表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー封鎖された町編ー
39/60

蛇の王・バジリスク

「……蛇?」


エイムが目を見開き、驚いたようにシラセを見た。だがすぐに、何かに合点がいったように顔つきを変える。


「そうか……! 二つの斑点――あれは、蛇に噛まれた痕だったんだ!

しかも、咳やくしゃみがないってことは、病気じゃない。蛇毒によるものだって説明がつく!」


「……ああ。実はここ数日、小さな動く影を何度か見かけてた。最初は気のせいかと思ってたけど、ついさっき、その正体をはっきり見たんだ。……小さな蛇だった」


「じゃあ、やっぱり……間違いないね」


エイムは確信を込めて頷くが、その眉間に不安のしわが寄る。


「……でも、変だよ。普通、蛇ってわざわざ人の多い町なんかに入り込む?

しかも、自分からどんどん人を噛みに行くなんて……ちょっと不自然すぎる」


「ああ。本来、蛇は人間を避ける生き物だ。まるで何か目的があるような……」


言いかけたところで、二人の視線が重なった。

ぞくり、とした戦慄が背筋を走り、額に冷たい汗がにじむ。


「……これ、シラセの村で起きたことと同じじゃ……」


エイムが小さく、震える声でつぶやいた。


「誰かが……意図的に仕組んでるな」


シラセは握った拳に力を込め、唇をかみしめる。脳裏に浮かぶのは、かつての村の惨劇。その瞳には、消えぬ怒りの炎が宿っていた。


「また、同じことを……。絶対に許せない! 今度こそ、止めないと!」


エイムの声が震えながらも、鋼のような決意を帯びて響く。


「……敵が蛇を操ってるとすれば、一つ心当たりがある。

守護英雄様の英雄譚に出てくる、“蛇の魔獣”だ」


そう言って、シラセは伝承に記された魔獣の話を語り始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その名は――蛇の王・バジリスク。


その体躯は、何百年もの歳月を生きた大樹の幹のように太く、長さは流れる川のようだったという。

だが、恐ろしいのはその大きさではない。真の脅威は、その瞳に宿る『魔眼』。


目を合わせた者は足先から全身が石と化し、そのまま絶命する。

しかも、その石化はバジリスクを討ち取っても解けることはなく、一度目が合ったが最後、逃れる術はない。


かつて、守護英雄がこの魔獣を討つまでに、多くの命が失われたと記録されている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……バジリスク……!」


エイムが冷や汗をにじませながらその名を口にする。


「もし今回の件が、そのバジリスクによるものだとしたら……。

目が合った瞬間におわりなんて、どうやって戦えばいいの……?

守護英雄は、どうやってそんな化け物を倒したの?」


「伝承によれば……守護英雄様は“目を閉じたまま戦った”と記されてる」


「ええ!? 目を閉じたまま、戦う!? そんなの、普通の人間には無理だよ……!」


シラセは少し顔をしかめながら、記憶をたどる。


「ただ、そのとき守護英雄様の周囲が“細かな光でキラキラと輝いていた”とも書かれてて……。

でも、それが何だったのかまでは分かってないんだ」


「ふうん……何か特別な魔法だったのかな。でも目を閉じて戦うなんて、現実的じゃないよね……」


「……だから、作戦がある」


シラセは声を潜め、真剣な目でエイムを見つめた。


「不意を突くんだ。バジリスクが眠っているときを狙って、俺が遠くから矢で“眼”を撃ち抜く」


「なるほど……! 魔眼さえ封じれば、勝ち筋が見えるってことだね!」


「ああ。だけどこの作戦には難点がある。そもそも、その寝ている時間帯をどう調べるか、だ…

下手をすれば、調査の時点で目が合って――即、終わりだ。」


シラセは唇を噛む。


「そっか…」


二人は下を向いてしゃがみ込んだが、エイムがふと思いついたように口を開いた。


「…あ、待って!バジリスクの魔眼は、生きてるものを石に変えるんだよね!?」


「…?そうだけど…」


「なら、私の人形たちなら大丈夫なんじゃない!?

魔法で動いてはいるけど生きてるわけじゃないから、魔眼の影響も受けないはず!」


「な、なるほど……! 人形なら石になることもない……!」


「それに、隠密行動なら知っての通り大得意だよ!よし、さっそく調査を――!」


勢いよく立ち上がったその瞬間、エイムの身体がぐらりと揺れた。


「おい、大丈夫か!?」


「う、うん……ちょっと寝不足で、ふらついちゃった」


「エイム、ずっと起きてたもんな……。今日はもう休め。調査は明日からにしよう」


「でも、今も苦しんでる人がいるのに……!」


「わかってる。でもな、ここで俺たちが失敗したら、もっと多くの人が犠牲になる。

だからこそ、絶対に失敗は許されない。俺たちは“万全の状態”で臨むべきなんだ」


その言葉に、エイムは少し肩を落としながらも頷いた。


「……うん、わかった」


二人は静かに腰を下ろした。

外の空気は張り詰めたままだが、いまは備えに徹するときだった。


――いよいよ、蛇の王との戦いが幕を開ける。

【※読者の皆様への大切なお願い】


「面白い!」「続きが楽しみ!」「応援したい!」と思ってくださった方は、この作品の『ブックマーク』と、この下にあるポイント評価欄を【☆☆☆☆☆】→【★★★★★】にして、ぜひ『ポイント評価』をお願いします!


今後の作品更新をしていくうえで、大変大きな励みになりますので、是非ともよろしくお願い致します…!


↓広告の下あたりに【☆☆☆☆☆】欄があります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