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【1】乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第一章 恋するエグゼクティブ1(前編)※連載版と同じ内容です

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第七話 裏ボス先輩のお仕置きタイム!?

放課後の生徒会室。

私の周りはいつも以上に賑やかだった。


「ねえ玲。早く次のゲーム勝負しよ!」

袖をきゅっと引っ張る律。

「こ、今月の予算書だ! ちゃんと確認しろよな!」

顔を赤く染めながら書類を差し出す豪。

「玲、デートの場所ですが……僕が選んでもよろしいですか?」

おっとりと微笑む絢。

「会長様は人気者だね~。そうだ、今から二人で抜け出さねぇ?」

楽しげに誘ってくる烈。

(みんなして私に構ってくれて可愛すぎる……ここが天国か!?)

限界オタクは、本日も幸福の過剰摂取で瀕死だった。


そんな時――。

生徒会室の重厚な扉が、静かに開いた。

カチャリ。たったそれだけの音だった――。

室内の温度が、数度下がったような錯覚を覚える。

「……随分と賑やかだな。」

ブルーブラックの髪。

西日にきらりと光る銀縁眼鏡。

すべてを見透かすようなライトブルーの瞳。

静かな足取りで立っていたのは――前生徒会長、黒崎冴(くろさきさえ)だった。

その瞬間――

さっきまで騒いでいた四人の空気が、ぴたりと止まる。

「…………。」

そして全員が、ほぼ同時に悟った。

――目が、笑っていない。


「私の可愛い後継者を、随分と他の犬たちが囲んでいるようだな。少し、玲と二人で話がしたい。席を外してくれるか?」

「……は、はい。」

「お、お邪魔しました!」

「失礼します……。」

「……じゃあな、会長。」

逆らったら終わる。

本能でそう察した四人は、玲へ名残惜しそうな視線を送りながら、生徒会室を後にした。

バタン。

静寂が落ちる。


(あれ? なんか急に空気重くない?)

そんな私の前へ、冴はゆっくりと歩み寄ってきた。

一歩。また一歩。逃げ場を塞ぐように。

そして――

執務机の椅子に座る私を閉じ込めるように、両側の肘掛けへ手をついた。

「……っ」

逃げ場のない距離。

銀縁眼鏡の奥――氷のように冷たい瞳が、真っ直ぐこちらを見下ろしている。


「玲。朝、私に『全力で頑張る』と言ったばかりだというのに……随分と他の男たちに安売りされているじゃないか。」

ライトブルーの瞳が細められる。

「私が磨き上げた宝石を、他の犬たちに好き勝手触られるのは……気に入らないな。」

極上の低音。

静かな圧力。

圧倒的な支配者の気配。

にもかかわらず――


(ひゃああああああん!!)

私の脳内は、別の意味で大爆発していた。

(冴先輩の椅子閉じ込めドン!! 独占欲全開の冷たい瞳!! 怒らせたら一番ヤバい裏ボス設定そのまま!! 最高のごちそうすぎる!!)

恐怖どころか、感動で胸がいっぱいになる。

私は、憧憬の眼差しで目を輝かせた。

「冴先輩にそんな風に言ってもらえるなんて……本当に幸せ者ですね!」


「……っ、お前……。」

初めて黒崎冴が、本気で目を見開いた。

今までなら誰もが怯え、言葉を失った。

以前の如月玲なら、息を呑み、謝罪を口にしただろう。

なのに――。

目の前の玲は頬を上気させ、まるで至高の宝物を前にしたかのように、自分を真っ直ぐに見つめ返してきている。

「……面白いな。私の圧を前にしてそんなに嬉しそうな顔をする人間は、お前が初めてだ。」

静かな声だった。

けれど、その瞳の奥には今までとは違う熱が宿っていた。


冴は片手を離し、眼鏡のブリッジを押し上げる。

そして、冷たい指先で私の顎をそっと持ち上げた。

「そんな瞳で私を見るのなら……」

ライトブルーの瞳が眼前まで迫る。

もはや、吐息まで届きそうな距離だった。

「もう二度と、他の奴らにその顔を見せるな。お前をここまで変えたのが誰なのか、忘れられないようにしてやろうか……。」


ヤンデレセリフの過剰摂取――!!

限界オタクの脳は、ついに容量オーバーを迎えた。

転生してからずっと目まぐるしかった。

推しとの遭遇。

想定外のイベント。

睡眠不足。

興奮状態。


「……あ」

視界が揺れる。

ぐらり、と身体が傾いた。

「……玲?」

スローモーションのように前へ倒れていく。

「――玲っ!?」

聞いたこともない声だった。

いつも冷静な冴が、焦ったように私の名前を呼ぶ。

「おい、玲!」

伸びてきた腕。揺さぶられる肩。

銀縁眼鏡の奥の瞳が、大きく揺れている。

(ああ……。)

薄れていく意識の中、最後に思ったのは――

(冴先輩の冷たい視線……もっと浴びたかった……。)

そんな、どうしようもなくオタクらしい感想だった。

限界オタク生徒会長・如月玲は、裏ボス先輩の腕の中で、静かに意識を手放した。

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