2つの心
パチパチ音を立てて燃える焚き火の回りには串に刺さった魚介類が香ばし匂いを漂わせて来ます
ほんの少しの香辛料と塩かソイソースで味付けされただけの料理とも呼べない料理。
手には大量の魚介類と海藻で作られたスープの器が。採れ立ての食材が最高の贅沢です
「お前達は、今幸せだと思える暮らしが出来てるか?」
焚き火を囲むように座る6人の初期メンとサールーから内定を告げられたヤールー
「笑う事も、幸せの意味さえ解らない暮らしが当たり前だった私達が。少し辛そうとか悲しそうな顔をするだけで、周りからどうしたの?何か有ったの?って言われる生活が出来てるんですよ。これが幸せでなければ何なんですか!幸せは心のゆとり又は余裕なんだって最近理解出来た気がします」
流石サールーは言う事が違うなって感心する
「サールーの言う事も当然だけど。出合った瞬間に諦めるしか無かった天敵を倒せる。海の中を自由に怯えず泳げる、なんて気持ち良いんだろう」
マールーらしい意見です如何にも適当で・・
「弱いと言われていた、諦め仕方無いと思うしか出来なかった私達が。ガンジー様と出会い鍛えて頂いて強くなり。努力さえ怠らなければ更に上を目指せる!今日よりも明日、更にその先。生きる楽しみを下さったガンジー様は神様です」
如何にも武の御三家バトルジャンキーらしい言葉を話すテンテン
心の中では、演歌の大御所が浮かんでますが・・
「生でしか食べる事を知らなかった私達に調理の楽しみ、食事を味わうって事を教えてくれた。甘い物やパンや調味料や香辛料を使うバリエーションを教えてくれた。珍しい物や美味しい物を与えようと努力してくれてるのが解る。そんなガンジー様の側が幸せで無い訳ないじやないですか」
流石食料大臣、メルメルは食の意見がメインです
「自分の事も大事ですが、子供達の明日を心配しなくて良い。子供達には幸せな未来しか待っていない。そう思える事のなんて幸せな事か」
今回のメンバーで唯一の子持ちのワーワーの意見にテンテンとメルメルが鋭い獲物を狙う視線を俺に向けたのは仕方無い事でしょうね・・・・サールー、マールー、シールーは別にして子種上げて無いのがこの二人だけなのですから・・・・
「毎日辛いだけ怖いだけの日々でした。それが、安心な日々優しい日々美味しい日々にかわりました。覚える事が沢山有るので大変だけど、楽しい日々なのは間違いないです。子供扱いは不満ですけど!」
シールーの言葉に、子供扱いって子供そのものでしょって突っ込み入れたくなりましたが・・止めときます。怖いので・・
「・・・・・・・叶わない・・・・・・・絶対に届かない・・・・・・・諦めてた想いが届く事もちゃんと有るんですね・・・・・」
全くヤールーのイメージじゃ無いけど、参るなあ・・・そんな言葉
「そっか、不満も有るだろうけどこれからも皆で努力して行けばより良い明日が見えるハズだから。パンとか果物とか甘味が足りなくても許してくれよ」
笑いながら誤魔化すように言い訳してます
「「「「「「はい」」」」」」
笑顔で返してくれた
何故こんな話しを皆に振ったか
最初は全員にパンとか果物が行き渡らない引け目からの言葉です
女神様に指摘された。2つの心の1つ前世の想い
全て揃っていて当たり前、満たされて当たり前の生活。それが念頭に有って心苦しい思いをしてた自分自身
この世界ではお腹が満たされるだけで凄い満足、日々の安全が保たれるだけで凄い幸運。2つの世界のギャップに無意識に精神が混乱させられます・・・
本当に知ってる幸せ、知らない幸せ。知ってる不幸、知らない不幸って言葉が見に染みます・・・・
因みにミニラのご飯、今夜はマグロの丸焼き。何処から見ても黒マグロ70キロくらいの巨体が転がされてました。
ミスリルの剣で2枚に卸して焚き火の上で回されてます。一匹では全然足りないですから、残りは岬のモンスターで補填して貰います。黒マグロは人魚達に不人気で転がされてたのですが・・・そりゃあ獲れ立てのマグロは酸味が強いので美味しく無いですからねえ・・氷室で3日程寝かせると美味しくなるんですけど・・今度トロの刺身とステーキ食べよう♪
岬から戻ったミニラの頭の上側で今日はねます。テンテンとエルメルの視線が怖いからなのは秘密です
翌朝帰還組の焼き印消し作業に取り掛かりました。人魚達の万を超える数をこなした経験が身を結び、サクサク消して行きます。
「これは秘密にな!約束出来るな!」
の後の悪人セリフもお約束です
焼き印が消えた瞬間、驚いた顔。その後の
「ありがとうございました」
の言葉はお揃いのリアクション
問題も無く消し終わり
訳有り11人の作業に入ります
貴族や有力者と揉めた連中はサールーに事情を書き纏めて貰って有るのでサクッと終わらせ。
国内で知人を探すと言う3人の作業に掛かりながら
「出身はラバーニュか?」
聞いて見ました。何故こんな事を言ったか?簡単です。頭にウサ耳が生えてます。3人の内2人に、残り1人は狼系でしょうか?
