種目決め
今日は間もなく行われる球技大会の出場競技を決める。
お昼の後というのもあって、小夏はすっかりぐっすりしている。
「えーっと、まず女子の競技が室内がバスケとバレーで、それぞれ五人と六人。残りの九人は外でドッジになります。男子は室内がサッカーで十一人。外が野球で九人になります。じゃあまあそういうわけなので、どれやりたいか決めてください。取り合いになったらジャンケンでもして上手く調整して」
大澤さんはチョークのついた手を払いながら、すみちゃんの席に近づき、すみちゃんの肩に腕を回すように手を置いた。
「さて、純蓮ができるのはどれかな」
「意地悪言わないでよ友美奈」
「だってね〜。あ、あゆ! あんたやっぱバレーするの?」
「したいけどね〜。でも流石に人選どうしようって感じ〜。バレー純蓮にはハードすぎるし。へなちょこプレイでヘイト溜めさせるの可哀想だし〜」
そう言いながら橋野さんはすみちゃんの頬を揉んでいる。
「あなた達どうするの? 各々やりたい種目やる感じにするのかしら?」
「いんや〜。別に行事だし、そんな優勝狙ってるわけじゃないからワイワイできればいいかな〜って感じ。あゆちゃんは皆さんに合わせますよ〜。まあ、皆さんというより純蓮さんですけど〜」
「うう……責任重大。四人競技あれば即決できたのに……」
後ろでそんな会話が繰り広げられている中、私達もようやく小夏が起きたので、種目決めの話し合いをする。
「いぶっちゃんとこなっちゃんはどれかやりたいのある感じ?」
「私は特にないよ。どれも楽しそうだし」
「あたしは依吹っちと白葉っちが一緒なら何でもいいぞ!」
「あたしはあそこのグルと組む羽目にならなければ別に何でもいい」
白葉ちゃんが睨みを効かせると、相手も三人とも睨み返して舌打ちをしたような口の動きをした後、チラチラと白葉ちゃんを見ながらコソコソと三人で口を近づけていた。
見ていてあまり気分の良いものではないし、見てほしいものでもないから、白葉ちゃんの視界を塞ぐように、手のひらを白葉ちゃんの目に向けた。
「見なくていいよ白葉ちゃん。こっち見て」
白葉ちゃんは私の方に向き直ると一息ついた。
「白葉っち、まだ気が晴れないなら本当にあたしが文句言ってきてやろうか? 我慢は良くないぞ。まだ謝られてないんだよな?」
「いらないいらない。あいつらと関わりたくないし謝罪も聞きたくない」
「そうか……。力なれることあったらちゃんと言ってな」
「うん、ありがとう。さて、本題に戻りましょう。どれにする?」
すみちゃん達も案が出ていないっぽいので、少し提案をしてみることにした。
「七木さん達、まだ種目決まってない?」
「あ、うん。決まってないよ」
すみちゃんは柔らかな笑みを浮かべたが、白葉ちゃんがニヤついているのを見て、少し恥ずかしそうに表情を引き締めた。
「だったら一緒にドッジしない? ドッジなら七木さんの事カバーできると思うし」
「あ、えっと、それっていぶ──藍川さんが守ってくれるって事?」
「そうとも言えるね」
この言葉に反応したのはすみちゃんじゃなくて橋野さんだった。
「え〜依吹ちゃん紳士〜。純蓮だけじゃなくてわたしの事も守ってよ〜」
「邪魔に思われないなら頑張ってみる」
「あ、あゆは守られなくても筋力あるからボール取れるでしょ!」
「筋力あるとか可愛げなくなる事言わないでよ〜。でもある種ギャップ萌えになるのかな」
「ぶりっ子うざいよ〜」
「友美奈酷〜」
橋野さん達が二人で漫才を広げている中、日南さんは話を進めようと私達に話しかけてくる。
「私達はドッジ賛成よ。外種目で中々埋まらないでしょうし、私達で埋めましょう。でもあとの二人はどうするの?」
「まあ適当に入れなかった人が入るでしょ」
「萎縮されないかしら」
「人によるとは思うけど、ある程度は仕方ないと思うよ。最悪ドッジは避けてればいいし、運悪くボール取っちゃったら外に回してくれればいいから、バレーやバスケよりかは責任減るから気楽じゃない? もしあれならあたしが真っ先に当たって罪悪感減らせるように動くよ」
日南さんと白葉ちゃんの会話に小夏はポカンとしていた。
「何で萎縮するんだ?」
口を開けたまま私の方を見るので、その口を閉じながら質問に答える。
「んー、そうだね、寝起きの太陽って眩しくて最初は見るのが億劫でしょ。他の人達からしたら、小夏達みたいな元気で明るい子は朝の太陽みたいに映っちゃうから、よく知らない状態で近づくのはちょっと気が重いって感じなんだよ。皆が素敵で引っ張ってくれるからこそだね。私はずっと助けられてるけど」
「そっか〜。じゃあ今からあたし達の事知ってもらえればいいんだな!」
「それだけは絶対にするな」
誰が言うよりも先に、大澤さんが小夏に釘を刺した。
「知られてないから怖がられてるんじゃないのか? だったら知ってもらえれば解決だ!」
「なんかこの例え自分で言うと自惚れているみたいで嫌なんだけど、アイドルに急に声かけられたらびっくりするし、側にいられると緊張するでしょ。そういうこと」
「友美奈っちはアイドルだったのか」
「助けて入雲」
「あたし達はクラスの皆からアイドルみたいな感じで見られてるから近寄りがたいってこと」
小夏はようやく納得したのか、ほーうと声を漏らしていた。
「じゃあここにいる全員アイドルか!」
「あ、私は観客側だよ」
そう答えると、白葉ちゃんに小突かれた。すみちゃんも何か言いたげであった。




