その12
そうして月日は過ぎ、冬休みになった。
僕は寒いのが苦手なので、日がな1日こたつの中で丸くなる、猫みたいな生活を送った。本を読んだり、テレビを観たり、気が向いたら冬休みの宿題をした。そして時々、葉月さんのことを思った。葉月さんのことを考えるのは、いつの間にか僕の習慣のようになっていた。
そんな年の暮れの迫ったある日のことだった。
僕はいつものようにこたつの中でうつらうつらとしていた。視界の隅の方に、そこにあるはずがないものが映るのを見た。水色のブックカバーの本だった。
寝ぼけていたが、一瞬で目が覚めた。
恐る恐る手に取り、表紙を捲ると、読んだことのない女性作家の恋愛小説だった。家族の誰も、こんな洒落た本を読む人間はいない。
僕はぱらぱらと本を捲った。300ページ位あるちょうど半分位の所に栞が挟まれていた。栞と一緒に1本の黒い髪の毛があった。その髪の毛は長く、1本だけでもきらきらと輝いていた。
この本は、紛れもなく葉月さんのものに違いなかった。そして、この髪は葉月さんの髪の毛だ。僕にはその確信があった。でも、そんなことがあるだろうか?
僕は、しばしの間何も考えられず、葉月さんのものであるはずの髪の毛を指先で弄んだ。
葉月さんがどこに住んでいるのか正確な場所は知らなかったが、隣近所というわけではない。小学校の頃は学区が違ったし、自転車で15分以上の距離が離れているのは間違いなかった。
今までのように至近距離の席の間を移動したのとは訳が違う。そんなことが一体ありうるのだろうか?




