158 朝の散歩
ミナトが目覚めると、窓の外は明るかった。
「……サラキア様、至高神様、コボルト神様、おはよ」
ミナトは枕元の神像を、サラキアの鞄にしまうと周囲を見回す。
いつ戻ってきたのか、アニエス達はみんなミナト達の近くで眠っていた。
「タロもおはよ。ルクス、ピッピ、フルフルもおはよ」
「ぁぅ」「りゃ」「ぴ」「ぴぎ」
ミナトが体を起こしたときにタロとルクスも目を覚ました。
ピッピとフルフルは先に目を覚まして、ミナト達を見つめていた。
「ふぅぅぅぅぅゎぁぁぁぁぁぁ」
「ゎぁぁぁぁぁぁぅぅぅ」
「りゃぁぁぁぁぁ」「ぴぃぃぃ」「ぴぎぃぃ」
ミナトが伸びをするのと同時にタロとルクス、ピッピとフルフルも伸びをする。
「おはようです。ぅぅぅぅ!」「んにゃぁぁぁぁぁ」
コリンとコトラも起きてきて、思いっきり伸びをした。
「おはよ、コリン、コトラ」「ぁぅ」
タロはみんなを起こさないように、ずっと小声で吠えている。
「みんな寝てるですね」
「きっとよるおそくまで、会議してたんだよ」
「大人は大変です。眠らせてあげないとですね」
「そだね」「ゎぅゎぅ」
ミナトとコリンはアニエス達を起こさないことにした。
ミナト達は静かに部屋を出ると、日課の散歩へと向かう。
旅をしているとき以外、ミナト達はなるべく毎朝、タロを散歩させているのだ。
「ぁぅぁぅ~」「んにゃ~」「りゃっりゃ」
ミナトを先頭にして、海竜王の屋敷の歩いて行く。
「おはようございます。おでかけですか?」
村の青年に尋ねられたので、ミナトは笑顔で返事をする。
「おはよ! うん! タロの散歩にいくの!」
「お気をつけて。朝ご飯の準備は整っていますので、いつでもおっしゃってください」
「ありがと!」
ミナト達は海竜王の屋敷を出て、村の中を歩いて行く。
「やっぱり、おっきな村だね」
「まるで街です!」
元気に歩いていくミナト達は、とても目立った。
タロは大きいし、ミナトの頭の上には小さな竜が載っているので余計である。
「あ、聖女様とこの子供だね! かわいいね、お菓子食べる?」
「あらあら、お遣いかい?」
早朝から、動き出している村人達が、ミナトたちに声をかけてくる。
特にミナト達は女性に大人気だ。
「ありがと! タロの散歩してるの」「わふ」
「かわいい。撫でていい?」
「わふ」「んにゃ」
「いいって!」「いいみたいです」
タロとコトラは村人に撫でられて、気持ちよさそうだ。
「竜の子も可愛いねぇ。竜様にこんなこといったら失礼かもだけど」
「うむ、賢そうな顔をしているね」
ルクスも人気だったが、畏れ多いのか撫でようとする村人はいなかった。
村人と交流しながら、ミナト達は村の中をゆっくり歩いて行く。
「ぁぅ~」
「あ、走りたいの? そだねー。村の外に行こっか」
タロは体が大きい分、必要な運動量も多いのだ。
ミナト達が門まで来て、そこに居た村人に外に出ることを伝えると、心配される。
「子供だけで、大丈夫かい?」
「大丈夫!」
「それならいいのだけど……」
だが、聖女パーティーの一員で信用があるためか、あっさり外に出ることができた。
「タロ、はしっていいよ!」
「ばうばうば~う」
走るタロをミナト達は追いかけた。
タロはまっすぐ走らない。左右に飛び跳ねたり、五十メートルほど先行して戻ってきたりする。
全力でまっすぐ走れば、コリンどころかミナトですら置き去りにしてしまうからだ。
ルクスはミナトの側を飛び、フルフルはタロの背中に乗っている。
ピッピは上空を飛んで、コトラは、コリンと一緒に頑張って走っていた。
「わふわふわふ~~」
タロは特に何も考えず、本能の赴くまま走り回る。道ではない草むらの中を駆け回った。
それを追いかけるミナトも、とても楽しく感じている
だが、コリンとコトラは必死だった。
コリンとコトラにとって、タロについていくというのは過酷な修行のようなものなのだ。
「すごい雲だねー」
余裕のあるミナトが海の方を見ながら言う。
「すご、すごい? はぁはぁ……雲です? はぁはぁ」
コリンは、余裕があまりない様子だが、それでも海の方を見る。
十数キロ先に、海面から上空まで達する巨大な積乱雲が見えた。
「あれ、瘴気?」
「わふ~?」
「なんか瘴気が雲の柱みたいになっているのかな? あれが風の大精霊の島かな?」
あそこまで行くのは大変そうだ。
瘴気も濃そうだし、普通の人が近づくのは難しい大変だろう。
「あまり、時間は無いかもね」
「ばう」
それから、しばらく走り回っているとき、ミナトは人の気配に気づいた。
「タロ!」
「わふ!」
ミナトとほぼ同時にタロも気づいた。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ、ど、どしたです? はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
「はっはっはっ、にゃ」
コリンとコトラの息が荒い。
「コリン、コトラ、水飲んで」
ミナトは右手と左手の指先から水の玉を出して、コリンとコトラに飲ませる。
「ありがとです。ごくごくごくごく」
「ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ」
水を飲むコリンとコトラに、ミナトは言う。
「なんかね。あっちに倒れてる人いる」
「……ふう……旅人です?」
水を飲んで一息ついたコリンが尋ねる。
「わかんない。とりあえずいってみよう」
「そですね」「んにゃ~」
ミナト達は、タロを先頭にして倒れている人のもとへと歩いていった。
深い草むらの中に、足が見えた。
「こどもが倒れているです!」「んにゃ!」
コリンとコトラが大慌てで駆け寄る。
倒れているのは小さなリザードマンだった。




