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世界を繋ぐお仕事 〜世界征服編〜  作者: na-ho
しんらいとさいせい
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58 本望

 ◯ 58 本望


「今日はいかなるお呼出しでしょうか? 我が神よ」


 今日は膝をついて頭を下げてるカジュラと会っている。


「あの普通で良いから。ランクSを見込んで連れて行って欲しいダンジョンがあるんだけど……えーと視察に行きたいんだ。環境保護してるから狩りに行くんじゃないよ? 見学に行くだけだからね?」


 なんだか張り切って何かやらかしそうだったのでちゃんと釘を刺しておく。


「はて、環境保護ですか? ここは改善をするのではありませんでしたか?」


「うん。ここは改善しないと瘴気が酷いからね。アンデッドも住みにくいくらいだし」


「そうでございますね。気の弱い者ではここは少々住みにくいですが、神の用意した場所です。我々で良くしていく所存です! それに冒険者ギルドの正式登録は価値がありました。我々は街に住む為の条件を決めましてそれが破られたら法に則って処罰を与えるように制定しました。それで人間との関係も多少ですが進展がみられました。こういう種属があると分かってもらえたというか……本当に日の目を見るのはまだまだ先ですが肩を並べられる所まで我々次第で登っていけるのです。希望が見えてきました! 種属というものの壁を取っ払えるなんて感動でございます!」


 ……それはまだ早いと思うけど、まあいいか。壁はあるよ、人間同士でも分かり合えないのだから。それでもこれまで攻撃対象だったのが違うとされたのは大きいのだと思う。それよりも夢見がちな乙女の様なキラキラな視線でこっちを見つめながら話すカジュラは何か思い詰めていて恐い。

 ダンジョンのアンデッド用の薬類も交流に一役買ってるみたいだ。人間の冒険者が使えない物だから売りに出すし、それをカジュラ達が買う。ビジネスからでも繋がりが持てれば後はなんとでもなる。最低限のルールも定めたみたいだし、うまくいって欲しいと思うよ。


「これからが大変とは思うけど、認知はうまくいってるみたいだし、頑張ってね? で、僕の言ってるダンジョンは遺跡のダンジョンのある、えーと、オレンジの湿地帯だよ。あそこはこの世界を再生する為の大事な要素があるから出来れば現状維持が望ましいんだ。それで、僕も見に行かないとダメだし、付いて来てくれる? 僕はあそこは苦手だし」


「畏まりました! このカジュラ命に代えてもお供致します! いいえお守り致します!」


 いや、命はかけなくていいよ? それも本気で言ってるから怖いんだけど。


「で、何時が空いてるかな?」


「あなた様の為でしたらいつでもお空け致します!!」


「そ、そう? じゃあ明後日に行けるかな?」


 何か迫力に気圧されつつ答えた。


「勿論でございます!」


「じゃあ、明後日の早朝だよ?」


「ははー」


 なんだろうか、堅苦っしくていけないな……。シュウ達に渡したのと同じ連絡の取れる腕輪を渡し、使い方を教えた。


「次に会う時はもうちょっと砕けた態度で良いからね?」


「有り難き幸せにございます」


 涙目で言われた。いや、だからそれが……まあ自由にさせておこう。明日は久しぶりにアストリューに戻る。妖精達とも触れ合って癒されないとダメだ。

『みかんなカフェの』少し先にある地獄型ダンジョンの魔核と宝箱の中身の交換、買い取りの場所に来ている。組合の作った施設なので、作りはしっかりしている。

 多くのダンジョン攻略に来た闘神やら死神、どこかの訓練の団体がひしめく中、アストリューの神官達が揃っている診療所のある二階フロアーに向かった。今日はここでの手伝いをこの後はやる予定だ。


「キリム、ここにいたんだね」


 顔に飛びついてきたキリムを引きはがして撫でた。光の羽根をばたつかせて喜んでいる。うーん、可愛い!


