パトロンドへ2
「本日の来港予定には入っていないと思いますが。どの様なご用件でしょうか?」
隊長らしき人が聞いて来る
「ガンジークライムですが、メリット男爵殿に取次願えますか」
やっぱり飛龍将軍じゃないか!とか、ドラゴン初めて見たとか色々聞こえたが。聞こえない聞こえない
「は、はい!暫くお待ち下さい」
余程驚いたのか、部下達に何も指示せず走って行く
「案内して貰えますか」
桟橋の上でぼうっと立つのは嫌なので歩き出した
暫く歩くと、向こうから馬車がやって来る
馬車が止まり見覚えの有る顔が降りてくる
「これはガンジー将軍、今日は何用でまた立ち寄られたのですかな」
「先触れも無く急な来港申し訳有りません。パトロンドへ赴く途中なのですが、色々相談したい事が有りまして」
俺の中には人魚急増事件の犯人の一人としてしか認識されてない。まあましな扱いの方だったので悪印象は無いが
「急ぐ話なら馬車で、時間が有るなら屋敷で聞きましょう」
とりあえず簡単な取り決めをしたかったので馬車で話す事にした
「早急な問題は船を預かって貰えるか?人魚の軍団400名の滞在許可、獣人120名の上陸許可と言った所ですね」
「獣人達に関しても、将軍が保証して下さるなら問題は有りませんな。船も預かる事が出来ますし人魚達には砂浜を解放しましょう」
「助かります、詳しい条件は明日にでも舘に伺って宜しいですか?」
「解りました、好きな時間に舘へお越しください」
簡単な話し合いが終わり、桟橋に戻る。
獣人達に下船するように伝え、人魚達に簡単な食材を集めて貰い(人魚達が自主的に暗くなる前に殆ど集めて有った)メリットの兵士達に金貨を渡して薪を都合して貰った
夕食は簡単に済ませ獣人達と話をする
「お前達には全て冒険者登録をして貰う。過去に登録している者も居ると思うが失効している者が殆どだろうしな。その後、女性は馬車で。男達は徒歩でパトロンドへ向かう予定だ。自分達の故郷の町や村に着く迄が俺との契約期間だと思い気を抜くな。いいな!」
全員が頷く
全員に整列しろと命じ
「これを渡して置く、俺からの餞別だ」
大きな袋から小さな袋を取りだし、順番に渡して行く。季節はずれのサンタクロースだなぁ
小さな袋の中身は金貨5枚と銀貨2枚の一律。北の国境越えの3人も同額、月額金貨1枚銀貨3枚の労働報酬。奴隷の概念が俺には存在しないのでこうなる。前世のサラリーマン思考だね
当然獣人達全員が驚いた顔をしているが、概念が違うので仕方ない。元奴隷達は自分達を解放して損をして、送り届ける費用で更に出費が嵩むのを許容する俺が理解出来ない。俺は労働報酬と交通費支給程度の感覚、俺の中の二つの心の1つ前世が出た時点でギャップが発生するのは諦めた
翌朝、獣人達全員を連れて冒険者ギルドへ向かう
「この者達120人分の費用を纏めて払いたいので、ギルド内専用の整理券とか番号札は存在しますか?」
カウンターに赴き受付の女性に聞いてみる
「整理券は有りますが、ローレシア内では獣人の方の冒険者登録には保証人が必要になりますが。保証人は居られますか?」
保証人が要るのは知らなかった、モスタウンでは不要だったし・・
「これでお願いします」
仕方ないので冒険者カードを差し出す
「手をかざして下さい」
一瞬眉をしかめてから言われたけど手をかざすと。えっ!ええっ・・・とか言われたので。拾ったカードとか思われたのだろう・・見た目が若すぎるので仕方ない・・
「失礼致しました、此方が整理券になります」
1番から120番迄のカードを渡して貰えたので。全員に配り手続きをするように伝えて再び受付の女性に話す
「依頼を出したいのですが、依頼内容は常駐警備で女性限定。募集人数は50名で、報酬は8等級で銀貨1枚以上。等級毎に上乗せ有りでお願いします。これで集まるでしょうか?」
聞いてみる
「条件は良いですし、冒険者の女性パーティーも多数存在しますが。依頼人の名前を出した方が確実だと思います。出されますか?」
