ひぐらしに憧れて、第一話
ひぐらしに憧れて、第一話 事件発生
「……暇ですねぇ」
「そうだな」
「なんかこう、大きな事件とか起きないんですかね」
「不謹慎なことを言うな」
「すんませ〜ん」
そうブウ垂れてるのは、後輩の進藤彰巡査部長だ。今年の4月から巡査から昇格し、気合充分なのだが、いかんせん、事件は起きてもすぐに犯人は逮捕される。ちょっとした難事件でも他の班が解決したため、あまり活躍できておらず、結果不貞腐れているというわけだ。
「いいことじゃないか。事件が何もないということはそれだけ平和ってことだ。それに事件はいつか必ず発生する。そのときにうまく対応できるよう、常に精神を静め、そして鍛えてだな」
「なんなんすか、その武術家理論。僕はそんな常に自分を律することなんてできませんよ」
「ったくお前なぁ」
「はぁ、なんか難事件起きないかな〜」
「一つ聞いていいか? 」
「なんです」
「お前の思い描く難事件ってのはどんなやつなんだ? 」
「う〜ん、例えばですねー」
「ああ」
「連続少女殺人事件とか? 」
一瞬、我が耳を疑った。はぁ?なんつったこのバカは!
「いやですよ、なんか少女もしくは女性ばかりを狙った猟奇殺人犯による連続殺人事件!普通の日常を過ごしていたと思ったら急に狂気の世界になり、人々は怯え、そして恐怖に苦しむ。そんなとき、現れた救世主進藤彰!彼によって事件の謎はたちまち解かれ、犯人を追い詰めていく。そして感動のクライマックスへっ! 」
「……けんな」
「へっ? 」
「ふざけんじゃねぇ! 」
「スッスミマセン!不謹慎すぎました! 」
「違う、そこじゃねえ」
「はい?どういうことです? 」
「少女が悲劇に遭うってことが気にくわねぇんだよ! 」
はい?まぁ確かにか弱い少女たちがそんな目に遭うのはあまりみたくないけど、
「そうだよ!誰だってそうなんだよ!!なのになんで彼女たちはあんな目に」
ん?彼女たち?ってだ、
「いいか!あいつらはな、ただみんなで仲良く暮らしたかっただけなんだよ!なのに祟りだとか、村の暗部だとか、家庭環境だとかでみんな苦しみ、そしてお互いを信用できなくなって、最期は自分の愛する人を…あぁっ!なんであんなことが起きちまうんだ!どうして彼女たちは幸せになれないんだ!どうして大切な人を傷つけてしまうんだ!誰がそんなこと望んだんだよ!ふざけんじゃねぇぞ!!俺は、俺は彼女たちが幸せになってほしいそう思ってるのに、なんでなんだよ、なんであんなことに。お互い、お互いが大好きなのにさぁ」
そう言い切るとなぜか音風先輩は泣き始めた。一体何があったのだろう。いつも大人な先輩とは思えない。とはいえ、まぁ下手に突っ込むと、逆にキレられる可能性もあるので、ここは大人しく様子を見よう。
「ふざけんじゃねぇぞ園崎!ふざけんじゃねぇぞ東京!ふざけんじゃねぇぞ社会の闇!!」
全然興奮が収まりそうにない先輩を傍目にこの前起きた事件の調書の整理を行なっていると、突然捜査一課長から呼び出しをくらった。
「急に呼び出してすまないな」
そうやって立場が偉いにもかかわらず部下に気を遣うこの人は、捜査一課長の笠松警視正だ。
「いえ、大丈夫です。御用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「うむ、実はな、」
そういうと、一課長は椅子に座り直し、
「今から岐阜の白川郷に行ってほしい」
「今からですか!」
「ああ、そうだ。無論、交通費など必要な手当て等は支給する。今手が空いているのは、お前たちだけなんだ。すまんな」
「いやでも、あまりに急すぎると申しますか…」
そう言い返そうとしたとき、
「喜んで、行かせて頂きます!」
「先輩!?」
「そうか。では音風、そして進藤!よろしく頼んだぞ!」
「はっ!」
えぇ〜うそ〜ん。
「どうしてそんなに乗り気なんです?」
「逆に問うが、なぜそんなにお前は乗り気じゃないんだ」
