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【2025年1月16日4巻発売】ちっちゃい使徒とでっかい犬はのんびり異世界を旅します  作者: えぞぎんぎつね
四章

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150 大人達の会食

 ミナト達がおいしくご飯を食べている頃、アニエス達は村人達と食べながら話し合っていた。


「実は死の風だけではなく、海を吹き荒れる暴風にも非常に困っておりまして」

「ですから、本当は聖女様に風の大精霊様をなだめていただきたいのです」


 漁業が主産業であるこの村にとって、風の大精霊による暴風の問題は深刻らしい。


「沖には暴風が吹き荒れているため、なかなか効率よく漁ができず……」


 大精霊の島を中心に、沖には常に暴風が吹き荒れているという。

 だから、当然、船で風の大精霊の島に渡ることは不可能だ。


「沿岸部で漁をしておるのですが、そこにも暴風が吹くこともあり……」


 暴風が吹きはじめたら、すぐに陸に戻らなければならない。

 そのため、安心して漁ができないという。


「最近は、沿岸部にも暴風が吹き荒れる期間が長くなり、頻度も多くなっております」


 漁獲高も下がりつつあり、村は徐々に追い詰められつつある。


「…………私はオーガスが呪神に(くみ)している可能性もあると考えております」


 村長が息を潜めるようにして言う。


「ですが、先ほど死の風には呪いの気配はないとおっしゃってましたよね」

「そうです。聖女様のおっしゃるとおり、もし与しているなら、毒を暴風にまぜるのでは?」


 マルセルがアニエスに同意して、冷静に指摘する。


 すると村人達が口々に言う。

「可能性の話です。与しておらずとも、暴れている大精霊様の動きを利用しているのは事実」

「ええ。オーガスは毒を使い、呪神に利するようなことしているのです」

「オーガスは聖女様と我ら、共通の敵なのは間違いないと思うのですが、どうでしょう?」


 村長は真剣な表情でそういった。


「可能性はあるかもしれませんね」


 アニエスは明言を避けて、続ける。


「確かめるためにも、オーガスという方に会ってみましょう」

「き、危険です! オーガスは聖女様を亡き者にしようとするかもしれません!」

「それでもです」


 船が使えない以上、風の大精霊の島に渡るにはオーガスと話をつける必要がある。

 オーガスが呪神側だろうと、そうでなかろうとだ。


「…………」


 アニエスは無言で、下座で楽しそうにご飯を食べているミナトとタロを見た。


 ミナトとタロならば、オーガスと戦闘になっても勝つだろう。

 子供達に頼るのは不本意だ。


 本当に心苦しい。だが、止めてもミナトとタロはオーガスのもとへと行ってしまう。

 精霊を救うことは、サラキアの使徒と至高神神獣の大切な役目だからだ。


 ミナトとタロは間違いなく強い。だが、まだ子供だ。

 オーガスが本当に悪い者ならば、騙したり罠にはめたりするかもしれない。


 そうならないように見守るのは、大人であるアニエス達の大事な役目だ。


 それにオーガスの協力を得られなければ、ミナト達は泳いで島に渡ろうとするかもしれない。

 それは危険すぎるし、何としても避けなければならない。


 そのためにもミナト達と同行する必要があるとアニエスは考えていた。


「明日にでも、オーガスという方のもとへ出向きましょう」 

「いけません! 危険すぎます」

「ですが、風の大精霊様をお救いする必要があるのです」


 風の大精霊が完全に呪われ、呪者となってしまえば、村が滅びるどころではない。

 この一帯が、呪われた土地になるだろう。

 そして、この地から世界へ、呪いが広がりかねない。


「ですから、この村のため、世界のためにも、風の大精霊様をお救いしなければなりません」

「…………聖女様の意思は固いようじゃな」


 これまで黙って聞いていたユーリスが口を開いた。


「わかったのじゃ。わらわもできる限り聖女様に協力するのじゃ」

「ありがとうございます!」「なりませぬぞ! 陛下」


 アニエスの感謝の言葉と、村長の慌てる声が重なった。


「村長。この村のためでもあるのじゃ」

「それはわかります」

「それに、世界を救う聖女様に協力するのが、聖獣たるわらわの務めであろう?」


 ユーリスは、優しい目で村長を、そして、村人達を見つめる。


「ユーリス様に感謝を」


 改めてアニエスがお礼をいって頭を下げ、ジルベルト達もそれに倣う。


 話がまとまり、明日、アニエス達はオーガスの元を訪れることに決まった。



 具体的に、ユーリスにどのような協力をしてもらうかの話をしようとしたところで、

「むむっ!」

 下座にいたミナトが、突然大きな声を出した。


「ミナト。どうしました?」

「変な気配がつよくなったよ」


 ミナトは立ち上がって、食堂の窓から暗い外をじっと見つめている。


 アニエスやジルベルト達、コリンが立ち上がって外を見た。

 ミナトは村に近づいたとき、村から変な気配がすると言っていた。

 嫌な気配ではなく、あくまでも変な気配だ。


 ミナトの隣に走ってきたサーニャが小声で尋ねる。


「呪いじゃないのよね?」

「ちがう。呪神の気配じゃない。初めて感じる気配かも。ピッピ!」



 ミナトが大きな声で呼びかけると、三秒後、窓からピッピが飛び込んでくる。


「うおっ」「赤い鳥だ」

「落ち着いてください。あの子も私たちの仲間ですから」


 慌てる村人をアニエスがなだめる。


「ピッピは変な気配かんじた?」

「ぴぃ~~」


 ピッピは感じないという。それに村の周囲に怪しい動きもないという。


「むむ~。ピッピ、とりあえずこれ食べて、フルフルも」


 ミナトは考えながら、お皿の上のご飯をピッピに食べさせる。

 どさくさに紛れて、フルフルにも食べさせた。


 タロはミナトに体を押しつけるようにしているので、食べさせることができるのだ。


「……ミナト、嫌な気配って、死の風の気配かしら?」

「そうかも?」


 次の瞬間、ゴォッという音とともに、窓から強い風が吹き込んできた。


「死の風じゃ! わらわがでる!」


 ユーリスが立ち上がると同時に、窓から外へと飛び出した。

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