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連絡先交換

「いぶっちゃん……」


 白葉ちゃんは相当限界なのか、私の背中に寄りかかってきた。


「お願い、席替わって……」


 疲れ切った声で私に懇願してくる。


「だ、ダメだ! 依吹っちと離れちゃうじゃないか!」

「でも代わりにあたしが来るよ」

「うっ……そ、それは魅力的だが……でも依吹っちも捨てがたい……」


 小夏は一人で葛藤している。私が良くても多分小夏が納得しないだろうし、どうしようか。


「新年早々運悪いね入雲」

「そう思うなら大澤替わってよ」

「遠慮しとく」


 白葉ちゃんは橋野さんと日南さんにも視線を飛ばしたが、二人とも大胆にそっぽ向いた。

 次に白葉ちゃんはすみちゃんに視線を移した。すみちゃんはそっぽ向く方向がなくて苦笑いを浮かべた。


「すっちゃん席替わってくれない?」

「えーっと、そうだね〜……」


 すみちゃんは気まずそうに言葉を探している。多分すみちゃんも席は替わりたくないのだろう。


「俺が替わってやろうか?」


 そう呈したのは瀬野君だった。


「まじ? 替わってくれる?」

「まあ、俺男だし。大して関わりないから向こうも女子が来るよりは俺の方が気が楽だろ」

「まじ助かるありがと〜」


 白葉ちゃんは今まで見たことない笑顔を浮かべて心底喜んでいた。


「その代わり、交換条件だ。少し俺に協力してくれ」

「えっ……。な、何要求するつもり?」

「大したことじゃねーよ。いいからちょっと来てくれ」


 白葉ちゃんは瀬野君に言われて一緒に廊下に出ていった。


「瀬野君のお願いってなんだろうね?」


 普段あまり関わらない白葉ちゃんに頼むみたいだし。


「なー」


 小夏の反応とは対照的に、橋野さん達は私の方を見てニマニマしていた。


「その内分かると思うよ〜」

「あゆ知ってるのか⁉︎」

「まあ大体想像つくっていうか」

「あいつ結構分かりやすいからな〜」

「ねー。純蓮に振られたのに立ち直り早かったしね〜」

「そうそう」


 橋野さんと中原君は笑い合いながらそんな会話を繰り広げる。

 他の人達も似たような事を、特定の誰に発することはせず、会話を成り立たせている。

 でも、すみちゃんだけは何も言わず、ただ神妙な面持ちで私の方を見ている。


 白葉ちゃんと瀬野君が戻ってくると、橋野さん達は揶揄うように瀬野君に笑みを向け、瀬野君は罰が悪そうだった。


「瀬野のお願いなんだったんだ白葉っち?」

「えーうんまあ……」


 白葉ちゃんは私の方を見るとため息をついた。


「少なくともあたしはあまり役に立たないよとだけ言った感じ」


 白葉ちゃんはそう言って私の頭を撫でる。


「なあ、藍川」


 瀬野君に声をかけられて振り返ると、ボーリングのページを見せられた。


「今週末こいつらとボーリング行くんだけど、藍川も来ないか?」

「えっ、いや、でも……」

「依吹っちが行くならあたしも行きたいぞ! 行かないならあたしと一緒に出かけよ依吹っち!」

「あたしも久々に行きたくはある」

「そう言うと思って、小森と入雲、それに藍川も入れた人数で予約取ってあるんだよ。だからその、来ないか?」


 今週末……日曜日……。すみちゃんは特に日曜日家に来れないとか言っていなかった。


「七木さんも来るの?」

「えっ……? あ、うん。そうだよ」

「そっか」


 私が誘われる前提だったから特に何も言わなかっただけか。


「純蓮運動音痴だから依吹ちゃんに心配されてるじゃーん」

「純蓮だけオールガターも可哀想だし、バンパー出してもらえるように頼んであげよか?」

「七木のことだし、バンパー出してもガターするかもな」

「ひ、酷い! 私だってそこまで酷い結果にならない! ……はず」

「最後で台無しね」


 なんか、余計な事を言ってしまったせいですみちゃんをいじる流れになってしまった。


「あの、別にそういうことじゃなくて、ただちょっと気になっただけで。その、わざわざ予約してくれたなら、せっかくだし参加しようかな」

「じゃあ、詳しい話またするから、連絡先交換していい?」

「うん」


 瀬野君と連絡先を交換すると、流れで他の人達とも交換することになった。

 小夏と白葉ちゃんは既に入学当初に全員と交換済みらしくて流石と思った。


「あれ〜? 純蓮は依吹ちゃんと交換しなくていいの?」

「あ、うん。私はもう持ってるから」

「え〜いつの間に?」

「えっと……」


 すみちゃんが回答に困っていると、大澤さんがスマホをいじりながら条件反射のように


「体育祭の時でしょ」


 と答えていた。


 すみちゃんはそれに肯定も否定もせず、曖昧な相槌で軽く流していた。

 思えば、どうしてすみちゃんは私と幼馴染という事実を頑なに隠そうとするのか、この時初めて思った。

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