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第13話 ラストバトル前編

 トオノさんと別れてから6時間が経ちました。

 彼は無事進めたでしょうか?

 こちらも準備は済み、いつまでもじっとしている訳にもいきません。


 1091名、車両90台、隊列を組み緩やかな丘を下っていく。

 目の前に広がるのは広く平らな平原とその奥にある城壁を備えた小山。

 このエリアの名にもある皇帝陵、皇帝の

 ラストステージが墓場とは何とも悪趣味ですねぇ。

 その墓の手前、地平線が見えないほどに平原を覆いつくす影。

 10万のモンスターの軍団。

 敵は軍団を4つに分けており、前列を中央、左翼、右翼の3つに分け。

 その奥にもう1つ。

 中央には7本の捻じれた金色の角を持つ悪魔が佇み、その周りを武器を持った魔物たちが控えている。

 さしずめ親衛隊といったところか。

 10万の肉壁は厚く、いくら彼でもあれを抜けていくのは無理のはず。

 出来る限り、こちらに引き付けないといけませんね。



 こちらも敵に習い前列を3つに分けた同じ陣を敷く。

 違いはこちらの指揮車が居るのが前列中央で、後列は騎兵隊を含む予備兵力だ。

 中央400、両翼250ずつに後方の予備兵力が騎兵50を含んで100。

 それを縦2列で横いっぱいに広げる。

 戦力を分けるか、それとも一転に集中した方陣を敷くかで悩んだが、敵の兵力を見てこちらが良いだろうと選んだ。


 こちらが陣を整えるのを待っていたか、魔物どもが雄たけびを上げる。

 大地を揺らすような咆哮に思わず銃の引き金に手を掛けるものが多発した。

 10万の視線が一斉にこちらを向いた。

 その視線の圧力に崖から落ちたような浮遊感、足元を鳴らす震え。

 場違いなことをしようとしているような心細さを感じる。


 負けるわけにはいけない。


「全員、構え! こちらには一億の弾薬がある!

 射程に入り次第、叩き込め! 悪夢を今日で終わらせるぞ!」

 指揮車のマイクに向かってがなり込む。


 それに呼応して全員が踵を地面に強く打ちつけ、前を向き、銃のロックを外す。

 1000人の踏み出す地響きが一瞬だが確かに伝わった。

 目の前の魔物の軍勢に比べれば100分の1の規模だが、確かにここに揃って前を向いていることを感じ、気持ちが楽になる。

 敵に動きがある。

 大きく雄たけびを上げたかと思ったら、そのまま軍勢が前進してきた。

 中央は真っ直ぐこちらに、両翼は左右に広がりながらこちらを包囲してこようとしている。

 指揮車両に積み込まれたレーザー測定器を正面に当てる。

 正面に見えるのは大きな盾を持ちながら、一列に並んで淡々と歩み寄ってくる魔物。

 その後ろに長槍を持った亡者の群れに5mほどの巨人や牛の体に人の頭を持つ化け物などが続く。


 500……軍勢の上げる土煙が見える。


 400……遠くからザッザッザッ……とエコーが掛かったように止まない音が聞こえ始める。


 350……裸眼でも先頭の魔物の輪郭がわかり始める。


 300……ここだ!


「射撃用意! 撃てー!!」

 一列目500人が一斉に撃ち始める!