「出して貰って構いません」
そりゃあ依頼人が解らないと女性だし不安だろうと思った・・この時は
一応ギルドの用件は片付いたのでメリット男爵邸に向かう。ミニラは自由に狩りと食事を楽しんで貰っているので徒歩だ
男爵邸は清貧をモットーにするクライムの屋敷より少し大きいかなくらい。門番に男爵への訪問を告げて貰うと、男爵自身が出てきた
「これは将軍、お待ちしてました。小さな屋敷で恥ずかしいが。お入りくだされ」
舘に入る
「初めましてガンジー様、ミリアメリットと申します」
12才くらいの女の子が紅茶を持ってきた
「これは可愛いレディが紅茶を運んで下さいましたか。ありがとうございます」
立ち上がって優雅に礼をすると、可愛い笑顔が返ってくる。どこでもいつでも子供に甘いガンジーです
「自慢の孫でしてな。ハハハハ」
孫バカ増殖中です
「海岸の利用料と船の預かり費を1ヶ月でどれくらいお支払いしましょう?それとパンを毎日500個と果物を毎日400人分、少々値が張っても構いませんので調達して頂けませんか?」
ミリアが退室したので本題に入る
「船の預かりに関しては1ヶ月に金貨10枚頂きます。パンと果物は問題無く提供出来ますが、人魚達に関してはどうしましょうかね。問題さえ起きなければ金等要らないのですが、塩の件で世話になりましたし」
「人魚達には護衛を付けようと思いまして、現在女性冒険者限定で募集の依頼をギルドに出してます。近郊の漁師達には人魚滞在期間中に限り補償を出そうかと考えています。形作りが出来た時点で煮詰めるのはどうですか?」
考えていた事を告げる
「さようですな、形が決まったら。再度検討しましょう」
「それでは一応、決まったと言う事で。これで今日からでも薪とパンと果物を手配して頂けませんか」
テーブルに白大金貨を差し出す
「解りました」
と頷く男爵
「では、失礼します」
と言う事でお開きになったが、相手が爺ちゃんに近い歳で俺が15才。その上、爵位的には俺が上とお互い言葉使いに戸惑いだらけの会話だった・・・
人魚達の様子を見に行き
「漁師達の姿を見なかったか?」
と尋ねると
「沖迄は出てませんね。近場に舟が5艘程出ていたくらいです。あそこにも一人漁師が居ます」
教えられて見ると300メートル程離れた所に舟を岸に上げてる男が見えた
「少し尋ねたいのですが、この近辺の漁師の数は解りますか?」
「へえ、11人居ますだ」
「集めるのに時間が掛かりますか?」
「3時間も有れば大丈夫ですだ」
「馬車を使って構いませんので集めて貰えませんか。大事な話があります」
金貨を2枚渡すと目を丸くされるが引き受けて貰えた
時間が空いたのでテクテクギルドへ向かい昼食を食べながら廻りを見渡すとやけに女性冒険者が多い事に気付く。
「給料も良いし、結構美形って噂だよ」
「可愛いんだって」
「凄い金持ちらしいよ」
「1級冒険者・・・戦いたい」
色々聞こえてくる、依頼に興味を持ってくれたようだ
「少しは集まりそうですか?」
カウンターに行き聞いてみる
「あ、ガンジー様。ギルド内の半数以上が応募者です」
目線で示された。ガンジーと呼ぶ声が聞こえてのだろう・・一斉に視線が向けられ、獲物になった気分・・・
「こう言う場合はどうしたら良いのですか?初めてなので」
優しくしてね・・・はあと。等とバカな事を考える
「即決が多いですが、多人数の場合は二階の会議室を使われますね」
借りて良いですか?と聞くと。どうぞと言われた
「皆さん、俺が依頼人のガンジークライムです。応募される方は二階の会議室にお集まり下さい。仕事内容の説明をします」
返事ではなく、好き放題に批評される声が・・・
「依頼内容は、人魚達の護衛ですが。モンスターから守る必要は有りません、接触してくる人間が居ないように監視して貰うのが仕事です。勤務時間は、8時間毎の3交代制を考えています。何かご質問は有りますか?」
「3交代制とはどういう意味ですか」
