーリーダーだ、当然計算くらいできる」
ネリーの前に紙と筆を差し出す。三桁の数字が横に3つ並んで、三段有る。
「これはこれでこうだから、こうだ。これとこれもこうだから、こうだ。これとこれはこうなって、こうだ。」
全問正解だつた、心の中で万歳をする・・・3回
「ネリー、強くなりたいか?」
「当り前だろう」
「どんな事をしてもか?」
「悪事はしない!」
「悪事以外なら?」
「本当に強くなれるならやる!」
「よし!俺が強くしてやる。その代わり誰にも言わないと誓え!」
身体を見られるのは恥ずかしいから嫌だとか、それでも優しくしてくれるなら我慢するとか訳の解らない事を呟いてる奴が居る
「誓わないのか?」
再度強く言う
「誓うから強くして欲しい」
「なら両手を出せ」
「ミニラ、その辺に小さなモンスターは居るか1メートルくらいの」
「うんいるよぉパパぁ」
「俺は海岸の近くに居るから見付けて俺の側に落として欲しい」
「わかったぁパパぁ」
ネリーは右手の小指が無かった。小指1本と馬鹿に出来ない程役割は大きい、力が込められなくなるからだ
俺はネリーの手を調べる振りをしながらミニラの到着を待つ
「おとすよぉパパぁ」
少しして5メートル程離れた所にタヌキみたいなモンスターが落ちて来た
「ありがとうミニラ」
「いいよぉパパぁ」
「ネリーが強くなる為には、この見えない小指を見えるようにしないとダメだな」
一瞬息を吸い込み爆発するようにネリーが怒りをぶつけて来た
「ふざけてるのか!馬鹿にするな!」
「ふざけて等いない、俺が見えるようにしてやる!」
負けずに力を込めて言う、心では謝りながら
手を無理矢理引いてモンスターの前に行き座り込み。ネリーも座らせる。
「もし見えるように出来なければ、俺の小指をやるよ」
「な、何を言ってるんだ・・・・」
ネリーの小指の根元に触りながら傷口をほどいて再度構築して行く右手は後ろに回してモンスターを分解している。少しずつネリーの小指が姿を現し、全てが構築された
「ほら見えるようになった」
頭の中では、先にモンスターを用意すべきだったとか。余りにお粗末な指消え論とか反省会の真っ最中
「何なんだこれは、私に何をしたんだ」
ネリーは俺のお粗末論に突っ込むゆとりもない。当然だよな・・・・無い物が有るのだから
鉄は熱い内に打たないとダメと言うが、今のネリーはダメだ。もう少し落ち着かないと何時もの脅しが効かない
ただひたすら自分の右手を見詰めるネリーを見ていた
「ガンジー、貴方は神か?」
突然に言われなれた言葉が・・・
「違う、俺は手品師だよ」
「違う、私の小指は本当に無かった。13の時に失ったのだ」
「強くなりたいんだろ、良いじゃないか。指が見えたって・・それとも消してやろうか?そんなに不満なら」
途中から少し冷たい口調で告げた
「そうだな、折角ガンジーがくれたんだ。大事にしないとな」
「誰にも言わない誓いは守れよ」
「解った」
「約束は守ってくれるんだろうなあ!」
「身体でも何でも好きにすれば良い」
「それじゃあ、これ頼む」
そう言って、ギルドのバラ銭の明細を渡すと。????な顔になりながら
「これはいったい何なのよ!」
初めて聞いたネリーの女言葉
「漁師達の魚介類の売り上げのバラ銭集計お願いね。雨降り以外毎日だけど、納税の危機なんだ」
「何なのよ!私の覚悟はいったい何だったのよお~!」
ネリーの中では問題の焦点がすり変わり
自分が画策した人魚の未来型収益計画で自爆、パトロンド遠征計画の崩壊の危機を必死で回避したガンジーは疲れ切っていた
キンキン、カンカン、ブオン
早朝から俺は付き合わされている、怒りの納まらないネリーの稽古に。昨日迄とは違う鋭くバランスの取れた振り抜き、侮れない
「一晩で格段に強くなったな、たまに右手に力が入り過ぎるが。慣れればそれも無くなるだろう」
「確かに強くなった実感は有るから感謝してるけど。心はボロボロよ、どうしてくれるの」
言葉だけ聞けば怪しい会話、実際は喜劇でしかないのだが
「ちゃんと報酬も払うから、バラ銭の換金と集計明細頼むね」
力技で面倒な事から逃亡する
冷静に見れば、ネリーは強くなり。俺は計算を丸投げでウイン、ウインな結果なのだが。俺の機転がもう少し利けば会計士を雇い税金も丸投げで面倒も抱え込まずに済んだのだが後の祭
さぁ旅を続けよう
中古の幌馬車と馬を買い求め、人魚達が居ないから食生活に不安を覚えながら獣人達を率いて国境へ。獣人達は冒険者としてサクサク通れたのに・・俺だけ引っ掛かった。
「ガンジー閣下、ドラゴンが暴れた際にはありがとうございました。何度も目にして今日はダメか、今日こそダメかと何度も死を覚悟致しました。このご恩は閣下が戦われる時が有れば必ずや馳せ参じ、馬前にて果ててご覧に入れて見せます故。何卒一声お掛け下さいますように・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
長~い謝辞に捕まって
国境越えて1時間、やっと釘が刺せます
「話しが有る。整列!」
