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エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー封鎖された町編ー
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小さな相棒

幻影のはずの巨狼は、それでもなお、圧倒的な威圧感を放っていた。

バジリスクは即座に巨狼へと向き直り、低く唸り声をあげる。

瞳と瞳が交錯する——しかし、石化は効かない。

突如として現れた予想外の脅威に、バジリスクの全神経が注がれていた。


シラセは呆然と、その光景を見つめていた。

だが、やがて理解する。——あの花は、記憶を吸い上げ、その実に蓄積する。

エイムが持っていたのは、花びらだけ。つまり、吸い上げた記憶は——。


不意に、涙がこぼれ落ちた。

なんで、こんな時に泣く。今は戦う時だろ…!


そう自分に言い聞かせても、涙は次々と溢れる。

そして、気づいてしまう。

エイムの中から、あの戦いの記憶が永久に失われたことが、自分にとってどれほど悲しいかを。

それはきっと、エイムにとっても同じだった。

恐ろしくも、誇らしい——共に死線を越えた宝物のような記憶だったはずだ。


エイムは、それを差し出してまで生き延びる道を選んだ。

未来に、希望を託した。

それが彼女の覚悟——絶対に生き延びるという強い意志だった。


……だったら俺も、全力で命をつなぐ選択をしろ!


涙を拭ったシラセの目に、鋭い光が宿る。

全身が悲鳴を上げるような痛みに苛まれながらも、それを押し殺し、思考を研ぎ澄ませる。


今、バジリスクは予想外の敵に最大限の警戒を向けている。

この一瞬、俺たちは「いつでも殺せる獲物」として、奴の注意から外れている。

事実、奴はガルムと対峙したまま、こちらを見ようともしない。

——だが、いずれ気づく。ガルムが幻であることに。

それまでが勝負だ。命をつなぐ、最初で最後の好機。


短く目を閉じ、決意を固める。

そしてシラセは、全力で叫んだ。


「ピー助! こっちだ!!」


「ピ!?」


戸惑う小さな鳴き声。

だが、エイムとシラセは視線を交わし、わずかに頷き合う。

その眼差しから、エイムは確信した。——シラセは、この状況を打開するつもりだ。

ならば、託すしかない。


「ピーちゃん、シラセのところへ!」


「ピィ!」


風を切って飛び寄る小さな相棒に、シラセはすかさず伝えた。


「ピー助! 俺をバジリスクの真上まで運んでくれ!」


「ピィ!?」


ピーちゃんはエイムの肩に乗れるほどの小ささだ。

普通の鳥なら到底不可能——だが、この小さな翼には、溜め込んだ風のエネルギーがある。

全力なら、ほんの数秒だけでも——。


「お前の最大限の出力なら、きっとできる!

ほんの一瞬でいい、俺を奴の真上に維持してくれれば……俺がバジリスクを倒す!!」


「ピィ……」


不安げに視線を揺らすピーちゃんが、エイムの顔を見つめる。

その視線を、エイムは力強く受け止めた。


「ピーちゃん、お願い! きっとあなたならできる!」


その言葉が、迷いを吹き飛ばした。


「ピィッ!」


シラセは右手を差し出し、ピーちゃんが両足で掴む。

刹那、風が唸りを上げて巻き起こった。


「ピィィィィィイイイイイイ!!!!」


——ゴォォォ!!


土煙が渦を巻き、シラセとピーちゃんはゆっくりと地面を離れ、空へと舞い上がっていった。

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