手が上がり指命すると普通の質問が来た
「1日に決められた時間帯の8時間を拘束するが残りの時間は宿に帰って貰っても問題無いと言う意味です。厳密に言うと交代時に多少の誤差は出ますが。対価はその8時間に対した料金です」
楽じゃん、とか効率良い、とか聞こえる
「モンスターと戦わなくて良いと言うのはどういう意味ですか」
又々普通の質問
「基本、浜辺では。イカーンかカニーラくらいしか出現しませんので、人魚達が対処出来ます。皆さんの仕事は、酔っ払いや勘違いして発情した人間の排除になります。冒険者に殴られて怪我するのと、人魚に殴られて怪我するのでは。問題の対処が変わってきますから」
会議室が?マークだらけになった
「私は現在、3等級でこのギルドでは上位の腕前だと思っている。私と戦え!もし勝てれば私とパーティーメンバーは8等級と同等の報酬で良い」
やっぱりいました。お約束ですかねえ・・・
「解りました、とりあえず勤務地に行き答えを出しましょう。ついて来て下さい」
漁師さん達が集まる時間なので切り上げる
砂浜には漁師さん達が集まり話をしている
「お待たせしました、ガンジーと言います」
漁師さん達がペコっと頭を下げて
「大事なはなしが有るそうだけんど、なんだべさ」
変な訛りが有るが気にせず話す
「皆さんの1日の稼ぎは多い時でどれくらいですか?1番の心配事は何ですか?」
率直に聞く
「稼ぎは多い時は銀貨1枚稼げるだ。そりゃ心配なのはモンスターだべ、先月もタゴサクが死んだし」
やっぱり漁師は命掛けらしい
「俺が1日銀貨1枚払いますので、俺の仕事を手伝って貰えませんか?命の危険は全く有りません」
「銀貨1枚貰えるなら手伝うけどよ、変な仕事じゃないだな?」
「変な仕事では有りません。詳しくは明日説明します、これは集まって貰ったお礼です」
そう言いながら全員に銀貨を1枚づつ配った
冒険者達に向き直り
「お待たせしました。先ずは護衛の対象をお見せします」
「リンリン、整列させて」
人魚達がビシッ!と整列する。その壮観な眺めに、その美しさに冒険者だけで無く漁師達も惚けたように見惚れた
「先ず、戦いたいと言う方の要望に答えましょう。得意な得物は何ですか?」
3等級冒険者の腕前を知るチャンスだ、捨てるのは勿体無い。砂浜から足場の固い原っぱに異動しながら聞く
「私は剣が得意だ」
と言われたので、俺も剣を抜く
前触れも無く剣を抜くなり、10メートル程の距離を一瞬で詰めて来る。早い、切り上げて来る剣を剣の腹で受け流しながら関心する。切り結んで解ったが、魔力の流し方も修練を積んでいて巧いのだが残念な事に左右の力のバランスが微妙悪い。技術が上がれば上がる程、ほんの少しの事で差が生まれる。振り下ろされた剣を弾き上げて首もとに剣を当てた。
「負けた、約束通りパーティー全員世話になる」
アラ、潔いお姉さん
「他にも勤務希望の方は射ますか?」
と聞いたら全員だった、一挙に38名契約です
「ギルドに戻って契約書を作成しますのでついてきて下さい」
ゾロゾロギルドに向かう
ギルドに戻ると獣人達全員がテストも手続きも終わっていた
「お前達に武器をプレゼントする、得意の得物を選べ。ギルドの標準装備品だがな」
笑いながら言う
女性冒険者達が意味不明だと言うような顔をする
「説明が足りなかったな、俺はパトロンドへあの連中を送って行く。留守中の護衛を頼みたい」
女性冒険者達の顔に納得の色が浮かんだ
カウンターに行き契約書の作成を頼むと。
他にも多数の希望者が殺到していると言われたので。既に決まっている38人に
「皆さんと相性の良い人達12人を相談の上で選んで会議室に集まってもらえますか」
得意の丸投げである
二階の会議室で受付の女性が全員の等級と名前を控えていく。契約書を作るには金額を査定しないといけないからだ。
「8等級を銀貨1枚と銅貨1枚の金額でそれぞれ査定して下さい」
