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【2025年1月16日4巻発売】ちっちゃい使徒とでっかい犬はのんびり異世界を旅します  作者: えぞぎんぎつね
四章

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160 聖女一行の受難

 病気と聞いたら、ミナトは黙っているわけにはいかない。


「その流行っている病気について、詳しく聞かせて?」

「はい、下痢と嘔吐、頭痛に、咳と発熱という一般的な風邪の症状なのですが……」


 いつもなら、二、三日で軽快するのに、一向に治らないという。


「どのくらい治らないの?」

「一度発症したら治りません。最初に病気が流行り始めたのが二か月前なので」

「二か月。それは風邪とはいえないかも」


 長引きすぎかもしれない。


「その病気は、死の風とは関係ないんだよね?」

「おそらくは。死の風で死ぬ場合はすぐに死ぬので……」

「その病気の原因は?」

「全く謎です。発症のタイミングもバラバラで……」


 ミナトは少し考えたが、わからなかったので、あとでアニエスに相談しようと考えた。


「ふむ~。その病気の患者さんの数は?」

「徐々に増えて、今では三百人を超えています」

「多すぎる……。リザードマン村は全部で何人いるの?」

「五百人ほどです」


 つまり半数を超えていると言うことだ。それは非常にまずい。


 看病する者より、患者の方が多い。

 そうなると看病している者達が休めない。疲れて看病している者が倒れてしまう。


「薬の材料もなく、村に助けを求めても、追い返されるばかりで……」


 それが昨日の騒動らしい。


「むむう。良くないね? これまでに死んじゃった人と死んじゃいそうな人の数は?」

「五人ほど亡くなりました。死にそうな程、重い者は三人です。私の母も……」

「お母さんの症状が重いの? どんなかんじ?」

「はい。衰弱して、二日前から、意識を失うことが増えてきて……」

「……よくないね」


 ミナトは少し考える。

 病気がどんなものか全くわからないが、治癒魔法をかけた方がいいに違いない。

 だが、子供達だけで向かうのは良くない。アニエス達に相談した方が良いだろう。


「うん。聖女様に伝えるね。なるべくはやく、必ず助けに行くからね」

「ありがとうございます」


 ピトンの表情が明るくなった。


「あ、ミナト、僕の作ったレトル薬をわたしたらどうです?」

「そうだね! ピトン、これをお母さんにのませてあげて。多分病気なら良くなるよ」


 ミナトは、ピトンにコリン作のレトル薬の瓶を三つ渡した。


 ミナトは自作のレトル薬を配ろうと一瞬考えたが、考え直した。

 ミナトのレトル薬は効果が高すぎるので、配るときは慎重にとアニエスに言われたからだ。


「これは? 聖女様のお薬ですか?」

「そそ、そんなかんじ。聖者様のお薬」


 コリンは聖者なので、嘘は言っていない。


「それで、村の場所をおしえて」


 ミナトは村の位置を聞いて、ピトンと別れた。



 海竜王の村へ、コリンのペースで走って戻る。


「急いでアニエスに言わないとね!」

「そですね! でも、ミナトなら一人でみんなを治せるんじゃないです?」

「かもしれないけど。相談するって約束したし……」

「ばうばう!」


 タロは「罠の可能性もある!」といっている。

 病人が出たと言うのが嘘で、聖女を捕らえる罠である可能性をタロは考えたらしい。


「僕は罠だとおもわないけど、相談しないとね?」


 子供達だけで突っ込むのは、他に手段が無くなってからだ。


「それにレトル薬を渡したし、時間の余裕ならあると思うし」

「そですねー。レトル薬の効果は凄いのです!」


 ミナト達は、村に戻ると、まっすぐに海竜王の屋敷に入り、昨日寝ていた部屋へと向かう。

 部屋に入ると、まだアニエス達は布団の中だった。


「アニエス、おきた~? え? 大丈夫?」

「え、ど、どうしたです!」

「……ぅぅぅ、ミナト……なにかおかしいの」


 布団の中のアニエスの顔面は蒼白だった。


「みんなも? どうしたの? 大丈夫?」


 アニエスだけでない。

 ジルベルトも、マルセルも、ヘクトルもサーニャも苦しそうにうめいていた。


「病気!?」「大変です!」


 ミナトは慌てて、魔法を使って診察を始めた。


「もう調べたのですがどうやら病気ではないようで……しかも治癒魔法が効かないみたいで」


 苦しそうなアニエスが言う。


「むむ? アニエスの治癒魔法が効かないの?」


 それは異常な事態だ。通常の病気ならば、アニエスの治癒魔法で治るはずなのだ。


「病気じゃないね……毒でもなさそう? 何だろう? 念のために治癒魔法をかけてみるね」


 ミナトは全員に治癒魔法をかけてみた。


「楽になった?」

「……少しだけ。うぅぅぅ」

「一瞬楽になったぞ。ありがとう、ミナト」


 ジルベルトたちも、少しだけ楽になったようだ。だが、楽になったのは一瞬だけ。

 すぐに、つらさが戻ってくるようだ。


「どういうことだろ」


 そこに、水や薬をお盆に載せた村人の女性が入ってくる。


「聖女様、お加減は大丈夫ですか?」


 アニエスを看病するなら、男より女がいいということで女性が選ばれたのだろう。


「お腹の痛みと吐き気が収まらなくて……」

「熱も出てきましたね……一体どうしてしまったのでしょう。薬も効いていないようですし……」


 女性は困った様子だ。


「ねね、こういう病気ってよくあるの?」


 ミナトは女性が運んできた水と薬を魔法で調べながら尋ねた。

 念のために毒が入ってないか確認したのだ。


 もちろん、水にも薬にも毒は入っていなかった。薬はただの胃薬と風邪薬だ。

 ミナトは【製薬】スキルを持っているので、薬の判別もできるのだ。


「おそらく食あたりだと思うのですが……」

「他に倒れたの人は?」

「村長と村の幹部達が軒並み……。聖女様と同じ食事を食べたもの達が皆、今朝になって倒れて……」

「ふむ~? それなら食あたりかも? ……でも」


 食あたりなら治癒魔法が効くはずだ。


 ミナトは考える。これは一体何だろう?

 治癒魔法が効かないが、病気のような症状。


「このお薬は、この村で普通に売ってるやつかな?」

「そうです。食あたりのお薬です」


 普通の薬は、効果も普通だ。

 治癒魔法が効かないアニエス達の症状には、効果はほとんど無いだろう。


「ねね。この村で食あたりって流行ってる?」

「流行っているとは聞きませんね。もちろん探せば食あたりの患者もいるでしょうが……」

「むむ~。アニエス。とりあえず、このお薬飲んで」


 ミナトは、自作のレトル薬をアニエスに渡す。


「それは?」

 女性に尋ねられたので、ミナトは誤魔化すことにする。


「聖女様の特製お薬」

「それは効果がありそうですね」


 アニエスは、ミナトが作ったレトル薬を飲み干した。


「どう?」

「一瞬、楽になったような……」


 治癒魔法と同じだ。


「これでなおらないとは……わからない」


 わからないならば、調べよう。

 ミナトは、女性に見つからないよう、こっそりサラキアの書を取り出した。

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