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43.玲夢は海斗にすべてを話した

 玲夢はことの次第と、今回の頼みごとについて、順を追って説明した。


 でも海斗に(とが)が及ぶようなことになったら自分は生きていけない。なので、そこは充分に注意を与えた。


 「だから、いい? 喧嘩はしない。格好も武器も見せかけだけ。道走るときも道路交通法を守って。いい?」


 〈はは、三段シートにロケットカウルで信号待ちする族仕様の単車って、何か、逆に笑えるんですけど〉


 「笑わないで! まじめに、お願い」


 〈わかりました。他の連中にも厳命します〉


 「でもほんとのとこどうなの、集まりそう?」


 〈本気で召集かけりゃマックス三百人くらいは〉

 さすが、ついこの間まで現役だ。


 「でも三時間後よ、しかも羽田方面」


 〈あ、そうか。でもま、後輩の(つて)も借りりゃあその条件でも百人くらいはいけますよ〉

 その半分だったとしても五十人。

 高校生をビビらせるには充分な数だ。


 〈じゃあ俺、急いだほうがいいと思うんで〉


 「うん」


 〈手配済んだら迎えにいきまから。玲夢さんも準備して待っててください〉


 「わかった、じゃあ頼んだ」


 〈押忍!〉





 電話を終えて四十分後に海斗はやってきた。

 グレーの迷彩服に身を包み、夜なのにサングラスを掛け、紫のラメ入り塗料で塗られた完全な族仕様の単車に跨がって。


 海斗の佇まいには、族をやってたころとは違う、何ともいえない迫力が備わっていた。強面(こわもて)の顔も、夜見ると、なんだか旧帝国陸軍の亡霊みたいだ。


 でも驚いたのは海斗も同じらしかった。


 「うへぇ、それって」


 「何よ」


 「それって、八代目黒百合の特攻服じゃないっすか。それにそのメイク」


 現役時代の総長メイクは色が足りなかったので仕事用の油性カマジックを使った。後で落とすのが大変だ。


 「でっかい声出さないでよ」


 「感動っす、俺もう、ビンビンっす」

 何を言ってるんだこいつは。


 「バカ言ってるとまた仮採用付けるよ」


 「すんません」


 「で、どうなの、仲間は集まりそう?」


 「はい、百は楽勝っす。あとは伝言ゲームでどんだけ集まるか。あ、現地集合にしましたから、道路交通法守って」


 「わかった」

 エラいよ。ていうかすごいな。


 「にしても海斗、これ、取ってあったんだ」

 族仕様のバイクのことだ


 「後輩に譲ろうかとも思ったんすけど、やっぱ愛着があって、寮のおばちゃんに頼んで置いてもらってんです。たまにイベントがあるんで、いつでも走れるように手入れは欠かしてません」


 「そうなんだ」

 こういうので集まるイベントがあるのか。


 「でもさすがに直管の竹槍マフラーはマッポに止められるんで、音はおとなしいっすけど、それは我慢してください」


 「いいよ、そんなの」


 「わかりました。じゃ、これ」


 海斗がヘルメットを放ってきた。


 「これドカヘルじゃん」


 ドカヘル。建築や土木作業で被る、道路交通法には不適合のヘルメットのことだ。


 「見た目はそうっすけど、ちゃんとPSCマーク付きで、そいつに常時接続のボイスチャットが使えるインカムを付けた戦仕様(いくさしよう)です」


 法律に適合しているうえに、仲間同士で会話ができるインカム付き? こいつ、ほんとに引退してるんだろうか。

 別の意味で不安になってきたけど、それは置いといて、玲夢は受け取ったヘルメットを被り、背の部分が高く反り上がった独特のタンデムシートに跨がった。


 ちょっと先の、カーブミラーの下で酔っぱらいがこっちを見ていた。腰は引けているけど通報でもされたら厄介だ。

 早速、インカムを通じて指示を出した。


 「ねえ、早く出してよ」


 「押忍!」

 やめなってその返事。


 バイクは、荒々しい見た目に似ず、ゆっくり静かに動き出した。

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