受付の女性に告げると、後ろから。やったぁとかラッキーと言った笑い声が聞こえた
受付で、獣人達の費用の総額を支払い。保証金として白大金貨5枚を預けて。契約成立祝いに夕食をご馳走するので契約が終わったら砂浜に来るように伝えて。獣人達と買い物をして帰る
酒と胡椒と大量の皿とコップと肉類を獣人達に手分けして持たせる
採取班に鉄板焼きの材料を取りに行って貰い、浜辺に鉄板焼きの台の設置を始める。砂浜に埋め込むように足代わりの壁を作り左右から支えるように斜めに補強して。2つの壁の上に鉄板を作り大理石でコーティングするだけ。ポケットのアダマンタイトはほんの微かに減るのだが
鉄板の下の薪が良い感じで炭になり始めた頃。女性冒険者の団体がやって来た。新鮮な魚介類の鉄板焼きに大喜びだ、人魚達も果物を美味しそうに食べてる。
酒の席で女性冒険者が簡単に集まった理由も解った。女性だけの募集は殆んど無い、たまに有っても依頼主の下心が丸見え。冒険者の世界はセクハラだらけだと言う。ラビーさんも言ってたなあ
気に入った相手には自分からすり寄るのに、好みじゃないとセクハラ呼ばわり・・・男達も可哀想では有るのだが、勘違いしてる男達の自業自得かなぁ・・・・・等と酔っ払って考えてたら。リンリンの膝に頭が乗せられ。念話でミニラと話し、寝落ちし気が付いたら朝だった
ボウっと寝惚けた顔で座って居ると
「お早うごぜえやす」
漁師さん達が来た、リンリンに仮眠を取るように命令する。命令じゃないと聞いてくれない
「お早うございます。もし大漁だったらどうしてましたか?」
そう聞くと
「荷車で運んで、売り歩いてましただ」
予想通りで良かったと内心ホッとする
「仕事ですが、全員荷車を持ってますか?」
全員頷く
「では、全員荷車を持って来て下さい」
待つ間に鉄の舟を作る、見た目が肝心だアダマンタイトから鉄の固まりを作り薄く伸ばすイメージで箱方に仕上げて行く。本当は炭とか混ぜると壊れ難くなるのは知識に有るけど合成後のイメージが浮かばない。当然クロムを混ぜれば錆びにくい事も、今度鍛冶屋で聞いて見よう。とりあえず120センチの2メートルで深さを20センチにする。11個作って漁師達を待つ
一人目の漁師が戻って来たので荷車に鉄の箱を載せて見ると良い感じだったので。箱の底に10センチ程の氷を敷き詰めて、昨日買っておいた布地を切り氷の上に乗せる。二人目、三人目・・・・・・全員同じようにして準備完了。暫くして採取班の100人が戻って来たので11台の荷車に分けて乗せる
「皆さんはこれを売り捌いて下さい。それが仕事です」
漁師達は納得した顔で出掛けて行く
人魚の収入原のテストケースその始動、人魚達は氷魔法も使えるから夏場も問題無い。今日はすのこが間に合わなかったが簡単に作って貰えるから、氷の持ち時間も延ばせる。後は氷に直接触れると味が変わる魚が有ると教えれば問題無いだろうし
そうこうするうちに女性冒険者が全員で来た
「昨夜はご馳走さまでしたぁ」
女性らしい挨拶だ
「あのう、この娘もお願い出来ませんか?昨日パーティーが全滅してお金も無くて可哀想で・・・」
嘘でも真実でも一人くらい増えても問題無いから了承するが、これ以上は無理だからと念を押す
俺と戦ったのはネリーさん。真実の翼と言うパーティーのリーダーだそうです。真実の翼のメンバーは5人なので3つに別れて貰いそれぞれのグループの管理をお願いして、終了時には特別手当ての約束をする。メンバー割りも時間割りも丸投げ出来た
「冒険者ギルドに行き1名増員の手続きをしないといけないので。一緒に来て下さい」
最後に加わった女の子を連れて冒険者ギルドへ向かう。獣人達は剣や槍や斧を振り回して鍛練している、やる気が有るのは良い事だ
「この人を追加契約して貰えますか?後何か問題は有りませんか?」
昨日と同じ受付の女性に尋ねると、視線を飛ばされた。視線を追い掛けると女性冒険者達のジト目が・・・見なかった事にします
男爵邸に向かう