女性のウサ耳は良い物ですが、男性のウサ耳には違和感しか感じません・・・・
全く強そうにも見えませんし。前世の先入観ですがね
「そうですが、何故解ったのですか?」
不思議そうな顔で聞いて来た
「俺にも友人の兎系獣人が居てね。ラビーさんて言うのだが」
多分知り合いだろうと名前を出して見た
「えっ?・・・・」
一瞬目が見開かれ、頭を振って再度考えてから言葉を紡ぐ
「俺にもラビーと言う今年21になる冒険者の妹が居ますが、将軍様と知り合い等とはとても考えられません・・・きっと同名の人違いでしょう」
大きなため息を吐きながら答える
「ラビーさん、メロディさん、パンシィさん、ローラさん、ミネアさんの5人のパーティーだったが。人違いで間違いないか?」
確信を込めて伝える
3人が固まったまま動かなくなってしまった・・
そこからの話しは簡単だった、店を共同で開く資金を稼ぐ為に冒険者になった事。最初は男女5人づつのパーティーだったが、船の護衛の仕事を引き受けて、男達が海賊に捕まった事。海賊島で2人の男が死んだ事。女達5人が酒好きで金が思うように貯まらなかった事迄話された。
俺が彼女達は金が貯まったからパトロンド王国に帰ったと話すとあっさり自分達もラバーニュに帰りたいと告げて来た。
最後に熊元王太子と狼系獣人の焼き印を消す。
「これは魔法か?」
熊元太子が聞いてくる
「回復魔法の一種だが、忘れろ」
と言うと
「解った」
とあっさり返ってくる
熊太子の名前はゴロウで狼系がウルフ
ふざけてるとしか言えないように感じるも本名らしい・・・・
現国王(元弟)はかなり出来が悪く、狡猾な貢献人が付いていて気付かぬ内に。太子の貢献人を暗殺、派閥の切り崩し、近衛の掌握が終わっていたらしい。終生投獄されるより逃亡を選んだ。が本人の言
とりあえず記憶に残して、居残り組の焼き印を消して行く
全ての焼き印を消し終わり、ウルとタロから元奴隷達の家族が住む領地の確認をする。
100人の奴隷達の内幼い頃に拐われて家族の記憶が無い者が32人元々家族が居ない者が21人。47人の内、旧ギャルソン旧メイソンに家族が居る者が38人。他領の者が9人、明日から家族探しをする為に他領出身の9人から領地名と家族構成、家族の名前を書き纏めた。
翌早朝からミニラに頼んでモスタウンの爺ちゃんの所へ行き。9人の名簿を見て貰い、譲って貰えそうか聞いてみると
「この7人はワシが手紙を書いて、騎士に迎えに行かせば問題無く譲って貰えるじゃろう。じゃが、この二人は無理じゃな。ワシが関われば間違い無く拗れる故の。この者はユークリフの弟じゃ」
えっ?王様の弟と交渉が無理となるとお手上げなの?・・・・
俯いて悩んでると
「ワシには無理じゃが、こやつの弱点がお前の知り合いに居る故問題無いじゃろう。ユーリア姫に頼んでみよ!あやつの弱点故な。ハハハハハ」
笑って済まされた・・・・
二人の奴隷の主と所在領地は
ローレル領、ウエインローレルになっていた。ユーリアってローレル姓だったのを思い出す。
「ありがとうございました、お爺様。7名の家族の事はお願い致します。私はこれより王都に向かいます故、失礼致します」
「ミニラ、山で食事してて貰えるかな」
「解ったぁ、パパぁ」
「お土産買って来るからごめんね」
「大丈夫だよ~」
いつものように城門の1キロ程手前で下ろして貰い、駈けて来る騎士達に向かって歩く
「閣下今日はどのような御用件でございますか?」
「ローレル公爵家に用が有って王都に来ました」
「左様でございますか、馬車を呼びますので暫くお待ち下さい」
いつも助かります、城門騎士さん。手数料は爺ちゃんズがきっと
御者さんにモンデール邸経由でお願いすると、やっぱり待ってます。侯爵はもっと忙しいべきです!