 装備はステアーAUG、形が特徴的なアサルトライフルだ。

 グリップが2つあり、引き金の付いた通常のグリップの前方、銃身の下に左手で銃を支える為のグリップが付いてあり反動を抑えやすい。

 さらに弾倉がグリップの後方、ストックに近い部分についたブルパップ方式で火薬に火をつける薬室が後方に設置されてある。

 発火点が通常のライフルよりも体に近い点であることで銃口をぶれにくくし、両手でグリップを握ることで反動も抑えやすく安定しやすい。

 撃ち始めたばかりの素人でも遠距離射撃をしやすいように選んだ銃だ。

 5.56mmライフル弾が堰を切ったように放たれる。

 音の津波。

 攻撃を受けてるのは自分たちではないかと思うほどの爆音が前列で鳴り立てる。

 ガガガガッ!とハンドガンよりも少し高くて硬い音が秒速10発というハイテンションで鳴り続ける。

 前列は左右からは鼓膜に向かって、この脳に直接響くような音が向かってくるのだからたまったものではないだろう。

 たった3秒で一人30発を撃ち尽くし、弾倉の交換。

 その間はすぐ後ろに控えていた2列目が1列目の隙間から銃身を出し、引き金を引き続ける。

 たったの7、8秒で3万発もの弾丸が発射された。

 300mでの連射だ、半分以上外れただろうが成果は、とスコープを覗き込むが……


「!? 敵前列、無傷です!」

 すぐに観測官から報告が入る。

 盾を持った奴らに阻まれたようだ、ならば。


「前列下がれ! 装甲車両用意、でかいのを食らわしてやれ! 撃てー!!」

 前列が下がり、代わりに指揮車を除く89台の装甲車が前に出て天井に付けたブローニングM2重機関銃が火を噴く!


 アサルトライフルなど可愛く見えるほどの轟音!

 岩を叩き砕いているかのような音が一斉に鳴り響き、耳を押さえる歩兵たちもちらほらと出てくる。

 だが威力は絶大だ。

 文字通り敵を盾ごと砕いた。

 敵前列の盾持ちどもはその体を打ち砕かれ、その後方も流れ弾で体のどこかを欠損させている。

 敵の歩みが止まった。


 1台200発を吐き出し装甲車は後ろへと下がる。

 重機関銃の欠点として、強い弾薬を使うために銃身が熱くなりやすいのだ。

 100発撃ち出しただけで銃身の温度は200度に達する。

 200発撃つごとに銃身を引き抜き、代えの銃身を差し込むという作業が必要になる。

 アサルトライフルで敵を抑えられたら装甲車の部隊は機動戦力として使いたかったが仕方ない。

 これで盾は崩せた。

 ここからはアサルトライフルでも十分打撃を与えられると思い、歩兵たちを前列に戻すよう指示を出したところ。

 とんでもないものを見る。


 敵の盾持ちの化け物どもが再生し始めたのだ


「まさか……不死身持ちか!?」

 通信機が鳴る、送り主はクマダさんだ。


「大将、聞こえるか? アレはチェーンソー男と同じで不死身のタイプだ。

 あ、クソ! 後ろの槍持ちどもまで再生し始めやがった!」


「まさか……全員、か!」


「クソ! 本当にこのゲームを作った奴は性格が悪いな」


「……とにかく撃ち続けるしかありませんね。総員! 撃ち始めろ!

 車両部隊、銃身の換装を急いでください。

 クマダさん、アレにもウィルスは効くんですよね?」


「にいさんが言うにはウィルスが奴らの再生力を阻害するのは確認したらしい。

 ウィルスが中まで浸透して、繁殖すれば存在そのものを破壊できるとは言ってたな」


「浸透、繁殖……時間ですか」


「ああ、とにかく撃ち続けてウィルスが効き出すまで長引かせるしかないってわけか」



 前列に配置された歩兵たちが撃ち続ける!

 耳が痛いなどと言っている場合ではない、不死身の化け物たちがその特性を生かしてしゃにむに突っ込んでくるのだ。

 とにかく手足を撃ち砕いて、歩けなくさせるしかない。

 目の前には頭が欠け、脳みそを溢しながらも向かってくる亡者や涎を垂らしながら悠然と歩む巨人。

 猛然と向かってくる化け物の軍勢を銃弾の槍衾が迎え撃ち、ライフル弾が化け物どもに深く突き刺さる。

 キズつきながらも前進してくる姿はまるで茨の野を裸で駆けてくるようだ。

 茨の棘を己の身で強引に踏み折りながら進むのだ。

 向かう先には脆弱な人間たち。

 近寄りさえすれば勝ちとでも言うように、ただ愚直に突き進んでくる。

 化け物たちとの距離は150mを切った。



「そろそろか…」

 前線を睨んだタケダさんが愛馬ナイトメアに跨る。


「頼みます」

 通信機越しにアラキさんの声が届く。


「行くぞ野郎ども! 目標、敵左翼! 前進!」


 ナイトメアに跨った騎兵50騎が戦場へと進む。

 ドッドッドッ!と蹄で大地を叩きつけながら駆ける!

