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反乱勃発

……………………


 ──反乱勃発



 国家憲兵隊を指揮下に置く内務省では帝国軍内部の不穏分子の摘発を実行しようとしていた。帝都における帝国軍の施設は事前に封鎖され、不穏分子が行動を起こせばすぐに把握できるように準備されていた。


 裁判所から捜査令状及び逮捕令状が発行され、国家憲兵隊の公安部門が逮捕に向けて動いたとき、それは起きた。


「大尉殿。トラックです。ゲートを出ようとしています」


「止めろ。今は軍の移動は禁止されている」


「了解」


 帝都にある帝国陸軍の駐屯地のひとつで軍用トラックが封鎖を行っている国家憲兵隊の部隊に向けて進んできた。


「おい! 止まれ! 今は軍の移動は禁止され──」


 国家憲兵隊の兵士がトラックを止めようとしたとき銃声が響いた。


 トラックに乗っていた帝国陸軍の兵士が発砲したのだ。それによって国家憲兵隊の兵士が頭を撃ち抜かれて地面に崩れ落ちる。


「なっ……!」


 国家憲兵隊の指揮官が狼狽える中、トラックに乗っていた兵士たちが封鎖を行っている国家憲兵隊の兵士たちに向けて一斉に発砲。国家憲兵隊の兵士たちが撃ち殺されて行く。トラックは発砲する兵士たちを乗せまま封鎖を突破。


『グスタフ・ゼロ・ワンより全部隊。ブーランジェ作戦発動。繰り返すブーランジェ作戦発動。指定された目標を迅速に制圧せよ』


 帝国陸軍と帝国空軍の一部部隊がこの通信を受けて一斉に行動を開始。


 ゲートの国家憲兵隊部隊を排除して帝都に展開を始めた。


「こちら国家憲兵隊帝都本部! 軍の攻撃を受けている! 繰り返す軍の攻撃を受けている! 反乱だ!」


 最初に反乱を起こした反乱軍の攻撃を受けたのは帝都において帝国軍以外で戦力を有する国家憲兵隊であった。国家憲兵隊の拠点である国家憲兵隊帝都本部が襲撃を受け、重装備を有する反乱軍を前に追い詰められる。


 そして、国家憲兵隊が動けないときに首相官邸も攻撃を受けていた。


「来るぞ! 構え!」


 首相官邸には事前に国家憲兵隊が1個大隊規模の機動隊を派遣しており、その国家憲兵隊部隊が首相官邸を襲撃してきた反乱軍を迎撃した。


 首相官邸で銃声が響き渡り、迫撃砲などの砲声も響く。


「宰相閣下。空軍の飛行艇が間もなく到着します。それでご家族とともにシュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地へ向かってください」


「シュヴァルツラント近衛擲弾兵師団は反乱に加担していないのだな?」


「そのように報告を受けています」


「分かった」


 メクレンブルク宰相が首相官邸に家族とともにおり、国家憲兵隊に警護されていた。


「少佐殿! 反乱軍は重装備を持ち出して攻撃を行っています! このままでは突破されてしまいます!」


「空軍の飛行艇が宰相閣下を運ぶまで守り切れ! どうあっても賊軍を通すな! 使えるものを全て使ってバリケードを作り、敵の侵攻を遅らせろ!」


「了解!」


 国家憲兵隊の機動隊が魔道式自動小銃と魔道式短機関銃しか有さないのに反乱軍は重機関銃や迫撃砲、速射砲で武装している。正面から戦い続ければ突破される。


「賊軍を通すな! 戦え!」


 指揮官たちが国家憲兵隊の兵士たちを鼓舞し、不利な戦いを彼らは戦う。


「空軍の飛行艇が到着しました!」


「了解! 宰相閣下を護衛をして飛行艇に載せるんだ! 急げ、急げ!」


 ついに空軍の小型飛行艇が首相官邸の屋上に到着し、国家憲兵隊の兵士たちがメクレンブルク宰相とその家族を護衛して飛行艇まで送る。


「宮殿はまだ落ちていないのだな!?」


「ノルトラント近衛擲弾兵師団が応戦中! それ以上のことは分かりません!」


「なんてことだ」


 メクレンブルク宰相が離陸前に通信機を持っている兵士に尋ねると通信兵は飛行艇のエンジン音に負けない声で返す。


「離陸します! ベルトを締めてください!」


 飛行艇は首相官邸を離陸し、シュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地に向かった。


「ラジオ局の放送が止まった。クソ、制圧されたか」


 帝都のラジオ局からの放送が突如して停止し、反乱軍に制圧されたことが分かる。


 メクレンブルク宰相たちを乗せた飛行艇はシュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地に着陸。シュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地は大口径高射砲が既に配置に就いており、さらにゲートには陣地が構築されている。


