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エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー封鎖された町編ー
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石化の魔眼

強く、目をつむる。


その先に――おぞましい魔獣がいる。

バジリスク。目が合っただけで命を奪う、伝説の魔眼を持つ化け物。


考えるだけで、全身を恐怖が駆け巡る。逃げ出したい。すぐにでも背を向けて――


だが、できない。

生き延びるために。

そして、他の誰かを犠牲にしないために。


エイムは震える息を整え、意識を深く沈めていく。

周囲の空気、足裏に伝わる振動、空間を伝ってくる異様な気配――


ズル……ズル……


這いずるような音が、静かに耳を満たす。

まだ距離はある。バジリスクはゆっくりと動いている。


……しかし、次の瞬間。


ズザザザザッ!!!


地を引き裂くような、暴力的な摩擦音が耳を裂いた。


「ピーッ!!」


肩に乗っているピーちゃんが叫ぶ。


(正面から――まっすぐ!距離は……正確には、測れない!)


思考が終わると同時に、エイムの足元が淡く発光した。


「ピッ!」


(今!左に、よける!!)


緑のマナがほとばしり、瞬時に加速する。

ブーツが地を蹴り、彼女の身体を左へ大きく跳躍させた。


ズオオォォォオオ!!!


巨体が横をすり抜ける。風が爆ぜ、土煙が舞う。

かろうじて――かわした。


「やった……! これなら、戦える!」


一筋の希望に、胸がふるえる。


だが、その一瞬の安堵も魔獣は許さない。

再びすさまじい摩擦音が響く。


「ピイイィイ!!」


(右斜め後ろから、またすぐくる!もう一度、左へ!)


再び、跳躍。

風と殺気が頬をかすめる。ふたたび回避は成功――だが、このままでは消耗は確実に進む。

エイムは、歯を噛み締めた。


(この巨体……まだ私のすぐ横に!だったら!)


瞬間、ブーツが強く発光し、マナが急速に凝縮する。


「マナ・インパクト!!!」


渾身の飛び蹴りが、バジリスクの脇腹に炸裂した。

巨体が衝撃で浮き、重たく地面に落ちる。


「シュゥゥウウーーーーーッ!!」


怒りと警戒の咆哮。

バジリスクが後退する音が、地を這って遠ざかる。


眼が合っただけで即死—――それが、この魔獣の本質。

そんな存在が、一撃を食らった。しかも、人間に。


(距離を取った…私を……警戒してる?)


それは、勝利ではない。だが、脱出の可能性という名の光が射す。


エイムは目を閉じ、深く呼吸した。

ほんの一筋でも希望があれば、それを掴み、繋ぎ止める。

やれる。なんとか、なる!いや、何とかする!


そう、決意した瞬間だった。


ズザザザザザッ!!!


耳に突き刺さる、這いずる音。

だが、少し違和感がある――嫌な予感がよぎる。


「ピィィイイ!!」


「……え? シラセの方に――!?」


バジリスクは、エイムを“危険”と判断した。

そして、新たな標的として――無防備なシラセを選んだ。

まさにそれは、魔眼とは別の「冷酷」という恐ろしさだった。


「ま、待って!!」


エイムの叫びが周囲に反響する。

だが、バジリスクは進行を止めない。


「シラセッ!!! 逃げて!!」


「え……ーー」


シラセが振り返りかけたその時。


ドゴォッ!!!


魔獣の巨体がシラセに迫り、激突した。

シラセの身体が空を舞い、壁面に叩きつけられる。


「—――かはっ…!」

口から、血がしぶきとなって飛び散る。


「シラセェ!!」


エイムは思わず目を開き、反射的にシラセの声がしたほうを見た。


—――その時だった。


ズルッ。


視界の横から、バジリスクの顔が突如として現れた。

あまりの巨大に、エイムの視界は埋め尽くされる。

そしてその魔眼は、エイムの目を、しっかりととらえていた。

魔眼には、不気味な魔法陣のような紋様が浮かんでいる。


まるで、時が止まったような感覚だった。

全身が、凍り付く。


「…あ………!」


そう、蛇とは狡猾な生き物だ。

そして、恐ろしく冷酷。


バジリスクはシラセをおとりに、エイムの目を開かせたのだった。

その恐るべき策略に、エイムは掛かった。


目が合った瞬間、エイムの両目から、何かが神経を伝って体を這いまわるような、気色の悪い感覚が全身に駆け巡った。

その直後、足の指先から、凍えるような冷たさが、徐々に上がってくるのを感じた。

そう、すでに石化は始まっていた。


—――私、このまま死ぬの…?


目が合ったままのバジリスク。

その表情は何一つ変わっていないはずだが、エイムには、不気味に笑っているように感じられた。

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