「お前達が冒険者登録をした時、殆んどの者の保証人は俺がなった。喧嘩をするなとか、男を騙すなとか、正義の見方になれ等とバカな事は言わない。ただお前達は海賊に酷い目に合った、だからお前達だけは盗賊や海賊になるな。俺がお前達を殺しに行くような事だけはさせないでくれ。どうしても困ったら人魚の国へ来い。ただでこき使ってやるから、解ったな!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」」」」」」」
120人の声が重なる
パトロンド王国を進んで行く、遥か上空にはミニラが飛ぶ
「お世話になりました!」
の言葉を残し1人、又1人と隊から放れて行く
少しずつ町の規模が大きくなり去って行く人数も増えていった
パトロンドに入って9日目、王都が眼前に広がっていた。パトロンド王国の首都ライオス、どうせライオン系獣人が初代の国王だったんだろうと思ってしまうのは俺だけでは無いハズ・・・・
王都では流石に半数近くが去っていったが、俺は今まで去る者達に何も告げてこなかった。女性を送れとも、仲間を守れとも。本人達の心に仲間意識が芽生えてると思っているので告げて無い。結構良い奴らだ
王都も素通りして、やっと第一目標に近付く。パトロンド王国ラバーニュに居るから遊びに来いって言ってたな、ラビーさん達
ラバーニュの町中をゆっくり進む、ウサ耳がイッパイ。あっちもウサ耳、こっちもウサ耳。モフりたい・・・隊列に居る、男ウサ耳は未だに違和感が抜けない。笑いを堪えるのも悪いから視線を外してたけど、この町中では違和感とモフりたいが半分づつ。視線のやり場に困ってたら、見慣れた形が・・・丸こいドラゴン。思わず見直したこんな大通りの真ん中に立ってたら変でしょミニラ。まあ、さいずは5分の1スケールって所だけど・・・・
「止まれ、食事にしよう。馬車を止めて中に入るように」
そう言い残して店内に入ると目に入ったウサ耳をいきなりモフった
「何すんだい!」
怒って振り返った顔が懐かしい・・・
「えっ?ガ、ガンジーかい?」
黙って頷く
「ラビー!」
えっ?ランプ兄さん?不思議そうな顔で呟くラビーさん。そうラビーさんの名前を呼んだのは。ウサ耳違和感の第一号、ランプって名前を初めて知りました。意識して聞かなかったが正解ですが
その後はもう無茶苦茶・・・・ランプの襟首を捕まえブンブン振るラビーさん。ローラさんに拘束されてる俺。ケタケタ笑うメロデイさんとパンシーさん。大人しいのはミネアさんだけ。
その日突然にぶら下げられた、本日休業の札
日も沈まない内から始まるドンチャン騒ぎ
「諦め切れずに探し廻って、やっとの思いで諦めたのに!何で生きてるのよ!ランプ兄さん」
泣き怒りのラビーさん
「生きてて悪いのかよ!ってかデカイ店だな・・幾らしたんだ」
驚く所が違う気がするランプ
「獣人奴隷を350人もあっさり解放するのは流石ガンジーさんとしか言えませんね。豪快なのか、欲が無いのか」
呆れるようにミネアさん
「オマケに俺達をパトロンドに自ら送るだけじゃ無くて。全員に冒険者登録させて、武器迄買い与え。当面の生活費として金貨5枚と銀貨2枚だぜ・・120人分も。信じられるか?」
自慢話のように語る違和感2号。我輩は違和感2号である、名前は未だ無い・・・・
「それくらいの事ならガンジーは簡単にやるよ。あたし等のパーティーにガンジーが加わったのはたった3日だけど。報酬は驚く無かれの金貨1250枚と3日間毎日の二日酔い」
メロデイさんがケタケタ笑いながら言う
「国中の貴族達から部下の家族の奴隷をぶんどるって、それも公爵の奴隷迄。どれだけ力技使ったんだか・・・」
パンシーさんもケタケタ笑う
「言葉は偉そうだが、一番働いてるのも将軍だった。こんな貴族は想像すら出来ない」
無口なガイがしゃべってる・・あ、この狼系獣人の名前は聞きました
「身寄りの無い子供達を引き取って育てる。流石ガンジー、私の弟」
ローラさんは相変わらずぶれない
尽きない話しに酒が進み夜も更けて行く
パトロンドの朝は遅い
日が登り切った頃に目覚め階下に降りると。テーブルとか床は散らかり邦題、一番隅の使われ無かったテーブルに行き椅子に腰を下ろした
暫くボウっとしてると、獣人達が下りて来はじめ。全員揃った頃には一様に椅子に座り込み頭を抱えながら小さく呻き声を上げる集団で満ちていた
俺は立ち上がり、ラビーさん、ローラさん、メロデイさん、パンシーさん、ミネアさんと順に耳をモフって行く。モフられた順に顔がシャキッとなり顔色も良くなる。
「ありがとう、助かるよガンジー」
ラビーさんの感謝の言葉と5人の笑顔が向けられる
「何をしたんですか?将軍」
ランプが聞いてくる
「俺の恩恵はパーティーメンバーにしか与えない」
堂々と依怙贔屓発言
「当然・・」
そう言いながら、俺の頭を抱えるローラさん
「全員送ったら戻って来て、暫くのんびりします」
放してくれないローラさんと、引き止めるラビーさんに言った
フラつく二日酔い達を引き連れて東南を目指す。残り18人・・・・全員送らないと、本当のパトロンド遠征は始まらない。俺は自分の性格を知ってる。見てしまえば、知ってしまえば我慢出来ない事が多い・・・知らない人達より、回りの部下の優先度が高いのは当たり前。だから見ない聞かないで過ごして来た
後少しだ・・・・