「宰相閣下! ご無事ですか?」


「無事だ。状況を確認したい、コヴァーリ中将」


 シュヴァルツラント近衛擲弾兵師団師団長のヴァレリア・コヴァーリ帝国陸軍中将がメクレンブルク宰相を出迎えた。彼女は帝国史上初の女性の近衛部隊師団長だ。


「こちらへ。バンカーに司令部を設置しています」


 コヴァーリ中将に案内されてメクレンブルク宰相が駐屯地のバンカーに設置された司令部に入った。十分な通信機器があり、鉄筋コンクリートの防護が行われているバンカーにはシュヴァルツラント近衛擲弾兵師団の参謀たちがいる。


「宰相閣下。ご無事で」


「ああ。状況を把握したい。まず陛下は御無事か?」


 メクレンブルク宰相が参謀たちに尋ねる。


「皇帝陛下と枢密院議長閣下は宮殿でノルトラント近衛擲弾兵師団に守られていますが、ノルトラント近衛擲弾兵師団からは反乱軍の大規模な攻撃を受けているとの報告が入っています」


「脱出は?」


「困難です。反乱軍が砲撃を加えています」


「宮殿を砲撃していると言うのか? 何たる恥知らずだ」


 シュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地のバンカーには帝都各地で起きている反乱軍との戦闘が報告されてきている。


「陛下の救援を急いでくれ、コヴァーリ中将。それから他の皇族の方々は?」


「ジーガヴァルト女公ルイーゼ殿下はノルトラント近衛擲弾兵師団が保護していますが、ラインハイトゼーン公オイゲン殿下を護衛しているはずの部隊と連絡が途絶えています。現状は不明」


「反乱軍は間違いなく、陛下を殺害し、他の皇族を皇帝として政府を樹立するぞ。それは何としても阻止しなければならない」


 コヴァーリ中将の報告にメクレンブルク宰相がそう命じる。


「陸海軍司令官たちはどうなっているか?」


「シコルスキ元帥閣下は無事です。こちらに向かっておられます。海軍省と空軍省は攻撃を受けておらず、リッカルディ元帥閣下とボートカンプ元帥閣下は隷下の部隊に正当な政府への忠誠を示すように命じておられます」


「そうか。少なくとも軍の他の部隊が指揮系統を失うことはなさそうだな」


 帝国三軍の司令官は全員が無事だ。


「師団長閣下! 宮殿を防衛しているノルトラント近衛擲弾兵師団から報告です! 敵は屍食鬼を使用しているとのこと!」


「何だと!?」


 通信兵の報告にコヴァーリ中将が目を見開いた。


「どういうことだ? 屍食鬼だと? 魔獣猟兵のコマンドか?」


「分かりません。ですが、どうやら我々の中に裏切者がいたようです」


 メクレンブルク宰相も狼狽え、コヴァーリ中将は唸った。


「宮殿は持ちこたえられるのか? 救援可能な部隊は?」


「現在信頼のおける部隊は近衛部隊だけです。そしてノルトラント近衛擲弾兵師団と我々シュヴァルツラント近衛擲弾兵師団はどちらも出動しており、戦力は不足しています。国家憲兵隊は戦力として不十分」


「不味いぞ。このまま陛下を殺害されればこちらの政府の正統性が失われ、反乱軍に大義を与えることになる。帝国が分裂する。この戦時においてそれは致命的だ」


 コヴァーリ中将の説明にメクレンブルク宰相が険しい表情を浮かべる。


「師団長閣下。帝国国防情報総局のハルエル大将から連絡です」


 通信兵がコヴァーリ中将に報告。


 帝国国防情報総局局長はタミル・ハルエル帝国陸軍大将が務めている。


「大将閣下は何と?」


「葬送旅団がワルキューレ武装偵察旅団の部隊と合流し、作戦行動可能とのこと。陸軍司令部の命令で行動する準備があると」


「葬送旅団。そうか。彼らがいたか」


 通信兵の報告にコヴァーリ中将が頷く。


「コヴァーリ中将。シコルスキ元帥はまだ到着しないのか?」


「間もなくです。元帥閣下が到着し次第、葬送旅団に命令を出しましょう」


「頼むぞ」


 それから15分後。シコルスキ元帥と陸軍司令部の参謀たちを乗せた飛行艇がシュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地に到着。


