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①
――危険な仕事になるっていうのは分かってた
焦る気持ちに足がもつれちまう。もう、軋む鎧の音なんぞに構ってる間は無い。先刻まで吐く息の音さえも気にしていた時分とは今は訳が違う。今は一刻も早くこの深い迷宮からこいつを持って逃げ出すことを考えなきゃならない。それが唯一俺に与えられた生存方法なんだ。正直俺自身やきが回った何て思っちゃいない。だってこの仕事を選んだのは俺自身なのだから。俺は鎧の懐奥に仕舞い込んだこいつを握りしめる。こいつが何なのか、知らない奴には分かるまいが、これは秘宝の中の秘宝。
――『竜の涙』
母竜が子を産むときに流すと言う涙が竜の鱗から落ちて地面に溜まり、長年の間その地に溜まって鉱石化したものだ。こいつは滅多に市場に出回る様なそんじょそこらの安物鉱石なんかとは比べられる代物なんかじゃない。あの黒不死鳥石すらも霞む鉱石だ。こいつさえ持ち帰れば俺は一生あの地で何不自由なく暮らしてゆけるだろう。美しい妻も豊かな農場も屋敷も、いやもしかしたら特権階級になる為の株も買うことができるかもしれねぇ。
このしがねぇ泥棒風情がだぜぇぇ!!
だから何としてもこの迷宮から俺は生きて戻らなきゃならないんだ。そうこの迷宮に棲むあの化け物の手から。
いや、あの化け物が放つ、この轟音混じる炎の息から!!




