オネェな、プリースト
本エピソードは「サ終ゲームのリスタート」の第4章ep.61 休暇C までを、すでにお読みいただいている前提で書かれております。
未読の方にはネタバレが含まれますので、ご注意の上お進みください。
銀等級に昇格した次の日の朝、アタシは見回りの一環でプリースト部屋に入った瞬間、それに気づいた。
「お、内装変わってる。イイ感じ!」
それまではクリーム色の壁紙と暖色系3種のソファーが並ぶ部屋だったのに、今は木目を生かした壁や床に、所々籐編みの家具や植物なんかが配置された、アジアンリゾートっぽい部屋に変わってるわ!
たった1日でこんなに変わるとは……さすがゲーム世界。
「あら、気に入ってくれたぁ~♡ あ、り、が、と♡」
早速新しく設置された、籐編みの長椅子に寝そべってたら、プリーストグループのマスターこと、熾天使セラフィムさんに話しかけられた。
「おはよ! ってことはこの内装に変えたの、熾天使セラフィムさんなのね?」
「そーよ♡ グループ部屋の内装は、マスターにしか変えられないからぁ♡ もし置いてほしいものとかあったら、遠慮せず言ってねぇ♡」
へー、そうだったんだ。いい趣味してるなぁ。
ってことは花図鑑部屋の内装は、向日葵先輩が決めたってことか。
「ちなみにどんなものが置けるの?」
「個人部屋で使えるものは、全部選べるわぁ~♡ それと別に、グループ部屋でしか選べないものもあるわよ♡ うぅん、例えば……これっ♡」
そう言って熾天使セラフィムさんは半透明の画面を操作し、天井に届きそうなほど巨大な、王冠を頭に乗せたウパぺんのぬいぐるみを出現させた。
なるほど、キングウパぺんのぬいぐるみかぁ……。そのサイズだと確かに、個人部屋には入りきれないわね。
「最近みんな、疲れた顔してるじゃない?♡ だから少しでも、癒されるようにと思ったのぉ♡」
そうよね……みんな疲れてきてる頃よね……。
実はこの件、Rockさんと花図鑑メンバーの間で3日くらい前からこっそり検討してるんだけど、日程をかなり詰めないと休暇を取る余裕ができないから、どうするかまだ話がまとまってないのよね。
とはいえこのまま、休みなしでやると倒れる人が出そうだから、結構深刻な問題だわ。
「オネェもそろそろ、気分転換にマルシェとかしたいんだけど、なかなかねぇ」
「……ん? 参加する方じゃなくて、開催したい方なの?」
「そうそう♡ リアル世界ではよくやってたのよぉ♡」
マルシェかぁ……。この世界は通貨すらないから、お買い物ってないもんね。
「というわけで、雰囲気だけでもどーぞ♡
ペンタスちゃんも最近、何か考え事してるでしょ? 根詰めすぎないようにねっ♡」
そう言って熾天使セラフィムさんは、ぬいぐるみを部屋から消した後、アタシに飲み物の形をした見た目専用アバター武器を見せる。
「よく見てるわね。あんがとねー!」
同じアバター専用武器をアタシも持って、2人で乾杯した後、口を付けた。
うん。やっぱり何の味もしないから、おままごとって感じね。とはいえ、そのおままごとも、今は貴重な癒しなのよねぇ……。
アタシは周囲を観察しつつ、そのおままごとを続けながら、考えを巡らせた。
だんだんプリースト部屋に人が増えてきたから、熾天使セラフィムさんは他の人にも同じように言葉をかけ、ハンモックでくつろぐよう促したり、時には相談に乗ったりする。
プリーストって全体的に性別2アバターの割合が高い職だけど、熾天使セラフィムさんは性別の垣根を越えて話しやすい人だから、ホント適役ね。
他の人のこともよく、気にかけてくれてるし。
「マスター……嬉しいです……! ホントここのところ、疲れが溜まってて……」
熾天使セラフィムさんの心遣いに、うっすら涙を浮かべる人もいた。
「やっぱりみんなそうよねぇ。イベントエリアほどじゃないだろうけど、ゆっくりしてねっ♡」
「イベントエリア……そんなのもありましたね……」
「懐かしいなーっ! 海のイベントエリア、好きだったわ。みんなでビーチボールで遊んでさー!」
熾天使セラフィムさんが他のプリーストさんたちと話すのを聞いてて、アタシはふと、凄いヒントを貰ったかもしれないことに気づいた。
「はいはーい!! 私は学園シリーズが一番面白かった! 某アニメのパクリみたいなやつꉂ(•ㅅ•*)ケラケラ」
「我は謎解きがいい感じだったな」
「料理対決も面白かったネ」
そうよ、そもそも過ごす場所の大半が戦闘エリアだから、みんな気が休まらないんだわ。もっとこう、広くて開放感ある、安全なエリアが使えたら……!
そんでついでにそこで、何かイベント的なことができたら、いいんじゃない!?
問題はその場所よね。グループ部屋で代用できるかしら……?
アタシは思いついたことを即、花図鑑のグループチャットに書き込んだ。
「あったわね~♡ またイベントエリアで遊べたらって想像するだけで、何だか楽しくなるわねっ♡
ちなみにジャスティアちゃんは、イベントエリア何が印象に残ってる?♡」
「……目つき悪い敵キャラがすげー上手くピアノ弾いてたのに……くろんがギャップ萌えとか言ってたのは、覚えてる……」
「ンもう♡ それ嫉妬?♡」
「うるせえ! …………一応あの後、一通り楽器弾けるように練習したけどよ……」
と、その時。花図鑑のグループチャットに、向日葵先輩から意外な返信が来たので、アタシは驚いて二度見した。
向日葵先輩が、ゴールデンウパぺんと相互フレンド!?
ってことは、もしかして……もしかして……実現できたり、する!?
「熾天使セラフィムさん! いいヒントをありがとう!」
アタシはそれだけ言って、プリースト部屋から花図鑑部屋に移動した。
「何のことか分からないけどぉ~、解決したなら良かったわぁ~♡」