「助っ人の人ですね? やっと来たのですか、人手が足りないのです! さあ、急いで下さい」


「う、はい」


 別に遅れた訳でないのにまるで僕が悪いかのように言われて急かされた。が、焦っているのは分かるので取り敢えず、キリムについて行った。すると別段忙しい感じは無かった。僕が仕事に入ると直ぐにさっきの女の人は着替え室に入って着替えていそいそと帰っていった。


「何だったんだ?」


 キリムからここに来る前の映像と会話が脳内に送られてきた。どうやらデートに行くのに僕の到着を待ち構えていたらしい。それであの剣幕だったのかと納得した様な出来ない様な? 余裕の無い感じはちょっと周りに迷惑だ。とばっちりは勘弁したい。

 キリムもあたられて辛かったみたいだ。あの人には来て貰うのを止めた方が良いかもしれない……。些細な事でトラブルを呼び込まれても困る。僕は次からは彼女にはここの仕事の依頼が行かないように手配した。気持ちに余裕ができてから復帰をお願いする事にする。

 キリムがこんなに怖がるなんてよっぽどだ。恋は周りが見えなくなるというけど、ちょっとここでは困る。地獄の気に当てられて帰ってきている人達が集まっているのだから注意するに越した事は無い。


「魔核の浄化も進んでるし、ここもそんなには忙しくないね」


 初めての人用のサポートも、かなり安全率を大きく取りながらやっていると聞く。少しずつならして行って成長を促しているらしい。

 教官をやってるベテランさんはマリーさんの知り合いが多いみたいだ。ギダ隊も何かの訓練で時々来ているみたいでカフェに時々来てくれる。死神達との連携もやっている。この交換所の他にもレストランに道具やら武器の販売所に、防具屋に修理屋と村みたいになっている。

 まずはここの下の受付で登録してからダンジョン内に入り、何日間で帰ってくるとかの予定を聞いてから許可している。魔核の買い取りはここでのみにして貰っていて、外への持ち出しは禁止だ。

 浄化が終った魔石になれば持ち出して大丈夫になる。ダンジョン内で迷子になったら直ぐにサポートがなされるし、万が一の緊急時は外に転移出来る様にしているし、救助訓練もある。


「ち、女じゃなかったか」


 と、明らかにがっかりした顔で僕の担当患者は愚痴った。聞こえてますよ〜、というか聞こえるようにわざと言っている。僕がめげずにそのまま治療に入ろうとしたら、


「女と変われよ、気が利かない野郎だな」


「ですが、皆は他の人に付いてるので我慢して下さい」


「そんなの待つに決まってるだろ?」


 周りの女性達が嫌がってこの人に付こうとしなかったのはこういう訳か……。包帯を巻こうとした手を振りほどかれ、触ってんじゃねぇと睨まれた。あー、面倒くさい。女性達からはなんとかしろという目が僕に降り注がれている。


「常習犯ですか?」


「はい、あの人セクハラでみんな嫌なんですよ」


 バックルームで事情を聞いてみたらそうだった。ご退場願おう。僕はマリーさんに連絡を入れた。弱い者いじめなセクハラ野郎が救護室に陣取って迷惑しているので退治をお願いした。当然、彼にはダンジョンに入るのも今後はお断りをした。地獄の気にやられてそうなってるのだとしても、常習犯はダメである。確信犯だしね。

 女性の闘神達に取り囲まれて素敵な治療をして貰ってから、彼はどこかに連れて行かれていた。きっと本望だろう。合掌。


「他にもセクハラとかあったら、ちゃんと言ってね〜? きっと素敵な治療を彼女達がしてくれるわ」


 マリーさんが連れてきた闘神達に女性の治療班は嬉しそうだった。


「頼りになるわ〜。ステキ〜」


「カッコいいー、惚れちゃうー」


 うーん、まあ良いか? 確かにカッコいいし頼りになるからね。


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