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おやすみ

 皆でゲームコントローラーを持ち寄ってゲームしたり、別荘に元々あったトランプや人狼をやったり、意外とすぐに夜がやってきた。


 掃除班と料理班に分かれて、皆夕食に向けて準備をする。


「できたよ〜」

「こっちも準備オッケー」


 たこ焼き機がセットされ、周りには生地とタコ、それにトッピングが並べられている。


「椅子がないわよ」

「七つも椅子なんてここにはないぞ」

「だから、皆平等に立食形式にしたんだよ」


 皆好き勝手に生地やタコ、中には罰ゲーム要素でカラシやチョコなど変な物を入れたりして、盛り上がりながら食べる。


「ん〜⁉︎ 誰、わさびなんて入れたの〜」


 すみちゃんは舌を出しながら、お茶を一気飲みする。


「七木さん大丈夫? 口濯いでくる?」


 空になったコップにお茶を注ぎながら、様子を伺いながら声をかける。


「ううん、平気。ありがとう藍川さん」


 ああ、良かった。すみちゃんの笑顔を見ると自然と頬が綻ぶ。私はちゃんとすみちゃんが好き。それを知れただけでも良かった。


◇◆◇◆◇


 あっという間に夕食は無くなり、皆話しながら片付けを始める。


「そういえばお風呂どうする? 七人もいたら時間かかるよね?」


 洗い物が終わって一段落していると、大澤さんが小夏に向けて声をかけた。


「この辺温泉とかないぞ」

「じゃあどうする〜? じゃんけん?」

「抵抗ないならベッドのペア同士で入ればいいんじゃない?」


 白葉ちゃんがそう提案すると、沙雪さんは真っ先に着替えとお風呂セットを持って、先に入らせてもらうわと、さっさと一人でお風呂に入っていった。


「沙雪ってお風呂長いと思う?」

「分かんない。長々入ってそうではあるけど、面倒とかですぐ出てくるイメージもある」

「沙雪に後がいるから早めに出るよう言っとく?」

「それ言ったところで沙雪は絶対自分のペース崩さないよ」


 すみちゃんと大澤さんが話しているのを横目に、沙雪さんが戻ってきたら離れることになるであろうソファに座りながら、小夏を膝に乗せてスマホをいじる。

 こうしていれば、小夏は私が密着していなくてもなんとも思わないどころか、ちゃんとスマホいじれるようにスペースを空けてくれるから。

 それに、小夏はソシャゲに夢中になっているから尚更距離は空く。すみちゃん的にも多少は良いだろう。


「ねえねえ〜皆お風呂どれくらい入ってるの?」

「三十分くらいだな」

「あたしも大体それくらい。むしろお風呂出た後の方が時間かかる」

「分かる〜! めっちゃ時間かかるよね! あーそういえばお風呂入るから依吹ちゃんにすっぴん見られちゃう」


 あゆちゃんは恥ずかしいと言いたげに顔を隠している。


「大丈夫だよ。化粧してなくてもあゆちゃんが可愛いのは見ていて分かるから」

「ほんと〜? でも化粧してない顔あんまり見ないでね。恥ずかしいから。依吹ちゃんには、一番可愛いわたしを見ていてほしいもん」


 大澤さんはそんなあゆちゃんを見て、鼻で笑った後、ぼそっとぶりっ子と溢していた。

 私に聞こえているということはもちろんあゆちゃんにも聞こえていて、あゆちゃんから大澤さんへのブーイングが送られている。


「先に化粧落としといた方がいいかな? その方が早く出られるよね?」

「そうだね」

「こなっちゃん今日化粧してる?」

「あたし保湿とカラコンくらいしかしてないぞ。あとリップとネイル」

「じゃああたし化粧落としてくる」

「ついでに沙雪に排水溝の髪の毛とか取って捨てるよう言っといて」

「了解」


 白葉ちゃんがいなくなって、全員ソファに座れるようになったので、すみちゃんと大澤さんもソファに座った。


「お風呂の順番どーする?」

「じゃんけんでいいよ。ちょうどそこ三人固まっているんだからやりなよ」


 大澤さんは、私と小夏とあゆちゃんを示すように、人差し指で円を描く。


「わたし〜個人的に依吹ちゃんの後がいいな」

「うわきも」


 大澤さんはツッコミとかではなく、心から思わず本音が出てしまったと言わんばかりの声色で、瞬間的に反応していた。


「いいでしょ! 報われないこと承知しているんだから、せめてこれくらい許されてもバチは当たらないよ」


 すみちゃんは、あゆちゃんのこういう発言どう思っているのか。横目で観察すると、呆れたように笑っていたので、小夏に対しての気持ちほどではないのだろうか?

