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勇者はマモリたい  作者: 覧都
第2部

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第二百三十五話 大チャンス

「そうですか。日本国も仏国も目が離せなくなりましたね」


 マモリ様はこわばった表情で地底湖の水の中を見つめています。

 そこにも目が離せない龍が2名横たわっています。

 目だけはしっかりこっちを凝視しています。少し恐いです。


 マモリ様は日本国も仏国も、2名の龍も全部心配なようです。


「姫様、そんなことはないニャ。ガンネスとファルコンに、ドーーンと任せておいたらいいニャ」


 日本国のガンネスには、ダニーがついています。

 仏国のファルコンには。マーシーさんもシマズヒサシさんもついています。

 万が一の時には小指に紋章もあります。

 心配の必要はないと思いますが「だが、それでも心配をする」それがマモリ様です。



 最近ではマモリ様の心配する範囲が広がりすぎて、私の目の前のマモリ様は背中が丸まってしまい、弱々しい美少女にしか見えません。

 服装も日本の女子高生の制服ですし。


 目の前の水の中にいる、見た目は強くてたくましそうな2名の龍が、脱皮をしたてで弱々しくなっています。

 物音に驚いて体がビクンと動いただけで死んでしまうのだそうです。

 そんな弱々しい姿を見て、それが伝染してマモリ様まで弱々しくなっているのでしょうか。

 それとも、魔力減少が思ったより深刻なのでしょうか。

 私まで不安になってきました。


 まだまだ、伝えないといけないことが山ほどありますが、きっと心配事を増やすだけなので、私は口をつぐんで黙りました。


「安土様」


 マモリ様も無言で2名の龍を見つめていましたが、不意に私の名前を呼びました。


「はいニャ」


「ユウキは、どうしていますか?」


 うふふ、やはり気になるようですね。

 でも、ひょっとしたらあの子なら、マモリ様を元気に出来るかもしれません。


「ちょっと待ってくださいニャ。見て来るニャ」






「ちっきしょーー!!」


 いきなり、ユウキは空に向かって叫んでいます。


「まあ、仕方がないですわ」


 エイリがユウキを慰めます。


「そうですね。ルールは守らないと、ただのクレーマーです」


 ノブコはいつも冷静です。


「でも、困りましたわねえ。商人ギルドはF級冒険者お断りとは」


 ユウキとエイリとノブコの3人は、オクジイールの街の商人ギルドのお店の前にいます。

 やっかいな客と思われて門前払いだったようですね。

 いい商品は持っているとは思いますが、それも見てもらえなければお話しになりませんからね。




「ふん! ばかめ! 商人がF級冒険者などを相手にするか!! 時間の無駄なんだよ。同じ商人でも、初見では推薦状がなければ相手をしないのに! せめて名刺代りのDクラスのプレートを付けてから来いっていうんだよ! ぺっ!」


 商人ギルドの中では、受付の男が言い終わると床にツバを吐きました。




「くっくっくっ」

「うふふっ」

「あはっ」


 3人娘が急に道路を歩きながら、天をあおいで笑い出しました。

 変ですねえ。ピンチのはずなのに、とても楽しそうです。


「まるで、ゲームみたーーーーい!!!!!! 現実だけどゲームみたーーい!!!!!! ぎゃはははははーーーー!!!!!!」


 3人が声をそろえて言いました。

 そして爆笑です。

 3人とも心から楽しんでいますね。

 大丈夫でしょうか。


「さて、クエストの始まりです。このマ薬を売るのが最初のミッションです。どうしますかエイリさん」


 ユウキがエイリの顔を見て言いました。

 3人は、街の人と同じ服装です。

 胸には冒険者ギルドのF級のプレートが目立ちます。


 でも、それは変身魔法です。

 本当は高校の制服を着ています。

 便利な魔法ですね。


「簡単ですわ。まずは、武器屋で武器を買うのですわ」


「うふふ、そのお金がないのです」


「あらっ」


 エイリは目をパチクリして、手を口の前に持って来ました。

 エイリはお金持ちですからね。

 お金がないことを考えつかなかったようです。


「今のわたし達なら、武器なしでもそこそこ出来ます。ですから、必要ございません。まあ、言ってみればレベル10の武闘家でゲームを始めるようなものです」


 ノブコが言い終わると、顔を少し持ち上げました。

 すると、メガネが太陽光をキラリと反射します。

 今日はマモリ様がいないので、少し雲がありますがおおむね青空です。


「では、ノブコさん。名案をお願いします」


「うふふ。まずは冒険者ギルドで、商人からのクエスト依頼をこなし、商人の信頼を得る。または、その上の貴族の難解なクエストを解決する。そのあたりがよろしいのではないでしょうか」


