③
だが…俺は
へまをしたのかそれとも元々ベオドラムは『黄金の眠り(ゴールデンマイム)』についていなかったのか、俺はあいつとバッチリ目が合っちまったんだ。
あいつの巨大は大きな瞳に俺の驚く姿が映るのが分かった。
その瞬間、
俺は身体を反転させて
その場を跳んだ。
それは正しかった。
脳全体にアドレナリンが分泌されるのが分かる。背に広がる焦げた床の匂いと熱風。
炎の息!!
俺は走り出す。
いや跳ぶように。
俺は兎の様に、いや鹿の様に、いやどっちで何だっていい!!
俺はもう一目散にこの迷宮の階段を駆け上がる。
竜は迷宮を出れない。
棲み処を離れることが出来ない。それが神と竜のこの世界での古い約束なのだ。竜は神からの授かりものである宝物を護ることになっている。
『呪い(ギアス)』ともいわれているが今はそんなことはどうでもいい。
俺は唯、唯、一目散に駆け上がるんだ。そして駆け上がるだけ駆け上がり、ベオドラムの炎の息を潜り抜けて、やがてこの沈黙が訪れ、俺は外の世界の光が差しこみ始めたところで最終螺旋階段の隙間に身を潜めた。
何故なら…
俺にはあいつの考えがひりひり背を焼く太陽の様に分かるからだ。
あいつはきっと俺がこの差し込む陽の光に身体をさらした時、一気に灼熱の炎の息を叩きつけようと虎視眈々とどこからか狙っている筈だ。
出口は一か所。差し込む光にその誰もが姿をさらされることを避ける術はない。
もし一流の投げ弓の狙撃手なら、この罠ともいえる死地に獲物を誘い込み、きっと楽に仕留めようとする。
ベオドラム、やつが二流の狙撃手なら別だが、あいつは一流も一流、超一流なのだから。
そうだから俺は日没を待つ。全てが闇に閉ざされた時こそ、闇に生きる我ら眷属である盗賊が生きる時、そう…逢魔が時とでも俺は言いたい。