 明確に私に好意を持っていて、尚且つ比較的距離が近いあゆちゃんと、別にそういう意味で私と接しているわけではないけどしょっちゅうくっついている小夏。

 すみちゃんにとって、この両者にはどれほどの差があるのだろうか……。


「じゃああゆっちと純蓮っち最後な。ちゃんと水抜きして、シャワーで軽くサッと流して、換気扇つけるの忘れないでくれ」

「え〜なんで最後〜⁉︎」

「白葉っち説得できるならあたし達最後でもいいぞ」

「やめときまーす」


 沙雪さんが戻ってくると、入れ替わるように小夏と白葉ちゃんが入っていき、私達はソファから退かされて、床に座る。


 あゆちゃんは寝そべりながら私に寄ってきて、膝に頭を乗せる。


「あなたの膝って本当に人が寄ってくるわね。寝心地悪いというのに」

「なんででしょうね」

「なんで沙雪が依吹ちゃんの膝の寝心地分かったような事言うの⁉︎」

「使ったからに決まってるじゃない」

「えー! ずるい!」


 絶賛私に膝枕をされているあゆちゃんが、沙雪さんに文句を言うというおかしな構図。

 大澤さんは我関せずで、すみちゃんはちょっと不服そうにしている。私はこんな状況に苦笑い。


「出たぞー!」


 小夏が後ろから抱きついてきて、若干あゆちゃんを潰そうになりそうになりながら、体制を持ち直して、そっとあゆちゃんの頭を床に置き、小夏は一度おぶった後下ろし、大澤さんとお風呂に入る。


「純蓮と入りたかった?」


 大澤さんが浴槽に入ってくると、開口一番そう語りかけてきた。


「そんな事ないよ。別にそこまで拘りないから」

「うちは拘るかと思ってた。付き合ってるんでしょ?」

「付き合ってるなんて言ったっけ?」

「言ってないけど、あんだけ分かりやすく好き合ってるなら付き合えってうちは思うよ」

「私そんなにすみちゃん好きに見える?」


 口にして、少し後悔した。だから誤魔化す為に笑顔を作った。

 何に後悔して、何を誤魔化すのか、正直理解はしきれていないけど。


「自分で好きって言ってたじゃん。純蓮も好き好きオーラ出しまくってるし」

「ああ、そういうこと。うん、そうだね。他の人も気づいてると思う?」

「あゆは自分の事しか考えてないから知らないんじゃない? 小森はそんな事意識すらしてなさそうだし。まあ他は気づいてるでしょうね。藍川はともかく、純蓮が藍川を気にかけている事くらいは」

「そっか。ねえ、大澤さん。側から見て私はすみちゃんの事好きそうに見える?」

「藍川そんなに純蓮と積極的に関わらないし、見えないんじゃない?」

「そうだよね」


 お湯の中で膝を抱えて、揺れる水面を見つめる。こうしていると、何も考えずに済むから。


「何か悩みでもあるの?」


 大澤さんの足が視界に入ってきて、私の意識を戻すかのように、お湯の中で足同士が触れ合った。


「悩みってわけじゃないけど、恋人って常日頃最優先にしないといけないのかなって」

「うちはそうしてくれたら嬉しいけど、それ前皆に言ったらもっと現実見ろって言われたんだよね。重いって。まあ、うちも友達が常に彼氏──恋人優先だったら嫌というか寂しいから、理想は理想、現実は現実だろうね」

「そうだよね。それで合ってるよね」


 自分の求める答えを引き出している気分になる。

 否定されると、できないという言葉が甘えになる。肯定されると仕方ないになる。

 責められるより、逃げ道を探して選ぶ方が幾分か楽で、私は今、逃げ道を探し進み続けている。

 いつか良くなることを願って、逃げ続けることを望んでいる。


◇◆◇◆◇


 お風呂を出ると、沙雪さんはもう横になっており、小夏と白葉ちゃんも部屋に戻っていたので、私達も部屋に入ってケアをして寝る準備をする。


「うちちょっと出てくるね」

「行ってらっしゃい」


 ケアが終わったくらいで、大澤さんは荷物を持って部屋を出ていき、しばらくして部屋に戻ってきたのはすみちゃんだった。


「あ、えっとね、友美奈が交換してくれて。えっと、だからその、一緒に寝よ」


 すみちゃんは恥ずかしそうに寄ってきて。ベッドに座った。

 普通だったら喜んだ。ちょっと前の私なら喜んだ。でも今、喜ぶより先に、困惑が生まれた。だから嬉しいより、納得が生まれた。


「大澤さん、最初から譲る為に私とのペア申し出てくれたんだね」

「そうみたい。お風呂は回避できなかったみたいだけど。でもね、逆に良かった。いぶと入るってなると緊張してそれどころじゃなかったかもだから」

「それは私も同じだよ」


 私は電気を消して、ベッドにすみちゃんを押し倒した後、私も横になって、抱き寄せて寝る姿勢に入る。

 会話を続けるとボロが出るかもしれない。でも、密着してればすみちゃんは満足するし、ボロも出ない。

 ただ黙ってすみちゃんが喜ぶ選択を取る。それが、私の為にもすみちゃんの為にもなる。


「いぶ、疲れてる?」

「うん。だから、おやすみすみちゃん」

「おやすみ、いぶ」


 すみちゃんに触れているから思う。なんで私は好きを自覚したその時も、その前も、その後も、すみちゃんにドキドキしなかったのだろうと。ドキドキしてくれるのなら、私がちゃんとすみちゃんのこと好きって安心できるのに、これじゃあ安心できない。何の為に自覚してから付き合ったのか分からなくなる。


「いぶ?」

「ごめん、力入れすぎた?」

「大丈夫だよ。でも、どうしたのかなって」


 今ここで思っていることを言えば、私は少し楽になれるのかな。でも、そしたらすみちゃんを悲しませる。

 ああ、良かった。悲しませたくないって感情がちゃんとある。私はちゃんと、すみちゃんが好き。良かった。


「すみちゃん、好きだよ」

「私もいぶの事好きだよ」

「うん。知ってる。おやすみ」


 私は腕の力を緩め、すみちゃんの髪に手を添えながら、全身に入っていた力を緩め、目を瞑り直す。

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