「シコルスキ元帥。ここに陸軍司令部の機能を持たせてくれ。迅速に反乱軍の鎮圧を頼む。宮殿では皇帝陛下が危険にさらされているのだ」


「陸軍としてはこのような結果になってしまい、遺憾の限りです。迅速に鎮圧しましょう。こちらに忠誠を示している部隊を投入します。ハルエル大将は葬送旅団が行動可能だと報告していますので、まずはそれを」


 メクレンブルク宰相が命じるのにシコルスキ元帥が直ちにシュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地のバンカーに陸軍司令部機能を整備させる。


「葬送旅団は出動可能です。また葬送旅団にワルキューレ武装偵察旅団のシグルドリーヴァ大隊が合流済み。同旅団のレギンレイヴ大隊も帝都にて行動可能とのこと」


「まずは葬送旅団だ。宮殿に向かわせろ。ノルトラント近衛擲弾兵師団の応援に向かうんだ。今、葬送旅団はどこに?」


「ムートフリューゲル空軍基地です」


「よろしい。葬送旅団が装備している飛行艇の使用も許可する。急がせろ」


「了解」


 シコルスキ元帥が陸軍司令官として命令を下し、通信兵が通知する。


「それから国家憲兵隊の公安部門と連絡を取って反乱に加わる可能性がある部隊を報告させるんだ。帝国国防情報総局にも要請するように」


「了解。直ちに連絡を取ります」


 今の帝国陸軍が抱えている問題はどの部隊が味方で、どの部隊が敵なのか分からないということだった。戦場となっている帝都は敵味方不明の部隊が入り乱れている。


「元帥閣下。国家憲兵隊公安部と連絡が取れました。彼らが不穏分子として摘発予定だった人間の一覧が届きます」


「それから関係する部隊をリストアップしてくれ。帝国国防情報総局は?」


「今から連絡します」


 国家憲兵隊と帝国国防情報総局から帝国軍内に潜んでいるとされた不穏分子のリストが寄せられてくる。暗号化された文章がシュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地のバンカーに置かれた変換機で翻訳される。


「かなりの人数だな……。それも将官が複数いる。待て、これは!?」


「どうしたのだ、シコルスキ元帥?」


 シコルスキ元帥が届いたリストを見て驚愕するのにメクレンブルク宰相が尋ねる。


「反乱の首謀者のひとりはトロイエンフェルト軍務大臣です」



 ──ここで場面が変わる──。



 反乱軍は帝都に位置する軍務省を占領していた。


「状況はどうか?」


「はっ。国家憲兵隊帝都本部の制圧は完了。内務省も制圧できました。首相官邸は落としましたが、メクレンブルク宰相は逃走しました。宮殿は未だにノルトラント近衛擲弾兵師団が抵抗しています」


 反乱軍の将校に尋ねるのはトロイエンフェルト軍務大臣だった。


「ふむ。だが、ラインハイトゼーン公殿下は確保できたのだな?」


「確保しております。現在ヴァイゼンナハト領の城に移送しています」


「結構だ。すぐに政府の樹立を宣言する。我々こそが正統な政府であることを宣言するのだ。そして、直ちに戒厳令を布告し、帝国全土に軍政を施行する」


 トロイエンフェルト軍務大臣がそう言って軍務大臣の椅子から立った。


「司令部に向かう。オストリヒト空軍基地に行く。車を出してくれ」


「畏まりました」


 帝都におけるムートフリューゲル空軍基地以外の空軍基地のひとつであるオストリヒト空軍基地は既に空軍内の反乱分子の工作もあって反乱軍の手に落ちており、そこにある飛行艇は全て反乱軍のものとなっていた。


 そこに反乱軍は司令部を設置している。


「全ては帝国のためだ。我々が帝国を救うのだ」


 トロイエンフェルト軍務大臣はそう言って軍務省の外に準備されていた軍用四輪駆動車に乗り込んだ。


……………………

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