表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/28

黒歴史ってやつは

二話同時にあげてます。

ご注意ください。

 私が鼻っ柱を初めて彼に折られた後、私は自分の力をきちんと知るために努力した。

 それはもう、猛反省してまずは己を知らなければならないと頑張った。頑張りすぎた。


「君がいれば、必要ないじゃないか」

「私の今までは何だったのか」

「もう、お前がやればいい」


 何度言われてきたのだろう。

 私は自分の力が知りたくて、どこまでできるか把握したくて、訳のわからないこの気持ち悪さをどうにかしたくて。

 そんなつもりはなかった。なんて、醜い言い訳は言えなかった。


「私と肩を並べようだなんて馬鹿な事はするな」

「この私が素晴らしいと言っているのに否定するのか」

「私を利用しようだなんておこがましい」


 そんな恥ずかしい言葉で内心悶えながら懸命に自分は別枠チートなのだから気にするんじゃない、比べるんじゃない、と伝え続けた。

 例えそれが自分の中の羞恥心をめった刺しにするようなことであっても。

 結果、黒歴史が増えていったことに対してはやるせなさを感じる。


「あー…空が青い」


 日が沈む夕暮れ時だから青くもないのにそんなことを呟いてみる。

 言いたいことを言って、村瀬先輩をドン引きさせた私は戸締まりを先輩に頼んだ後に中庭のベンチに座ってぼんやりとしている。

 今日も今日とて黒歴史の1ページが刻まれましたよ。

 なにを偉そうに先輩に対して高圧的な態度を取ったんでしょうね、私は。


「斎条さん」

「統括」


 ぼんやりとしているところに統括が上からのぞいてきた。

 誰か近づいてきているなぁとわかっていたけどあなたでしたか。

 今日もべらぼうに美しいですね。どんな角度でもパーフェクト!


「だいぶここに座っているようだけど」

「気にかけていただいて、ご迷惑をおかけいたしました。申し訳ございません。帰宅いたします」


 統括にまでご迷惑をおかけするだなんて、あってはならない。

 帰って布団かぶって悶えよ。大丈夫。引きこもらないから。したいけど。

「失礼いたします」と言って立ち上がり、統括に背を向けた。


「待った」

「えっ」


 手首をつかまれて振り返った先には統括が目の前に。

 え、待って。そっちが待って。近いから。

 やだ神々しい!!


「ななな何でしょうか」


 どもった。どもったよ!埋まりたい!


「ごめん、聞きたいことがあって」


 手首を離されたので少しだけ後ろに下がる。

 それでも近いな。おそれ多いな。ひれ伏していいですか。


「聞きたいこととは何でしょうか」


 落ち着きを取り戻すように言葉をはく。落ち着かないけど。


「昔のことを、覚えているか聞きたくて」

「昔のこと?」

「君と、初めて会った日のことを」


 初めてって…あれですか、人生最大の黒歴史のあれですか!?

 あれはそのほんとうにただただとしがいもなくてんせいしていることがうれしくてたのしくてたのしくてちょうしにのってのりにのりまくってこのよでいちばんわたしがなんでもできるんじゃないのとかああほんとうにちょうしのってすみませんでしたわたしがあほうでございましただからそのあのつまりのところ


「ごめんなさい!!!!」

「え」

「謝って許されることじゃないと分かっているんです。初対面であんな傲慢な態度で不愉快にさせてしまって上にご迷惑をおかけしてしまって後悔しています。これからは役に立つようにしますので」

「待った、待って、落ち着いて」

「落ち着いてなんていられません。私はあの日のことを本当に後悔しているんです。だからこそ少しでも貴方の役に立ちたくて、ああでもご迷惑だったのでしょうか、身勝手にも私なんかが貴方を手助けしようだなんて」

「ストップ!」


 口を手で塞がれた。

 自分勝手な言い訳を止められてしまった。

 ああやはり許されないのだろうか。言い訳もできないのだろうか。


「これから聞くことに、しゃべらなくていいから、答えて」


 ゆっくりと首を縦に振る。


「あの日のこと覚えているんだね」


 縦に振る。


「俺のことは、怖い?」


 恩人を怖がるなんてありえないのに何でそんなことを聞くのだろうか。

 分からないけれど、首を横に振った。

 彼はどこかほっとしたようにうっすらと笑った。

 そんな顔も美しいです。目が潰れそう。


「今から手を放すけど、落ち着いて俺の言うことを聞いてくれ」


 再度首を縦に振ったら口から手が離れていった。

 なんか、寂しい。…ん?さびしい?なんだ寂しいって。


「謝りたかったのはこっち。あの日泣かせてしまって、ごめん」

「そんなっ」

「聞いて」


 未練がましく言い訳してしまいそうなので、今度は自分の手で自分の口を塞いだ。

 わたし、しゃべらない。わたし、きく。


「本当は斎条さんがこの学校に入学してくると知ってから、もっと早くに謝りたかったんだけど、遅くなってしまった。斎条さんは生徒自治会には入らないって言うし、てっきり怖がられているものだと思っていたんだ」


 ブンブンと勢いよく横に首を振ると先ほどと同じ、いやそれ以上に綺麗に微笑んでくれた。

 眩しい。眩しくて邪悪な何かが浄化されてるきがする。


「怖がられているんじゃなくて、良かった。またあの日のように気兼ねなく話がしたいんだ」


 気兼ねなく?貴方と?対等に?おしゃべりを?


「それは無理」


 尊すぎて正常でいられるわけがないもの!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