「ちっちっちっ! ノブコちゃんは、勉強のしすぎでわかっていませんねー。どんなゲームでも、ゲームの目標はだいたい「魔王を倒す!」です」


「そ、それ、本気で言っていますの!?」


 エイリが驚いています。

 ですよね。


「あたり前です。さあ、魔王をぶちころしましょう!!」


 ユウキはうれしそうに街の門を指さしました。

 ギャグなのか本気なのかわかりません。


「あの、どちらかというと、わたし達は魔王様側の人間ですよ。今からあの可愛いマオちゃんを殺すのですか?」


 ノブコが真顔で言いました。

 ユウキが冗談で言っているとは、思っていないみたいですね。


「ハッ!?」


 ユウキがハッと声を出して、ハッとしています。

 本気で忘れていたようです。


「ぷっ! いつもの残念姫ですわ」


「こ、このゲームは破綻していまーーす。なんでいきなり魔王と仲良しなんですかーー!!」


「いいえ、とても楽しそうなゲームです。うふふ」




「いたたた! 王子にはお前達からよろしく伝えてくれ!!」


 1人のたくましいひげづらの大男が、オクジイールの街の広場の銅像の前に現れました。

 それは、3人娘の前でもあります。

 男は首をさすりながら、移動魔法を使った魔導師に言いました。


「それは、よろしいのですが、何故なのですか??」


 魔導師は、大男に質問します。


「ふふふ、あの黒いサムライに言われたからな。かたぎになれと。それを受け入れた以上しばらくは、軍人にはもどれない。せめて1年はかたぎでくらす。それに、首をひどく痛めたようだ。魔導師達では治せないようだ。ぼちぼち首を治しながら、体を鍛え直す。そう王子に伝えてくれ」


「わかりました。ジェイカル様、王子にお伝えいたします」


「うむ!!」


 ジェイカルが返事をすると、魔導師の姿が消えました。


「あ、あのー。ジェイカル様」


 このやりとりを見逃さず、エイリが恐る恐る話しかけました。


「な、なんだ小娘!! ふふっ!! こっちへ来い!!」


 ジェイカルは、声の方を不機嫌に見ましたが、声の主が可愛かったので手を握ってひっぱりました。

 抱きしめるつもりなのでしょうか。

 この国では、基本的にそういう文化です。

 若い娘がフラフラあるいていたら、何をされても文句はいえません。


「ぎゃあぁぁぁぁぁーーーー!!!!」


 でも、悲鳴を上げたのは大男ジェイカルの方でした。


「あーあー!! エイリちゃんやってしまいましたねーー!! 死んだと思いますよ」


 ユウキが、ジェイカルの顔をのぞき込んで言いました。

 分厚い広場の石畳にヒビがはいっています。

 エイリはとっさの事だったので力加減を間違えたようです。

 ジェイカルの体が垂直に、頭から石畳に叩き付けられました。

 倒れたジェイカルは、それでもなんとか息はしています。

 生きていますね。普通の人なら死んでいますよ。


「エイリさんは、やりすぎです。このおじさんも弱いくせに、なにをいきなりエイリちゃんに手を出そうとしたのでしょうか」


「ぶはぁーー!! 死ぬかと思ったーー! ちゅーか。このオレを弱いだとーー!! ぶわああぁぁぁーーはっはっはっ!! こんなゆかいな事はない!!」


「あのー、このおじさん頭を打ったみたいです」


 ユウキが言いました。


「いやいや!! 見ていたから知っているっちゅーの!!」


 エイリとノブコが言いました。


「うっ! ぐっ!」


 大男が痛そうに首を押さえます。

 可哀想に悪化したようです。


「ふふっ! どうぞ! これを飲んでください!!」


 エイリの手にはマ薬の包みが乗っています。

 さすがです、エイリは商売チャンスを見逃しませんでした。

 王子とか言っていましたし、貴族と知り合いになるチャンスです。

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