「お爺様方、今日はローレル公爵家に用が有りますので時間が無かったのですが、偶然通り掛かったライアンお爺様と。偶然門迄出て来たサリユースお爺様にお会いするような気がして。御者さんに廻って頂きました。お爺様方のお顔が拝見出来て満足致しましたのでローレル公爵家に向かわせて頂きます。それでは失礼致します」
「う、うむ」
「あ、ああ」
とかバツが悪そうな声が聞こえた
ローレル公爵邸の門前に着いたので御者さんに料金を払い帰って貰う。それにしてもデカイ屋敷だ・・・
「私は、ガンジークライムと申します。ユーリア姫にお会いしたく参上致しました。お取り次ぎ願えますか」
「暫くお待ち下さいませ」
緊張して答えた門番が中に入って行った
「ガンジー様、お待たせ致しました。こちらにお越し下さい、主人がお会いになるそうです」
黒服の渋い爺ちゃん(執事)が案内してくれた
案内された先は中庭に置かれたテーブル
「お前が、ジョンの孫か。ワシの孫に何の用じゃ」
王様を少し厳つくしたような爺ちゃんが居た
「ローレル領に住む獣人奴隷を2家族お譲り頂きたくご相談に上がりました」
正直に真っ直ぐ話した
「そうか、ワシと手合わせ致せ」
えっ?っと思ってる内に槍を放り投げられた
「参るぞ」
ギャッギャギャツ槍を打ち合う音が響く
構える間もなく攻められる。ジョン爺ちゃん並みに強い
仕方無く戦っていたが、面白くなりカンカン打ち合う音が響き渡る。流石王族なのかこの爺ちゃんが凄いのか、全力で戦っても押しきれない。
10分近く打ち合っていたら小さく走る足音が聞こえて来た
「お爺様、何をなさっているのですか?ガンジー様はわたくしのお客様なのですよ」
ユーリアだった
「許せ、ユーリア。ジョンの孫の手並みが見たくなってな」
ここにも脳筋が居ました・・・
「ガンジー様、わざわざわたくしに会いに来て下さったのですか?」
ニッコリ微笑むユーリア
「ローレル領に住む獣人奴隷を2家族お譲り頂きたく思い。ユーリア姫に公爵様にお取り次ぎ願おうと思いまかりこしました」
模擬戦の相手させられたけど
「その歳で見事な手並み。気に入ったが、ユーリアはやらんぞ!」
意味不明な事を言う爺ちゃん
「お爺様!ユーリアはもう口を聞いて差し上げません」
プンプンなんだからね、とか浮かぶのですが・・
「そ、それは困る。許せ、のう許してくれユーリア」
ここにも孫バカ発見
「申し訳ございませんが、獣人奴隷の件はお許し頂けるのでしょうか?」
仕方無く割り込んだ
「誰かある!紙と筆を持て」
公爵爺ちゃん
「お待たせ致しました」
さっきの黒服執事さん
「これで良いか?」
紙を渡された
「領内の獣人奴隷をこの者ガンジーが望むだけ引き渡せ」
と書いてあった
「貸せ」
封蝋して再度渡してくれる
「ありがとうございます。対価は如何いたしましょう」
「要らん「要ります!パトロンドのお話しを帰って来られたらお聞かせ下さいませ」」
公爵爺ちゃんの声にユーリアが被せて言った
「承知致しました、公爵様、ユーリア姫。失礼致します」
軽く頭を下げてから退出する
モンデール邸の屋敷に戻り、門を素通りして玄関に居たメイドさんの案内で応接室に通され。ソファーに座って出された紅茶を飲むと。聞きたそうな顔で前に座って居る爺ちゃんズに事情を説明していく。
「ローレル公爵の領地は王都から西に30キロだから。簡単に着くし解りやすいハズだよ。その獣人の家族を送る為に私が馬車と騎士を派遣してあげるよ」
事情を納得したサリユース爺ちゃんが提案してくれた
「2家族だからワシも馬車と騎士を出すぞ」
ライアン爺ちゃんも・・・
「お爺様方の気持ちは嬉しいのですが、今はまだ奴隷の身。余り高級な馬車だと緊張して可哀想ですので・・・幌馬車1台で騎士を3名づつお貸し頂けると助かります」
「解ったそのように手配するよ。チェインを呼んでくれるかな」
部屋の隅に待機しているメイドさんにサリユース爺ちゃんが頼む
とメイドさんは頭を下げて直ぐに出て行く
「お待たせ致しました」
30才くらいの見た目の良い騎士が入って来た
「ガンジー、家に代々仕えているチェインだよ。明日向かわせるから顔を覚えて置くと良いよ」
「はい、ありがとうございますお爺様。チェイン殿明日は宜しく頼みます」
「承知致しました、若様」
閣下かなと思ったら、若様と呼ばれました。驚き・・・
明日の朝10時にローレルで待ち合わせする事になり
とりあえず今日は海賊島に帰る事にした
サリユース爺ちゃんに馬車を出して貰い
途中でいつものサンドイッチを有るだけ買い、酒屋でワインを5本買い城門を出て1キロ。馬車を降り礼を言って戻って貰う
「ミニラお待たせ」
「はぁい、今行くねぇパパぁ」
ミニラとサンドイッチを食べて、ワインと一緒に背中の袋に入り海賊島へ向かう。ミニラに疲れてないか聞くと、パパぁと一緒に飛んでるのは楽しいって返してくれた




