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76.幸せになります!

(最終話)

 十二月二十七日、午後二時。

 結婚の祝福式は、ステンドグラスが美しい礼拝堂で行われた。

 数えてみたら、出会った日から二百十日目だった。



 レンタルしたウェディングドレスには妊婦用もけっこう種類があって、選び甲斐があった。

 大きく分けると、お腹の膨らみが目立たないようにしたデザインと、むしろ目立たせるデザインに分けらるなか、戸田嶋は迷わず、膨らみを美しく魅せる方を選んだ。

 主役は三人だ。


 正装の仁は、クラクラするほどかっこよかった。初めて会った日も眩しかったけど、それ以上だ。世のなかに白のタキシードがこんなに似合う男性は、ぜったいにいない。断言できる。


 靴は、ふたりお揃いで白のスニーカーにした。

 タキシードにスニーカーっていう組み合わせがまた、仁だとめちゃくちゃかっこいい。

 


 出席者は両家の親と真鈴ちゃん、仁の親友である森野貴大君。会社関係は玲夢と青木だけだ。

 飛島先輩はもう、アイテックで中杉専務のチームの一員として修業を兼ねて働いているし、小巻主査……、今は御子柴ワイズのCFO(最高財務責任者)となった小巻さんは、御子柴社長の右腕として忙しい日々を送っている。



 式は、どこが省略されているのかわからないほど、きちんとしたものだった。指輪の交換もしたし、神父さんからは祝福のことばをたくさんいただいた。

 聖歌隊の方が讃美歌を唱ってくれて、教会の子供たちは新婦の介添えをしてくれた。


 聖書の朗読もあった。

 ふたりとも聖書を読んだことはない。でも朗読されたことばの端々は、確かに心に響いた。

 それは、

 『ふたりは一体になる』

 『ふたりは別々でない』

 『神が結び合わせてくださったものを、人は離してはならない』

 という文言だ。


 そのあと、あの、よく聞く誓いのことば。病めるときも健やかなるときもっていうあれ。てっきり『(なんじ)は……』で始まるのかと思ったら、『あなたは……』で始まった。現代語はすんなりと耳に入ってきて、心から『はい、誓います』と言えた。


     ☆


 祝福式を無事に終えて、参列者と共に芝生がきれいな庭に集合した。

 晴天の下で記念撮影をするためだ。


 まぶしさに目を(すが)めて天空を仰ぎ見ると、快晴の空は群青色に見えるほど青が濃かった。その奥から降り注ぐ冬の日差しが年の瀬の冷たい空気を突き抜けて、ドレスをじんわりと温めている。



 記念撮影の役を買って出たのは青木だ。


 青木は一週間ほど前、

 「空撮でその場の雰囲気を丸ごとパッケージにして記録に残します」

 と、ドローンによる動画撮影を、なかば強引に提案してきた。

 

 「いいけどほんと、ぶつけないでね。別にそんな、低空で撮らなくていいんだから」


 「大丈夫ですって戸田嶋先輩、特訓しましたから」


 操縦を特訓したのは本当のようで、今ではサバゲー仲間にも実力を認められているらしい。

 ドローン本体は、宮野麻衣との戦いのあと、自分でもおもしろくなって購入したそうだ。下部には、機関銃ではなく高解像度のカメラがセットされている。


 この企画の背後には玲夢、新社長がいる。

 どうやら、イベントの空撮を新しい事業として検討しているらしい。『いい動画が撮れるってわかったら経費でプロ用の機材を購入してもいい』、と玲夢が呟いたひと言で、青木は前のめりになっているそうだ。

 

 玲夢とふたり、「新しいメカをチラつかせると男の子ってホント」、と歓談していたら予想もしていなかった出来ごとが起こった。

 仁のお母さんに呼び止められたのだ。


 黒留袖の正装に身を包んだお母さんは、真っすぐに戸田嶋の目を見てこう言った。

 「どうか仁のことを、息子のことを、よろしくお願いいたします」

 そして、深々と頭を下げられた。


 涙腺が崩壊した。

 頭のなかに今までのことが交錯して、考えがまとまらない。 

 もはや返事をすることも涙を止めることもできず、かといって、この場面で仁の胸に飛び込むわけにもいかず、どうすることもできなくなった。

 玲夢に肩を抱かれてようやく言えたのは『わかりました』でも『こちらこそ』でもなく、

 「任せてください!」

 声も高らかにそう言い放った瞬間、再び涙がこぼれ、今度はお母さんに抱きしめられた。




 控室に戻って化粧を直し、庭にいるみんなに加わった。


 青木は、みんなに

 「妊婦さんの身体に障るといけないんで、一発で決めますよぉ。そうそう皆さん笑顔で。でも普通に、自然な表情でお願いします。ラストシーンはブーケトスで決めますからねぇ」

 と、簡単に流れを説明をしたあとドローンを飛ばした。


 美しい教会、西洋芝のきれいな緑、日光に生える白樺、天使のような子供たち、そしてみんなの表情へとドローンが旋回していく。


 「ヘタ子おめでとう!」

 「戸田嶋先輩おめでとうございます」

 「やったな仁!」

 「お兄ちゃんおめでとう」


 シナリオでも演技でもない『おめでとう』の花束!

 教会の方々は笑顔を見せ、子供たちはかわいい声を上げて庭を駆け回っている。


 一時は納得してもらうのが大変だった両親も、今は、仁のご両親と歓談している。


 未成年男子をできちゃった婚に巻き込んだ不肖の娘ですが、

 「幸せになります!」

 そう言って戸田嶋早妃は、手にしたブーケを青空に向かって放り上げた。


     《了》

最後まで読んでいただき、ありがとうございました _(._.)_


タイトルの210日ですが、この210という数字。

エンジェルナンバーというそうです。


最新占いニュース・情報サイト hapyハピ <https://myspiritual.jp/post-21257/> のオードリーメーカー先生によりますと、

「エンジェルナンバー「210」は、あなたの人生が大きな転換点を迎えていることを示すメッセージです。これまで様々な努力を重ね、時には困難に直面しながらも前進してきたあなた。その積み重ねが、今まさに実を結ぼうとしている」のだそうです。



ふたりの人生が、この先も幸せでありますように!

そして、皆さんの上にも、素敵な出会いがありますように!

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