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【2025年1月16日4巻発売】ちっちゃい使徒とでっかい犬はのんびり異世界を旅します  作者: えぞぎんぎつね
四章

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149 夕食会

 ミナト達は村長の案内で、食堂へと移動する。


「お腹すいたね。コリンは?」

「僕もお腹すいたです! もう夜ですからね!」


 食堂の窓から外を見ると、すっかり暗くなっていた。


「村に着いたときは明るかったのにね」


 そんなことを話しながら、ミナトは食堂の中を観察した。


 食堂には二十人ぐらいが座れる長テーブルがあり、いわゆるお誕生日席にユーリスが座る。

 そして、ユーリスに一番近い左側に村長が、右側にアニエスが座った。



 それからはジルベルト、ヘクトル、マルセル、サーニャ達が右側に並んで座っていく。

 左側には村長以外の村の偉い人が四人座り、アニエス達と互いに自己紹介を始めた。


 そこから少し離れた右側に、子供のミナトとコリンは並んで座る。

 ルクスはミナトの頭の上に乗っている。


「……フルフル。あとでご飯あげるからね。すこしまっててね?」

「…………」


 未だにフルフルは、タロのもふもふの中で息を潜めている。


「ピッピにもあとでご飯あげないと」


 ピッピは今も上空を飛んで、偵察を続けてくれているのだ。


「ここは寒くないけど……さみしがってないかな?」

「わふ~」「りゃむ~」」


 ミナトとタロとルクスが上空のピッピに思いをはせていると、アニエスが、

「そして、そちらにいるのがミナトとコリン、それにタロとコトラ、竜の子ルクスです」

 一応、アニエスが紹介してくれたので、ミナトとコリンは軽く自己紹介して挨拶した。


「これほど小さいのに偉いですな」

「いやはや、感心です」


 村人達はミナトとコリンを適当に褒めてくれた。


 それからも大人達は社交辞令的な会話を続けている。


 ミナト達は、大人の会話には興味はなかったが、目の前のご飯には興味津々だった。

 ミナトとコリンも、タロとコトラも、お腹がすいていたのだ。


「おいしそうなお刺身だね」


 テーブルの上には、白身魚の刺身とスープ、パンなどが並んでいる。

 テーブルの上にあるのは、ミナト、コリン、ルクスのための食事だ。


 もちろん、タロとコトラのために大きなお皿と小さなお皿を床に置いてくれていた。

 そのお皿の中にも、白身の生魚がたくさん入っている。


 特にタロの皿には、十キロぐらいの魚が載っていた。

 普段、タロがあまり食べないことを知らない村人が、沢山用意してくれたようだ。


「早く食べたいねー」

「ぅぅ~」


 ミナトはチラチラとアニエス達を見る。

 まだ、お酒の説明をしたり、食材の説明をしたりしており、誰も食べ始めていない。


「生の魚です? ……おなかこわさないです?」


 コリンの後半の言葉は、村の人に聞こえないようにものすごく小さな声だった。

 北の地域では生魚を食べないので、驚いたのだろう。


「んにゃ~」


 コトラは生魚はうまいという。

 コトラは姉3号と一緒に普段から川で魚を捕って食べているのだ。


「大丈夫だよ! タロも好きだよね?」

「ぅ~」


 タロはずっと心配そうに、低い声で唸っている。

 タロは刺身が嫌いなわけではない。むしろ好物だ。


 だが、前世のミナトが刺身を食べてお腹を壊したことがあったから心配で仕方がないのだ。


「大丈夫大丈夫。あれはいたんでたからお腹壊したんだよ? これはいたんでないし」


 ミナトが四歳ぐらいの頃。

 真夏に母親が半額で買った惣菜や刺身を冷蔵庫に放り込んで、数日、家を空けたことがあった。


 不運なことに、そのとき電気は料金未払いのため止まっており、冷蔵庫は動いていなかった。

 当然の結果として、次の日には全ての食材は腐敗していた。


 だが、幼いミナトはお腹がすいて、タロと一緒に全部食べた。

 臭くておいしくなかったが、空腹に耐えきれなかったのだ。


 タロは平気だったが、ミナトは下痢と嘔吐で苦しみ死にかけた。


「うぅぅ」


 タロは前足で、ミナトをぺしぺし優しく叩く。まるで連続でお手をしているような格好だ。

 前世でもミナトが生魚を食べようとすると、タロは同じように止めていた。


 その様子を見て、コリンも「生魚食べて大丈夫なのかな?」と思い始めた。


「タロは心配性なんだから。くんくん。ほら大丈夫。嗅いでみて」

「ふんふんふん」

「ね? 大丈夫でしょ?」

「わふ」


 ミナトは前世でいつもしていたように、匂いを嗅いで、タロにも嗅がせて大丈夫だと確認する。


「お刺身はおいしいからね?」


 通常、そんなことがあれば、嫌いになってもおかしくないが、ミナトは刺身が大好きだった。

 スーパーで買う半額のお寿司は、本当にたまに食べられる贅沢なミナトの好物だったのだ。


「ほんとに、生魚って、おいしいです?」

「うん。僕は生の方が好きなぐらい。お酢をまぜたご飯に乗せておすしにしてもおいしいよ」


 そんなことを話している間に、ユーリスやアニエスたちの方で挨拶をして食事が始まった。


「いただきまーす」


 待っていましたとばかりにミナトは白身魚の刺身を口に入れる。


「うーむ。うまい。こういうのははじめて食べた」

「レモン汁とお酢とオリーブオイルで味付けしているですね。さっぱりしていておいしいです」


 ミナトは魚の種類などわからなかったが、それは前世の鯛に似た魚だった。

 いわゆる、鯛のカルパッチョに近い料理だ。


「斬新な調理法だ……天才だ」


 ミナトはカルパッチョを食べたことがなかったので、感動していた。


「はい、ルクスも食べて」

「りゃ~」


 いつもは真っ先にルクスに食べさせるが、念のために自分で食べて大丈夫か確認したのだ。


「おいしい?」

「りゃむ!」


 ルクスも気に入ったようだった。


「ぁぅぁぅ」「んにゃんにゃ」


 タロとコトラもバクバク刺身を食べている。

 もちろん、タロとコトラの分には味付けがされていない。


「パンにも合う!」

「おいしいですねー」

「あ、生魚には、コボルトのみんなにもらった醤油をかけてもおいしいんだよ」

「へー、いいこときいたです。今度、村のみんなにも食べさせてあげたいです」

「ねー。フルフルとピッピの分を鞄に入れとこ。行儀悪いかもだけど……」


 行儀が悪くとも、フルフルとピッピのためだから仕方が無い。

 そう考えて、ミナトはご飯をサラキアの鞄にこっそり入れる。


 ミナトには【隠れる者】と【細工者】のスキルがあるので、隠すのも凄くうまかった。

 誰にも、それこそ隣にいるコリンすら気づかないほど鮮やかだった。

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