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【2025年1月16日4巻発売】ちっちゃい使徒とでっかい犬はのんびり異世界を旅します  作者: えぞぎんぎつね
四章

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151 吹きすさぶ暴風

 ユーリスが飛び出した後、村人達は大急ぎで窓を閉めていく。


「私たちも出ます!」


 アニエス達も窓から外へと飛び出していく。


 当然、ミナト達もそれに続く。

 ミナト達が全員出た直後、屋敷の窓が全て閉められた。


 窓から出たユーリスが屋敷の屋根の上に跳びのったので、ミナト達もついて行く。

 ミナトとタロはぴょんと、アニエス達は近くに生えている木を利用して屋根の上へとあがった。


「ついてくるでないのじゃ! 聖女様達が死の風で亡くなられたらことじゃ!」


 そう言いながら、ユーリスは西の方へと両手を向けて、風のブレスを使い始めた。

 属性こそ違うが、人型のグラキアスが使っていた手から放つブレスである。


「ぬうううううう! 早く室内に戻るのじゃ! 抑えきれぬのじゃ!」


 聖竜であるユーリスの風のブレスは非常に強力だ。

 だが、ユーリスはあくまでも海竜。しかも幼竜だ。

 水ブレスが本領であって、風ブレスは専門外だ。村を襲う暴風を押し返すほどの威力は無い。


「おお、ユーリス様すごいね! 風が少し弱くなった」「わふわふ」

「わらわにできるのは弱めるだけなのじゃ! 今のうち室内へ……」


 ミナトとタロは、ユーリスの言葉を無視して、風の吹いてくる西の方向をじっと見る。


「むむ~、ねね。ユーリス様。家の中にいたら死なないの?」

「絶対ではないのじゃ。だが外にいる者の方が死ぬことが多いのじゃ。だから早く……」

「なるほど~」「わふ~」


 西を見つめながら、ミナトはアニエスに尋ねる。


「何かかんじる?」「わふわふ?」

「いえ、少なくとも呪いの気配は感じません」

「だよねー」「わぁぅ~」

「ミナト。やはり毒でしょうか?」


 そんなことを話している近くで、ジルベルトが叫んでいる。


「コリン、コトラ! 室内に避難しろ!」

「僕なら大丈夫です!」「んにゃ!」

「いいから、室内で……」


 ミナトは【毒無効】持ちだし、タロとルクスの毒耐性は尋常ではなく高い。

 だが、コリンとコトラはそうではない。


 だから、ジルベルトはコリンとコトラを毒から守るため、室内へと避難させようとしたのだ。


「ジルベルト、大丈夫だよ。毒の気配もないし。呪いの気配もないよ」「わふわふ」


 ミナトは落ち着いて西の方を見つめたままだ。


「……毒ではないじゃと? 何を根拠に」

「僕は毒にくわしいんだ!」「ぴぎっ」


 暴風の音に紛れて、タロのもふもふの中に隠れているフルフルも「僕も詳しい」と言っていた。


「毒でも呪いでもないとなると、なんだ? 嫌な気配がするんだろう?」


 ジルベルトにそう問われて、ミナトは首をゆるゆると振った。


「ちがうよ。嫌なじゃなくて、変な気配。でも今のところ誰かが死ぬような気配じゃないかも……」

「ですが、実際に人が死んでいるんですよね?」

「そうなのじゃ。聖女様の言うとおり、人が死んでおるのじゃ」


 必死の形相で、ユーリスは暴風を押し返そうと、風のブレスを放ち続ける。


「それにしても、ユーリスは小さいのに凄いね、風を少し抑えているよ」

「そ、そなたのほうが小さいくせに、生意気言うでないのじゃ! それに、これでは……」


 ユーリスは辛そうで悔しそうだ。

 死の風を抑えられず、民に被害が出ることを防げていない自分が不甲斐ないのだろう。


「りゅ~~~リャ!」


 そんなユーリスを見て、ミナトの頭の上に載っているルクスが口を大きく開けて風ブレスを放った。


 ――ゴオオオオオッ


 ルクスの風ブレスは、ユーリスが手から出しているそれよりも強力だった。

 ルクスは幼くとも古代竜の聖獣だ。種族として、氷竜や海竜よりそもそも強い。


 それに海竜にとって風ブレスは専門外だが、古代竜は全てのブレスが得意なのだ。

 加えてルクスはグラキアスにブレスの吐き方を教えてもらったし、竜形態であることも大きい。


 ブレスは竜形態で口から吐くのが本来の姿であり、人型で放てば少し威力は控えめになる。


「な、ルクス、お主……小さいというに……なんという威力なのじゃ」

「ユーリスもルクスみたいに、竜になって口から出したらもっと強くなるんじゃない?」

「…………できたら……しておるのじゃ」


 ユーリスは、本当に小さな声でつぶやいた。

 暴風の中と言うこともあり、通常誰にも聞こえない独り言だっただろう。


 だが、全てのステータスが規格外に高いタロには聞こえていた。


「わぅ~?」


 タロが伝えたので、ミナトもユーリスは竜形態になれない事情があるんだと察した。


「ふむ~。色々あるんだね」

「わふぅ~」


 ミナトはルクスとユーリスが風ブレスを吐いている中、風の吹いてくる方向を観察し続けた。


「この風って……ピッピ、上空の風のようすを調べてほしいな」

「ぴぃ~~~」


 任せろと力強く鳴いて、ピッピは一気に上空へと飛んでいく。


「…………ぴぃ~~」


 上空からピッピの声が小さく聞こえる。


「なるほど。上空は吹いてないんだね。『ピッピ! 風上をしらべて!』」

「ワォォォォォォン!」


 ミナトは上空に向けて大きな声で叫び、タロも遠吠えで同じことをピッピに伝えた。

 いくらミナトが大きな声を出せると言っても、暴風の中、上空に届かせるのは難しい。


 だから、ミナトは後半部分を【竜の咆哮】を使い、上空まで届かせた。


「…………ぴっぴ~」

『気をつけてね!』


 ピッピの返事がかすかに聞こえて、ミナトは【竜の咆哮】で返事をした。


「お主……まさか……」


 驚いた様子のユーリスが目を見開いて、ミナトを見た。


「ん? どうしたの?」

「まあよい、後で聞かせてもらうのじゃ!」

「あっ、変な気配が急に強くなった! これは死ぬかも! 【ピッピ! 気をつけて】」

「ワォォォォォォン!」


 ミナトとタロが叫んで、アニエスやジルベルト達はぎょっとした。

 ピッピはさらに高度を上げて、暴風の範囲外へとでた。ミナトとタロの声が聞こえたのだ。

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