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第12話 7日目

 16台の96式装輪装甲車に全員で分乗して乗り込み、校舎の北にあるトンネルを抜けた。

 途中、道を遮るように亡者が飛び出してきたが、アクセルを踏んで盛大に轢き逃げる。

 分厚い鋼鉄の装甲車の前に飛び出すとはバカな奴らだ。

 トンネルの向こうは緩やかな山に挟まれた谷間のようなエリアだった。

 山の中腹ほどに大きな円形の建物が見える。

 前にテレビで見たことがあるな。

 中国の少数民族の作る集合住宅に似ている。

 ここはそんな中国の辺境の山村みたいだな。

 アイテムボックスから双眼鏡を取り出す。

 双眼鏡やドローンなどの偵察に必要なアイテムも昨日のうちに教授にリクエストを出しておいたのだ。

 建物に焦点を合わせれば建物の外を逃げ回る人とそれを追いかける服を着たカエルの化け物が映っていた。

 どうやらここも事件に巻き込まれた人たちに割り当てられたエリアのようだ。

 信号弾の用意をする。


「ここでも襲われている人たちがいるみたいです。助けましょう!」


「そうだな」

「賛成です」


 クマダさんやアラキさんも賛同してくれ、信号弾を空へと打ち上げる。

 これは狼煙だ。

 ここから俺たちが反攻するための。

 96式装輪装甲車のアクセルを踏み、猛々しいエンジン音をなびかせ、草原の草をなぎ払いながら山へと突き進む。






 それから5日後。

 緩やかな丘の上に立つ。

 ここからだと遠くがよく見える。

 遠くに見えるは一つの小さな山を改造して作った巨大な建物。

 低地に山をぐるりと囲む城壁を備え、中腹にも同じような城壁を、そして山の頂上には中国風の金色の屋根を持った大きな館が建っている。

 遠めに見れば三角形に見え、アジア風のピラミッドのように見えた。

 ここがラストエリア、皇帝陵だ。


 これまでに5つの村と1つのダンジョンを抜けてきた。

 普通のエリア移動で行けるのは横並びのエリアであり、これでは中枢に辿り着けないと気づいたのが4日目。

 それから情報を探し、隠された通路を見つけた。

 それがダンジョンへとつながる道だった。

 ダンジョンは中枢までの道を遮る関所のような場所で敵も相応に強く。

 昨日、ようやく準備が整って一気に抜けてきたのだ。

 これまでに開放した村から共に戦う志願者を集め、その数1092人。

 本当は1500人近くいたのだが、400人には武器を大量に持たせ他のエリアの救助に向かってもらった。

 ウィルスの侵食も順調で現在の弾の補充速度は960/s、保有する弾の数は1億発ちょい。

 5割が主力となるアサルトライフルの弾薬、3割が車両に取り付けた重機関銃のでかい弾薬、2割はそれ以外のショットガンやハンドガン、グレネードの弾薬だ。

 車両は重機関銃のついた装甲車が80台に馬が50頭。

 96式装輪装甲車も改造してブローニングM2重機関銃を装備。

 これは12.7mm弾を使うマシンガンで車をやすやすとバラバラに引き裂き、たった5発の焼夷弾でバスを炎上させるほどの力がある強力な銃だ。

 馬は青い肌をしたナイトメアという魔物で、テイマーのクラスを持った人たちが仲間に引き入れた。

 本来、テイマーは特殊なモブNPCを仲間に引き入れるだけの職種で魔物は仲間に出来ないのだが、これには理由がある。

 メディカルキットは状態をリセットする薬だが、魔物に打ってみたらどうなるかを実験してみた結果。

 魔物の無害化を確認できた。

 亡者なんかを仲間にしてもしょうがないので、ナイトメアを大量に捕らえ騎兵隊を設立してみた。

 これを指揮するのは第4の草原エリアで仲間にしたタケダさんだ。

 そして通信機や偵察ドローンなどの補助用品も充足させ、車両の1台は指揮車両として中を通信機で埋めている。

 最後に俺を抜いて1091名の仲間たち。

 彼らは全員レベル50を超えており、クラスもレンジャーやシューターが多く射撃に特化している。

 これがこのゲームに侵入した6日間で揃えた戦力だ。

 現実時間では24時間近く経っている。

 リミットは近い。

 これだけの戦力を集め最後の戦いに挑む。





「これが斥候の集めた情報です」

 アラキさんがノートPCの画面をこちらに向ける。


 画面に映るのは上空から撮ったと思われる航空写真。

 偵察ドローンを使ったのだろう。

 地上は黒い点で埋め尽くされている。


「この点の一つ一つがモンスターとなります。

 その数およそ10万」


「……こいつはたまげたなぁ。敵さんも本気ってわけか」

 豪胆なクマダさんも呆けたように口を開く。


「……さて、どうしますか?」


「頭を潰そう。ボスを倒せばそれでお終いのはずだ」

これまで黙っていた俺が口を開く。


「そりゃそうだが、にいさん。どうやってだ?」


「俺がボスの所まで辿り着く。それで勝負は決まるはずです。

 いえ、決めます。皆さんにはそこまでの道を作ってほしい。

 厳しい戦いになりますが……」

 二人に頭を下げるが、すぐに肩を叩かれた。


「わかった、そこまではなんとかするからキチッと決めて来い!」

 クマダさんが笑い。


「ええ、こちらは任せてください。装備も整いましたしね。

 10万ぐらいなんとかしてみせますよ」

 アラキさんも笑った。

 三人で笑いあう。



 二人と別れ、教授へと連絡を入れる。


『で、どんな装備をご所望だね? 今なら戦車もダース単位で送り込めるぞ』


「いえ、欲しいのはもっと大きいものです」


『ほう?』


 教授に希望を告げ、さやかを探す。


「さやか!」


「キョーちゃん、どうしたの?」


「もうすぐ最後の戦いだ、ここからは俺は別行動になる。

 さやかに頼みたいことがあるんだ」


「キョーちゃん……」


「俺が外と通信を取っているのは知っているな。

 名前は出せないが外部に協力者がいる。居ない俺の代わりに装備のリクエストとかがあったらさやかの方から連絡してくれ」

 通信機を渡す。


「キョーちゃん、絶対に生きて帰ってきてね。

 こんなことに巻き込んじゃ、って…ごめんね……」

 泣きだしてしまった。


「良いんだ、俺が望んで挑んだことだし。

 それに絶対に戻ってくる、帰るときは二人でだぞ?

 そっちも死ぬなよ」


「……うん、私はアラキさんの指揮車両に乗せてもらえることになってるから大丈夫だと思う」


「うん。それじゃ、行ってくる」


 さやかと別れ、一人エリアの外れの森へと入っていく。

 敵に見つからないように迂回しながら敵の後方を目指す。




次回、視点変更があるので少し短いかもしれませんが、ここで切ります。

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