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二人の登校

 翌日、挨拶を済ませて外に出ると、すみちゃんが門のそばで待っていた。


「すみちゃん、おはよう」

「おはよういぶ」

「待っててくれたの?」

「うん。一緒に登校したくて。いい……かな?」

「もちろんだよ。手、繋ぐ?」

「うん。繋ぎたい」


 すみちゃんと手を繋いで歩き出す。


「すみちゃん、手冷たいね。手袋とかしないの?」

「手袋しちゃったらいぶの手触れられないから」

「可愛い事言うね」

「普段は可愛げないってこと?」


 すみちゃんは少しムスッとしてそんな事を言う。そんなすみちゃんに、私は鞄から取り出した手袋を差し出す。


「すみちゃんはずっと可愛いよ。そんな可愛いすみちゃんの手、真っ赤になってるのが可哀想だから、そっちの手、これであっためよう」


 すみちゃんの手に手袋を触れさせ、こちらに向けたところで、繋いでいない方の手でつける。


「どう?」

「うん、あったかい。ありがとう」

「どういたしまして。すみちゃんもつけてくれないかな?」


 手袋を握りながら手を差し出すと、すみちゃんは同じように私に手袋をつけた。


「ありがとう」


 すみちゃんはじっと私の目を見て、何か言いたげにしている。


「どうしたの?」

「どうしていぶは、そこまでしてくれるのに好きになってくれないんだろうって思って。やっぱり、王子様じゃないとダメなの?」

「そういえば、前もすみちゃん王子様になれないとか言ってたよね。どういう意味なの?」

「いぶは、王子様みたいな人が好きなんじゃないの?」

「王子様? 好きだよ。憧れって意味で」

「えっ?」

「昔から王子様みたいな人になりたいなって思っていたんだ。そこにいるだけで人々の救いに、希望になれる存在。私の理想像だよ」


 すみちゃんは深くため息をついて肩を落としていた。


「そういう事だったんだ〜」

「どうしたの? やっぱり夢物語かな?」

「ずっと、いぶの好きなタイプのことだと思ってた」

「え〜違うよ。流石に私はそこまで乙女じゃないよ。そっか、だからすみちゃん、私に好いてほしくて王子様になりたがってたんだ」


 少し声を出して笑うと、すみちゃんに頬を強めに突かれた。


「私は真剣だったの」

「ごめんね」

「改めて、いぶはどんな人が好きなの?」

「ん〜どんな人だろうね。考えたこともないから。努力している子は好きだよ。現実でも二次元でも」

「努力……」

「すみちゃんは十分努力してきたし、していると思うよ。だから、この言葉に惑わされないで、自分を大切にしてね。私はちゃんと見ているから、必要以上に頑張らないでね」


 すみちゃんの顔を覗き込みながらそう言うと、すみちゃんは至って真面目な顔をした。


「早く顔退けないとキスするよ。私の理性をあまり刺激しないで」

「すみちゃん、結構大胆だよね」


 少しずつ顔が近づいてきたので、ゆっくりと元の体制に戻る。


「中高で鍛えられたのもあると思う。結構グループで話振られたりとかで発言求められるから」

「すみちゃんは普段橋野さん達とどんな事話してるの?」

「うーん、改めて聞かれると。大した話はしてないから。適当に流行りとか噂とかプライベートとか恋バナとかかな。私はあまり話せることがなかったから、いつも相槌とか、適当に茶々入れて話広げてもらってたけど」

「恋バナは特にやりにくいだろうね。話題振られたりしなかったの?」


 すみちゃんは思い出しているのか、苦笑いをして少し疲れを滲ませた。


「しょっちゅうされたけど、思っているような進展一切ないよって言って話終わらせてたよ。そしたら物足りないあゆとかが自分で恋バナ始めたりするから、それ聞いている感じかな」

「橋野さんモテそうだしね」

「あゆはね〜。本人が飽きやすいから長続きしないんだよね。最長三日って言ってたから」

「それは……結構早いね」

「友達だと気楽だった関係が、付き合うと重くなるんだって。中原君と篠原君と付き合ってたことあるらしいけど、一日で別れたらしい」

「まあ、それで気まずくならずに今仲良くしているなら私はそれでもいいなって思うけどね。いつか、心から好きになれる人できると思うし」


 すみちゃんは深い溜息を吐きながら、厳しい目つきで私を見る。


「いぶ、あゆに惚れられないようにね」

「流石に大丈夫だと思うけど。普段一緒にいないし」

「でもいぶへの好感度高いから。あゆ、女の子もいけるとか思ったらいぶを真っ先に狙いそうだし。だから、念の為」

「まあ、すみちゃんがそう言うなら気をつけるね」


 学校の最寄駅。そこで私達は手を離し、けれど横に並んでたまたま出会った友達を装って教室まで一緒に行った。

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