反撃の兆し
「ピーちゃん! 後ろをお願い!!」
「ピーッ!」
呼吸を合わせるように、エイムとピーちゃんは瞬時に背中を預け合い、シラセを中心に守る陣形を取った。
――敵は、6体。
エイムは一瞬で数を把握し、同時にブーツがまばゆく輝きを放つ。
「マナ・ブースト!!」
エイムの咆哮と同時に、三体のセイレーンが一斉に襲いかかってくる。
セイレーンたちのわずかなの速度のズレ、羽ばたきの間――すべてをエイムは見逃さなかった。
超人的な加速から放たれる蹴りが、空気を裂く。
ーーーしかし、決定打にはならない。
セイレーンたちは舞い落ちる木の葉のように身を翻し、致命の一撃を寸前でかわしてみせた。
ピーちゃんもまた、体内に溜め込んだ風のマナを解き放つ。
爆風のような加速からの体当たりが、敵を寄せつけまいと空間を割く。
だが、こちらもひらりを身をかわされる。
互いに決定的な一撃を欠いたまま、緊張だけが濃縮されていく。
間合いを探り合う間も、セイレーンたちの歌は止まらない。甘く、粘つく旋律が森を満たし、空気そのものが揺らぐ。
シラセは両耳を塞ぎ、地面にしゃがみ込んでいた。
必死に耐えながら、何かを小人たちに囁いたようだったが――その声は歌にかき消され、エイムには届かない。
「うーん、やっぱり女の子にはセイレーンちゃんの歌、効きにくいんだね~」
アシュクラが感心したように呟く。
「エイムちゃんの意志も、相当強そうだし。
『魅了』が魔法の条件なら、女の子にはオスのセイレーンを当てるべきなのかな?
……というか、そもそもオスっているのかな? まあ、今はどうでもいいか♪」
この状況下でも、アシュクラは楽しげに笑い、戦場を観察していた。
そして、エイムの身のこなしを見ていた彼は、何かに気づいたようにぽつりとつぶやいた。
「…ふーん。多分あの娘、混じってるね。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
状態は硬直していた。
セイレーンたちの攻撃を、エイムとピーちゃんは協力して、かろうじて牽制し続けている。
だが、状況は確実にエイムとピーちゃんを疲弊させていた。
(このままだと……私とピーちゃんのほうが先に、体力が尽きる…そしたら…)
焦りが胸を締めつけた、そのとき。
――いない。
三体の小人の姿が見当たらない。
(そうだ……さっき、シラセが小人たちに何か話してた……!
シラセはきっと……何かを考えてる……!)
希望の火が、かすかに灯る。
「ピーちゃん!! 絶対に耐えるよ!!
大丈夫、きっと何とかなる!!」
「あっははは! 健気だねえ、エイムちゃん♪
でもさあ、このままなら先に倒れるのは君たちだよ?」
アシュクラは高らかに笑い、続けざまに嘲る。
「それにしてもシラセちゃん、情けないねえ。
女の子に守られてさ♪ まるでヒロインじゃーん!」
その声は、シラセの耳には届かない。
だが――言われなくても、彼自身が一番理解していた。
自分の無力さも、足手まといである現実も。
それでも、シラセは諦めなかった。
目を固く閉じ、耳を塞ぎ、意識を己の中に集中させる。
闇のような内側で、思考だけが研ぎ澄まされていく。
――何度も見てきた。
エイムと一緒に。いや、正確には、いつも一方的に見せられてきた、だな。
正直、うんざりしてきてた。
でも今は……感謝してる。
俺の魔法に最も必要なのは、「具体的なイメージ」。
何度も見て、聞いて、触れて、理解すること。
それを――俺は、お前と過ごす中で積み上げてきた。
……ありがとう、エイム。
もう少しだけ、耐えてくれ。
絶対に、この状況を――
打破してみせる!!!!
その瞬間だった。
茂みをかき分け、三体の小人の人形が慌ただしく駆け出してくる。
それぞれが、両腕いっぱいに何かを抱えていた。
アシュクラはその動きを見逃さなかった。
(……来たな。何か仕掛けてくる……?)
「セイレーンちゃんたち。一旦、距離を取って。」
エイムたちを警戒しているようだが、その口元はにやついていた。
まるで、この後の展開に期待するように。
セイレーンたちは即座に後退し、木々に爪を突き立てて停止した。
だが、歌声だけは止まらない。森を満たす魔性の旋律は、なおも空気を震わせていた。
「何するつもり?
無駄だと思うけどね。圧倒的に不利なのは変わらないんだから。」
アシュクラは試すように言葉を放つ。
小人たちはシラセのもとへと集まり、一体が足元をつついた。
シラセは恐る恐る目を開く。
小人たちの腕に抱えられていたのは、
――大量の、フェイロンドの葉だった。
【※読者の皆様への大切なお願い】
「面白い!」「続きが楽しみ!」「応援したい!」と思ってくださった方は、この作品の『ブックマーク』と、この下にあるポイント評価欄を【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】にして、ぜひ『ポイント評価』をお願いします!
今後の作品更新をしていくうえで、大変大きな励みになりますので、是非ともよろしくお願い致します…!
↓広告の下あたりに【☆☆☆☆☆】欄があります!




