その17
葉月さんが座っていた窓際の席には今は今室信司という野球部の男子が座っていたが、そいつはかなり日差しが強くなってきてもカーテンを閉めようとはせず、大抵は気持ち良さそうに居眠りをしていた。そして、カーテンを閉める時は決まってがたがたと乱暴な音を立てながら閉めた。
瞬間移動が起きるのは、そんな隣の席に対し、不満を抱く瞬間が多かった。
この頃になると、僕はこの現象がどういう時に起きるか、自分なりに分析できるようになっていた。
瞬間移動の現象に関しては意識していないが、心のどこかで葉月さんのことを考えている。そんな時にこの現象は起きる。
でも、そんなことが分かったからといって、葉月さんに話せるはずもなかった。
君のことを考えている時、瞬間移動は起きるんだ。そんなことを言えるはずがない。
僕は意識的に葉月さんのことを考えたり考えないようにしたりして、瞬間移動をコントロールしようとしたけれど、結果的には何の成果も得ることができなかった。あくまでも無意識の内にやるということが大事なのだ。
3学期は、そんなことを個人的に実験している内に瞬く間に過ぎた。
葉月さんとは、瞬間移動した持ち物を返す時に少し会話を交わしたけれど、冬休みのあの日に交わしたような長い会話をすることはなかった。教室では、他の生徒の目が気になって、うまく葉月さんと話すことができなかった。