 馬体重500kgもある馬が時速80kmで進むのだ。

 一歩一歩の歩みはまるでハンマーかの様に重く、地面を抉り、土煙を立てる。

 タイヤではないので地面からの反発力が上へと抜け、強烈に上下へと揺れた。

 とにかく振り落とされないように騎兵たちが必死にしがみつく。

 早送りで流れる地面を横目で見ながら、前方に目標が見えてきた。

 味方の陣の後方から前線を迂回するように出て、敵左翼の横まで進んできたのだ。

 先頭のタケダさんが手振りで示す。

 隊形が矢の様に変わる。

 揺れているため喋ることが出来ないが問題なく指示は通り、背の武器を抜く。

 AA12(オートアサルト)ショットガン、フルオートのショットガンだ。

 見た目はアサルトライフルの様で弾込めもドラム式の弾倉の付け替えですばやく出来る。

 ナイトメアの騎兵隊が魔物の軍勢の横っ腹へと喰らいつく!

 長槍を持った亡者たちがこちらに気づき、長槍を構えた。

 数百の穂先がこちらへと向けられる。

 目前に迫る切っ先に対し、ナイトメアは僅かにも速度を落とすことなく、首を下げ突撃の姿勢をとる。

 それと同時にAA12が火を噴いた!

 タッ!タッ!タッ!……と軽い音を立てながら秒速5発の速度で散弾をばら撒いていく。

 散弾が亡者たちの手足や胸などを抉り、ミンチにしていく。

 手をちぎられた亡者が槍を落とす。

 そこにナイトメアが駆け込み、頭突きを喰らわせた!

 跳ね上げられ吹き飛ぶ亡者。

 亡者たちの槍衾は寸断され、それを抜ければ無防備な軍勢の中核へ。

 不意打ちを受け、慌ててかわそうとする化け物たちに散弾の追撃!

 AA12のドラムマガジンは30連装だ。

 間断の無い連射が化け物どもの肉を引きちぎり、強引に押しのける!

 こちらに向かってくる化け物はナイトメアの頭突きで跳ね飛ばした。

 そうやって敵陣の真ん中を駆け抜けながら、ナイトメアの馬体からは次々と金属の筒に棒が付いた物が地面に落ちていき……

 後方でドカン!と爆発が起きた!

 ナイトメアが駆け抜けた場所で少し時間を置いて、時限信管の手榴弾が炸裂した。

 爆発がナイトメアの開けた穴をさらに大きくしていく。



「タケダさんたちのお陰で敵左翼が混乱しましたね。頃合ですか。

 …全体に指令! 敵左翼を抜け、敵後方の丘で陣を立て直す!

 車両部隊、先駆けよ! 全員、それに続け! グレネード隊は後方に付き敵を牽制せよ!

 以上、では突撃!」


 90台の装甲車たちが騎兵たちに分断され足の止まった、敵左翼に突撃する。

 亡者たちを跳ね飛ばし、巨人は重機関銃で膝を砕き、倒れたところをタイヤで頭を踏み潰していく。

 装甲車が開けた穴に歩兵たちが続き、左右にアサルトライフルを連射しながら押し広げていく。

 さらにグレネード隊がグレネードライフルで後方へと回ってこようとする化け物たちを吹き飛ばす!

 このグレネード隊はナイトメア騎兵と共に予備隊として後方に温存していた部隊だ。

 グレネードは数が少ないので使い所は慎重に定めないといけない。

 今は他の弾薬の補充を全て止め、グレネードの補充に全力と尽くしている始末だ。

 これはトオノさんの彼女のさやかさんが受け持ち、各車両に搭載されたアイテムコンテナへと割り振っている。

 丘に着いたらすぐに物資を下ろして、第2戦の準備に取り掛からなければ。


「トオノさんは大丈夫でしょうか……」


 彼の心配をしていたところ、こちらとは反対側の敵後方の空に大きな影が。

 敵中枢へと向かっていく巨大な飛行船。

 彼も動いたようだ。



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