「なんでって、そりゃ急だからですよ!確かにこの仕事にも出張があるのはわかってます。でもあまりに急すぎません?こっちにだって都合があるのに。今日の夜は合コンだったんだけどな〜」
「合コンより雛見沢だ!」
「はい?なんです雛見沢って」
「…すまん、白川郷のことだ。それより、改めて資料の確認だ」
「はいはいっと、なになに、被害者は富…」
「富竹か!」
「いえ、富川さんです」
「なんだ、違うのか」
「誰ですか富竹って」
「そんなのはどうでもいい。続きを頼む」
「えっとですね。お名前富川一郎さん。職業はですね…」
「自衛隊の広報課だな」
「いえ、警察庁の公安に所属だそうです。」
「なんだよそれ!そんなの富竹と赤坂の融合じゃねぇか紛らわしいな!」
「さっきからなんなんです?富竹とか赤坂とかって」
「…悪かった興奮して、もう大丈夫だ。」
「そうですか?まったく…状況からみて事件性あり、公安の職務によるものかは不明。しかし、今のところその可能性は低いと」
「気心の知れた公安のやつに聞いたが、それに間違いはないそうだ。仕事上でのトラブルはなし。担当してた事件も無事終わり、休暇をとってこの白川郷に来ていたそうだ」
「でも珍しいですよね6月に白川郷なんて。普通は雪が降る冬に来るもんじゃないのかなって」
「そうでもないさ。観光スポットはあるし、雪がないほうが自然豊かな景色を堪能することができる。富川さんはそういった田舎風景が好きだったんだろう」
「なんでも趣味が風景画だそうです。ここにも、それを描きに行くと友人に話してます」
「そこは写真にしてほしかったがな」
「どうしてです」
「…やめておこう。悪いが忘れてくれ」
「なんか今日変ですよ先輩」
「仕事中は大丈夫だ。気にするな」
「だといいんですけど」
不安だ。普段の関係なら、自分がボケて、それを先輩がツッコむというのが通常の流れだ。それが今は真逆だ。先輩がボケて自分がツッコミを入れている。まずい。非常にマズい!自分がしっかりしてないと仕事にならない。普段の先輩はこんな気持ちなのか。今後はできる限り真面目に仕事しよう。
「おい、続きを頼む」
「了解です。富川さんは一昨日の夕方頃に白川郷に到着。そのまま予約してたホテルにチェックインしています。その後、夕陽をきれいに見えるところはどこかとホテルマンに聞いており、ホテルマンが伝えたその場所に向かっていったそうです。なんでもその場所は」
「白川八幡神社か?」
「そうです。知ってたんですね」
「いや知らない。しかし、白川郷で夕日がきれいな場所として出てきたのがそこだ。そして、被害者の富川さんは帰ることなく、その神社で『死体』で発見された」
「えぇ、そうです。にしても、なんで神社はよく殺人現場に使われるんですかね?」
「まぁ、夜人目につきにくいし、密会とかには使いやすいんだろ。で、結果取引の件で争いそのまま殺人ってのが王道だな」
「でも神社ですよ。知ってます?神社にとって死体って穢れの象徴らしいですよ。だから葬式とかは絶対神社ではやらないそうです」
「そのことは俺も聞いたことがある。しかし、今回重要なのは、あそこはただの神社じゃないってことだ」
「ただの神社じゃないってどういうことです?」
「…関係ないことを祈ろう」
「ちょっと、教えてくださいよ」
「着いたぞ。忘れ物すんなよ」
「ちょっと、まってくださいよ先輩!」
俺の予感は、残念ながら的中してしまう。なぜ起きてしまったのか、どうして起こしたのか、ただ、一つだけ言えることがある。それは、彼女が望んでいることではないということだ。全ては、ひぐらしが、知っている…。
作者・古宮公助
お久しぶりです。今回は、私が今どハマりしているひぐらしを軽く題材にした連続小説です。内容としては、ひぐらしが大好きな刑事の主人公が、リアル雛見沢の白川郷で起きた事件に挑むというものです。かなり見切り発車したので、最悪、途中で止めるかもしれませんが、そのときは察してください。お願いします。




