怪物には、怪物を
その花びらを咲かせる魔法植物の名は、フィロメリア──(追憶花)。
別名ではアユルエクリド(時喰の宝珠)とも呼ばれている。
その花に深く祈りを捧げる者は、自らの記憶と引き換えに、若返りの奇跡を授かる。
その際に副作用として、差し出した記憶の幻影が、周囲の空間に鮮明に映し出される。
エイムたちがこの封鎖された町に足を踏み入れる前、彼女らはエリシアと出会い、その時にこの花びらを手に入れていた。
エイムは、エリシアと交わした言葉を思い返していた。
―――――――――――――――――――――――――――――
「エイムは、魔法植物の研究者なんだよね?なら、この残った花びらを持っていって。」
「え…でも、これってお父さんとお母さんとの思い出じゃ…」
「うん。でも大丈夫。たくさんの思い出は、私の心にしっかりと刻まれているから。
私は、助けてもらったエイムに、ほんの少しでも恩返しがしたいの。」
「そんな…いいの?ありがとう、大切にするよ!」
―――――――――――――――――――――――――――――
エリシア、ありがとう。あなたと出会わなければ、今、私はきっと死んでいた。
私も助けられちゃったね。必ず生き延びて、感謝を伝えに行くから!
エイムは震える手で花びらを掲げ、全身の力を込めて祈りを捧げた。
私の大切な記憶を捧げます。だから、どうか…ほんの少しだけ、私の体を巻き戻してください…!!
その瞬間、真っ白な空間に、一人たたずむエイムがいた。
石化した肉体の重みは消え、そこに存在するのはただ彼女の意志だけだった。
突然の異変に戸惑う彼女の背後から、柔らかな声が響いた。
「あら、ようこそ。ここに人が訪れるなんて久しぶりね。」
振り返ると、そこには淡い緑色の炎が揺らめきながら人影を形作っていた。
直感で、それが意思の塊であることを感じ取る。
「ふむ…花びらだけを持ってきたのね。
不完全な状態よ。このまま記憶を捧げても、蓄積されることはなく、その記憶は永遠に消え去ってしまうわ。
どうするつもり?」
「私の記憶は消えても構いません。ただ、ほんの数分でいいから、体を巻き戻してほしいんです。」
「ふふ、変わった使い方ね。事情は分からないけど…いいでしょう。
それで、あなたが差し出す記憶は?」
「私が差し出すのは――」
エイムは両手を組み祈る仕草をし、心の奥底から強く呼び起こした。
あの激しい、戦いの記憶を。
瞬間、彼女の意識は元の肉体へと戻っていた。
そして、徐々に体の時間が巻き戻りーー石化が、なかったことになっていく。
それと同時に、頭の奥から何かが抜けていくような感覚が走る。
ああ…さようなら…
エイムは直感的に、永遠にこの記憶が失われることを感じていた。
周囲に、強い光が立ち込める。
その刹那――
「ガァァァアアアアアァァァァァアアアア!!!!!」
凄まじい咆哮が耳を引き裂き、バジリスクは思わず視線を咆哮の主へと向けた。
そこに立つのは――黒く、凶悪な体躯。
幻影であるはずの漆黒の巨狼が、圧倒的な威圧感で、空気を押しつぶしていた。
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