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【1】乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第一章 恋するエグゼクティブ1(前編)※連載版と同じ内容です

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第五話 女子会ノリでデート申請!?

放課後の廊下は、部活動へ向かう生徒たちの声で賑わっていた。

窓から差し込む夕陽が、長い影を床に伸ばしている。

そこへ、前からゆっくり人影が近づいてくる。

私はその姿に、思わず息を呑んだ。

ローズレッドの髪の持ち主、千早絢ちはやあやだ。

前髪を揃えた姫カットが品の良さを際立たせている。

吸い込まれそうなキャットアイが、こちらを見つけて少し細められた。

誰もが認める美貌に思わず唸る。

(いや、本当にこのビジュアルを作った自分を褒めたい……。でも、実際目の前にすると、そんな自画自賛忘れるくらい綺麗だもんね……。)

現実で見る推しの破壊力に、思わずため息が出る。


そんなことを考えていると、ふと昨日寝る前に見つけた記事を思い出した。

駅前にできた雑貨屋さんと、期間限定のスイーツショップ。

可愛い小物や美味しいお菓子の写真が、いっぱい載っていた。

(この姿で、一人で可愛い雑貨屋に入る勇気はなかったけど……絢なら絶対似合うし、一緒なら自然だよね!?)

絢には、アンティークやお茶菓子が好きっていう設定もあった。

(私も嬉しいし、絢もきっと喜ぶ……。一石二鳥じゃん!!)

私は自分の欲望に、都合が良い理屈を並べ立てた。

オタクの妄想が急速に広がる。

(推しと可愛いお店巡りなんて、想像しただけで幸せすぎるっ!!)

自分が超エリート男子高校生だということをすっかり忘れて、女子会テンションが一気に蘇った。

気づけば、私は人混みを縫って絢の方へ駆け出していた。


「絢!」

「……玲?」

目の前で絢が、おっとりと微笑む。

「どうかしましたか?」

柔らかな声に優しい笑み。

お姫様のような穏やかな佇まいが、私の中の限界オタクを完全に目覚めさせた。

「ねぇ、ちょっといい?」

「はい?」

「すごく可愛い雑貨屋と、お菓子が美味しいお店を見つけたんだ! 一緒に行こう?」

そして、満面の笑みで――


「デートしよう!」


「…………え?」

ぱちり、と絢の目が見開かれる。

周囲の空気が止まった。

「えっ?」

「今、会長……千早先輩にデートって言った……?」

ざわめく生徒たち。

そこでようやく、私は自分が何を言ったのか理解した。

(しまったぁーー!!)

如月玲の顔面、声、そして至近距離で『デートしよう!』

……破壊力が高すぎた。


恐る恐る絢を見る。

いつものおっとりした笑みは、綺麗に消えていた。

「……玲。」

「は、はい!」

絢は小さく息を吐く。

そのキャットアイが、ゆっくりと細められた。

「あなた、本当に……」

一歩。

「自分がどんな顔で、そんなことを言っているのか分かってるんですか?」

一歩。

静かな足音。なのに、なぜか逃げられない。

「え、えっと……」

「いいですよ?」

「え?」

「デートしても。」

ふわりと微笑む。

けれど、いつもと雰囲気が違う。

「可愛い雑貨も、お菓子も。あなたと一緒なら楽しそうですし。」

「やった!」

思わず声を上げかけた、その時だった。

「……でも。」

「ひゃっ。」

白く細い指先が、ネクタイに触れる。

距離が近い――

「僕を誘ったんですから――」

耳元で囁くような、おっとりした声。

「途中で恥ずかしくなっても、逃げたら許しませんからね?」

絢が笑う。けれど、その笑顔はいつものお姫様のものではなかった。

余裕があって、少し意地悪で――

そしてなにより、格好いい――。


(ひぇぇぇぇ!?)

どくん、と心臓が跳ねた。

完璧なお姫様だと思っていた推しは――

どうやら、王子様の顔も持っていたらしい。


「ふふっ。今さら『やっぱりなし』なんて言いませんよね?」

「い、言わない!」

「よかった。」

絢はまた、いつもの柔らかな笑みに戻る。

「楽しみにしていますね、玲。」

(……今の絢、めちゃくちゃ格好よくなかった?)

胸がどきどきする。

怖くはない。

むしろ――

(ま、まぁ、結果オーライだよね……? 絢と可愛いお店巡りなんて……実質ご褒美だし!?)

胸の鼓動を誤魔化すように、私は普通を装ってまた廊下を歩き出した。

 

その後――

誰もいない廊下で、絢はそっと壁にもたれかかった。

「……はぁ。」

赤くなった耳を指先で押さえる。

胸の鼓動が、まだ少し速い。

「あんな顔で『デートしよう』なんて……本当に、ずるい人ですね。」

小さく息を吐く。

そして、ふっと笑った。

夕焼け色に染まる窓ガラスに、自分の顔が映る。

少しだけ嬉しそうに緩んだ口元。

赤く染まった耳。

それを誤魔化すように、絢は小さく呟いた。

「……逃がしませんから。」


そんな二人のやり取りを、廊下の曲がり角で目撃していた人物がいた。

金髪のウルフカットに、鋭い金色の瞳――鬼塚烈だ。


烈は舌打ちを一つ漏らすと、八重歯を覗かせてニヤリと口元を歪めた。

自分には『優しくて繊細』なんて言って調子を狂わせておいて、今度は千早を翻弄してデートの約束。

胸の奥で渦巻くモヤモヤとした不快感を誤魔化すように、烈は鼻で笑う。

「面白ぇじゃん、会長……ちょっとからかってやるか。」

狼のような瞳でターゲット(玲)の向かう先を見据えると、烈は気づかれないよう、ひらりと先回りする。


無自覚に攻略対象の導火線に火をつけた限界オタク生徒会長に、次なる試練(萌え)が迫っていた――。

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