第9話 異次元の世界へ
新海清彦はここに居るはずのなかった人物。東条アリスと今、魔性ノ本と呼ばれるあの拾った手帳を使って異世界へ行こうとしている。
「んじゃ、早速行きますか!」
「…よし! 逝くぞ!」
字からしてフラグビンビンなんですがそれは。
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(なんでいつも、こうなんだ。俺はこの大地を愛してるわけでもないし、そこまで面白くないからネタの使い回しはやめて欲しい)
毎回、口の中をジャリジャリさせながら異世界に行かなきゃいけないと思うと、いろんな意味で行きたくなくなる。
前回の異世界入りでは国田真希とは別々になってしまったが今回は違う。隣にしっかりとアリスがいる。眠ってるけど起きるまでに色々と試しておきたいことがある。
(『魔性力』をそこまで意識してなかったけど、もう一回確認してみよう。俺は心の中から湧き上がる力をソウゾウし像にしてみる。形をわざわざ像って書くとかっこよくない?)
「ふん! っと、やっぱり銃とか出てくるんだね。これ無限に出せたりするのかな。だとしたら強すぎるんだけど…………そりゃあ!」
これが意外とポンポン出てくるもので、すぐそこらに銃火器でいっぱいになった。
(これ、銃の出し方とか変えれないのかな? イメージを変えればそのままできそうだから……)
「こうやって異次元から出す感じの方がかっこいいかな〜……っふん!」
出し方から演出まで、結構自由に変えることが出来る。この本の持つ能力が本人の想像力や自由な発想とかに比例でもするのかな。全然体力を使う感じもないし、これは便利。
しばらく能力で遊んでみると片付けられない程にかなり出してしまった。
(……片付けが面倒臭いな。指パッチンで一気に……片付いてしまうんだなこれが。いやー、アリスが言っていたこの本の持つ便利さってのがわかる気がする)
おや、アリスが起きたようだ。
「お、アリス起きたのかい?」
「────。」
「よし、それじゃあいろいろ探索するか」
「ウオアアアアア!!!!」
「え!? っちょ、アリス!? いきなり何するのさ!」
「フーッ! フーッ! フーッ!」
アリスは瞬く間に新海を地面に突き倒し胸ぐらをつかみ、お腹をすかせたライオンが絶好の獲物を見つけた時のような形相で新海を睨んでいる。すぐにでも彼の顔を食いちぎってやるとでも言いたそうな顔だ。何かがおかしい。これがアリスか?学校で知って数日くらいしか立っておらず、そこまでアリスのことよく知らないが、普通に考えて女子のやることではないとこの新海清彦でもそれくらいはわかる。
「アアアアアアア!!!!」
怒号と共にアリスは右腕を大きく天にかざし俺の顔をめがけて素早く振り下ろした!それを素早く首を動かして避け、彼はすぐ様アリスの首を絞めにかかった。
「アリス! どうした! 俺だ!」
どうも彼の声は届かないらしく口を大きく開けて俺の手首を噛みちぎった。瞬間、激痛が全身に走る。一度も味わったことのない痛みに彼は身を悶えることしか出来なかった。
(駄目だ、戦おうなんて考える暇もない)
あたふたしてる間にもアリスはなにやら力を貯めている。新海もとりあえず銃を出してどうにか戦闘態勢に入る。彼はなんとか腕の痛みと銃の反動に耐えながらアリスに鉛玉をぶち込んでいく。
(サバゲーで培ってきた技術をくらえ! (まだお座敷だけど))
「─────……! やったか!」
突然、雷が襲いかかってきた!しかも彼の放った銃弾を伝いながら雷が彼の体を貫いていく。
「────────ッ!!!!」
もう、何も考えることが出来ない。体力も残っておらず、新海清彦は気を失った。
それでも尚、彼女は攻撃の手をやめる事はなく、永遠と彼に攻撃をしていた…………。
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(は?! お、俺は何をしていたんだ? そうだ、確かアリスと一緒にこの本で異世界に行ったんだ、そしたらアリスに襲われて……あ、アリスは、どこにいるんだ? ってすぐ横にいるじゃないか。なんだ、一安心。
じゃねーよ! また血だらけじゃん! てか俺の部屋がぁぁぁあああ!!! 処理めんどくせぇぇええ!! 血とかどうやって落とすんだよ! ああいや、そんなことよりも! アリスは大丈夫なのか?)
「おい! アリス! 大丈夫か?!」
「うぅ……怪我したては痛ぇよ…」
「おぉ、すまん」
しかし、彼女はもう再生を始めている。みるみるうちに体が復元され、血の汚れがなくなり、体は綺麗な状態に戻っていく。そして直ぐにアリスは立ち上がれる状態になった。恐ろしい、彼女の再生力は。
「んで、どうだった? 私の様子」
「どうだったって……、たしか化物みたいだった。まるでライオンとかそういった肉食動物のように獰猛だった。俺の声は全く届いてなくて、そりゃもう『すべてを破壊してやる!』って勢いだった」
「そう…………実は私、本の中に居た時の記憶がないの。気づけば急に怪我してるし。だからそれを知りたかった」
「そ、そうなの? 俺は全然覚えているけど」
「なんでだろうね、思い出そうとしても頭がズキズキして思い出せない……というより記憶そのものがごっそり消されてるって言った方が正しいんだろか」
まだわからないことばかりだが、とりあえずアリスにこの本を近づけさせてはいけないな。いくらアリスの再生力が半端ないからって流石に怪我の量が致死量に達したら、死ぬ。
「どうする? もう一回いってみる?」
「いや、何も考えずにもう一回行ったところでまたこうなるのは火を見るよりも明らかだから。一旦今日はこのへんにしよ? あ、そうだ。あんたの連絡先を教えて? 何かあったら連絡したいから」
「わかった。自分も色々本の中に入ったりとりあえず何かはしてみるから」
「おっけー。ほいじゃ、またの〜」
新海清彦とアリスは解散した。
しかし、誰が何のためにこの本を作ったのか……。まだ手に入れて少ししか経ってないけど、いまいちどういう能力があるのかってすべてを把握しきれてない。闇雲に本の中に入るのも危険だけど、この本を知る一番の近道なんだろうな。仕方ない、本の中に入っていろいろ調べてみよう。