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 ある日の怨夢内。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 ある少女が、黒い化け物から逃げていた。


【俺から逃げられると思ってんのか?】

 化け物の嘲笑が追いかけてくる。


「きゃっ⁉」

 少女は何かに足をとられ、転んだ。

「⁉」

 足には、蔦が絡みついている。

 慌てて外そうとするが、まるで意思を持っているかのように固い。


 少女のまわりが暗くなる。

「ひっ……⁉」

 まるで、黒い巨木に脚と腕が生えたかのような化け物。

【さぁて。俺の誘いを断ったんだ。お前の魂、いただくぜ】

 杭のような指が合わさり、少女に迫る。

 少女の脳裏に、以前聞いた都市伝説が走馬灯のように過る。


 都市伝説『死神迷宮』。

 ある日突然、化け物の徘徊する迷宮に閉じ込められる。

 化け物に捕まったら、魂を、喰われる。


「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼」

 自分の運命を悟り、悲鳴をあげる。


 ズバッ。


 しかし、杭が少女に届く事はなかった。

【ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼⁉】

 化穢の悲鳴に、少女は顔を上げる。

 目の前に、黒衣を纏う翼を生やした少女が、長い黒髪を靡かせて舞い降りてきた。

 おそらく斬り飛ばしたのだろう。化け物の腕が、付近に落ちる。


 死神迷宮には、続きがある。

 迷宮内には、死神がやってくる。

 その死神は、迷宮内で迷っている者を守り、あるべき世界に導くと。


「灼」

「おう!」

 今度は、男の声が聞こえた。

「《纏霊刃》!」

 耳慣れない言葉の直後。


 バキッ。


 大きな炎の刃が、化け物を上下で両断した。


 化け物が黒い靄となって霧散したのを確認した後、黒髪の少女が振り返った。

 伏せがちの目には濃紺と深紅のオッドアイが見える。妖精を彷彿とするほどの、儚げな美しい少女だ。

「大丈夫、ですか……?」

 一切合わない視線で、かすかな声で訊かれる。

「は、はい! 助けてくださり、ありがとうございますます!」

 立ち上がり、礼を言う。

「花耶! そいつ大丈夫だった? それと花耶も怪我は?」

「平気」

 灼と言われた少年が訊いてくる。

 花耶と呼ばれた少女が視線を合わせているので、かなり仲がいいと見て取れる。

「よかったー。こっちに出口あるから、送ってくな?」

 安堵した様子で、今度は自分に声をかけてきた。

 顔は決してイケメンというわけではない、むしろ不細工寄りだが、人懐っこい印象のある笑顔は信頼しても大丈夫そうだと思った。

「あ、あの。あなた達は……?」

 少女が訊くと、二人は答えた。

「都市伝説の死神っ!」

「黄泉軍の、屍霊。死徒、です」

これで、黄泉軍の屍霊譚は完結です。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

この作品は、私の執筆スランプから脱却する為に書きました。

完結できて、ものすごく嬉しいです。

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