ミニラ
春が来て９才になった。
自分でも解るが、体の造りがしっかりしてきたのが嬉しい。
お爺ちゃんも、父ちゃんも言ってたけど
１１才くらいの体型らしい。
元々前世の俺も１８２センチ有ったから。
大柄と言われるのは慣れてるけどね。
日課の修練は欠かさずしてる。
この世界では強くなりたいって想いが強い。
突然、非日常な事態が起こる可能性が高いからかな．．
力で蹂躙される可能性が否定出来ないから
力を持ちたいと思うのかもね。
平和な世界だと力無き正義も存在出来るけど、この世界だと力無き正義は「死と後悔」に直結してると思ってしまう。
モンスターにも盗賊にも理屈が通じる訳はないし、目の前で大事な人が殺されるのを黙って見ていられる筈もない。
泣く前に鍛える！が正解だと思う
さて、いつものように海辺に訓練に行くか。
「ギャッギャギャッ！」
海辺に近付いた途端に聞こえて来た叫び
波打ち際でイカーンが何か丸い物を押さえ付けてるのが見えて、思わず駆け出す
「ボヒュン！」
駆けながら放った砲弾擬き
崩れ落ちるイカーン
止まってる的なら外さない。
近寄るとイカーンの下に丸いモンスターが
イカーンをどけようとしたが重くて動かない
イカーンを切って半分にしてからどかすと
やけに丸いドラゴンが．．．
体長１２０センチ程で腿と横腹に咬まれた傷が、特に腿が酷く骨迄見えてる
「ミュー、ミュッミュー」って弱々しい声
何故か目を合わせた瞬間犬のポテトを思い出す
放って置けない気持ちになった
必死に引っ張って水辺から離すと
「ミュー．．．」
益々弱々しい声に
兎に角、傷口の海水と汚れを水魔法で洗い流して、確認するが暴れる元気も無いのか動かない
「仕方ないか．．．」
切り飛ばしたイカーンを集めて洗うと
イカーンとドラゴンの傷の両方に触れる
精神を集中して魔力の流れを読むと何故か
ドラゴンの情報が伝わって来る
波長が合うのだろうか．．．？
イカーンからは何も伝わらないのに
イカーンを分解してドラゴンの細胞を構築する際、脳内に少しづつ血管とか筋とかリンパ等が延びるイメージが．．．
合わせて細胞も増殖するのだが、筋肉が寄り合わせた繊維状に構築されるのが不思議なのだが意識を散らせないので集中する。
腿の治療だけでイカーンの半分以上が無くなったけど外見的には綺麗になってる。
続けて横腹の治療を同じ手順で繰り返し全て終わって立ち上がると少しフラついた。
かなりの魔力を使ったっぽい．．
再度魔力の流れを確認して軽く活性を掛けてやると
「ミュー」
と軽く目を開けて弱々しい声で鳴く
やっぱりポテトが浮かぶのは何故だろう．．．
全く似てないのに。
初めての回復魔法と言うか部分構築魔法が終わって
何故知識も無いのに出来たか考えてみる
先ずドラゴンの組織情報が伝わった事
組織情報をイメージしながら分解した素材で
構築していく内容がイメージとして脳内に浮かんだ事
意識して無いのに自然に筋肉組織も組上がった事など
やはり知識が足りなさ過ぎる
「魔法だから♪」って事に取り合えずしておこう。
等と考えながらドラゴンの首を撫でてたら
ドラゴンは寝てるし．．．
分類はモンスター何だと思うのだけど．．．
お腹が空いたので弁当食べようと包みを開けたら
「ミュー！」
寝てるハズのドラゴンが首だけ上げて見つめてくる
お弁当の内容は
小さ目のパン２個、ベーコン、チーズが少し
「欲しいの？」って言いながらベーコンを半分出すと
上を向いて口を開けたので放り込む
直ぐに呑み込んで又上を向いて口を開くので
パンをちぎって放り込む。
ほとんど全部食われた．．．
俺はチーズだけ．．．
ドラゴンのイメージが少し違う気がする．．
ずんぐり丸くて足が短いし、ゴジラの子供のミニラに似てるかも。背中に小さな羽らしき物は有るけど．．．
このドラゴンは多分子供だと思う、それも産まれたての。
親はどうしたんだろうか？
もし親が来たら俺なんか即死だろうな
「ドラゴンは天災だ！人の手にはおえない」って
爺ちゃんも父ちゃんも同じ事言ってたし
どうしたら良いんだろう．．．
「腹減ったなあ．．．ん！」
イカーンが有る！
土魔法でまな板作って、土台作って太い鉄串も作った
浜辺の流木集めて火が燃え上がる間にイカーンを
洗って表面を削って２キロくらいのブロック状に
カットして鉄串を２本刺して土台にセットする
海水で味付けしようかと迷ったが無難に
塩化ナトリウムを精製して振り掛ける
焼き上がったので火から下ろしてナイフで切り分け
口に放り込む
「旨い」
空腹は最高の調味料だと思いながら横に視線を向けると
上を向いて口を開けてるやつが居ました
熱いし、塩分過多も駄目なので水で軽く流してから放り込むと
呑み込んだ途端に又
「餌さくれ」姿勢に
予測して２キロ焼いてて良かったよ．．．
食ったら又寝たし．．．
それも側に近寄って来て
どうしょうか．．．
