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エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー封鎖された町編ー
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抗う意志は、石化などしない

壁に叩きつけられたシラセは、崩れるように地面へと倒れ込んだ。


意識が、遠のく。


全身を鈍い痛みが襲い、視界はにじむ。

耳鳴りが、金属を擦るような音で世界を覆い尽くしていた。


――俺は……どうなった?


脳裏にかすみがかかる中で、シラセはかすかな意識を繋ぎ止めながら、倒れたままの姿勢で必死に視線を巡らせた。

エイムの姿を、探していた。


ぼやける視界の先、向こうを向いた巨大な蛇の奥に、エイムが立っていた。

バジリスクの体に隠れて、表情は見えなかったが―

嫌な予感が、よぎる。


――まさか……バジリスクの眼を……!


あの怪物の眼を見れば、石にされる。


「っ……!」


声を出そうとするが、喉が焼け付いたように動かない。

指すら思うように動かせない。けれど、目は、彼女の異変をはっきりと捉えていた。


膝下から、灰色がにじむように肌へ広がっていた。

石化だ。

確実に、エイムの身体を侵食している。


「……やめろ……!」


声にならない声を漏らしながら、シラセは懸命に腕をついて体を起こそうとする。

だが、力が入らない。口から血が垂れ、赤い滴がぽたぽたと地面に落ちる。


涙が、意思とは無関係に滲んでいた。


――エイムがやられる。


守ると誓ったのに、守れない。

こんな無様な姿で、何が“俺が守る”だ。

俺はまだ……こんなにも、弱いのか。


滲む視界の中、ふたたびエイムの姿を追う。

彼女は何かに取り憑かれたように、急いでポシェットの中を探っていた。


――何してるんだ……。

もう……腹部まで石化が進んでるんだぞ……!


そのとき、バジリスクがわずかに身体をずらし、隠れていたエイムの表情があらわになった。


その顔は――必死そのものだった。


恐怖ではない。諦めでもない。

ただ、何かを掴み取ろうとする、強烈な意思。抗う者の顔。


その瞬間だった。


シラセの心に、火がついた。


――何してんだ、俺は。


エイムは、石化に侵されながらも、まだ立っている。

あんな顔で、あんなに必死に――もがいてる。


……勝手に諦めてんじゃねえ……!

這いつくばって終わるつもりか、シラセ!!


「……っ、ぐっ……!」


震える脚に力を込めて、シラセはふらつきながら立ち上がる。

全身に激痛が走る。血が口の端から垂れ続けている。


それでも、目は――研ぎ澄まされていた。


諦めるな。

まだ、やれることはある。

何かが、あるはずだ――!


立ち上がったシラセに気づき、バジリスクが振り返ろうとする。


「まだ、終わってないよ!! あなたの相手は、私だ!!!!」


エイムの叫びが、空気を裂いた。

バジリスクの顔が再び彼女の方へと向く。ピタリと動きを止める怪物。

そのあまりの気迫に、バジリスクは再度、すでに石化が始まっているはずのエイムを警戒したのだ。


そのとき、すでにエイムの肩まで石化は進行していた。

だが、彼女の手――指先だけが、最後の意志を宿すように動いていた。


何かを、摘まんでいる。


「まだ……終わってない!! 絶対に……私たちは、生き延びる!!!!」


その声は、もはや叫びではなかった。

命の炎そのもの。燃え盛る意志の塊だった。


シラセは、かすむ視界のなかで必死にその指先を見つめた。


――そこに、あったのは。


色とりどりの色彩を放ち、そして先端が透けた――見覚えのある、花びらだった。

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