病の正体
翌日。
正午が近づき、太陽は空高く昇っていた。
白く霞む陽光の下、空気はすでに昼の熱を含み始めている。
エイムは、昨夜から一睡もしていなかった。
絶え間なくマナを送り、人形たちに命を吹き込み続けていたのだ。
今まさに、その人形たちが町のあちこちを隠密に駆け巡り、情報収集にあたっている。
「う……うう、眠い……」
エイムは目をこすり、もう片方の手で自分の頬をつねる。
痛みにわずかに目が覚めるが、重たいまぶたは今にも閉じそうだった。
眠ってしまえば、マナの供給が途絶え、彼らはただの動かない人形に戻ってしまう。
遠隔ではマナを送り直せず、再び命を吹き込むには直に触れる必要があった。
「こればっかりは辛いな……でも、頑張れエイム!」
隣で見守っていたシラセが、少し申し訳なさそうな声でエールを送る。
「うぅ……ベッドでぐっすり寝たいよぉ……ハンバーグも食べたい……!」
泣きそうな声で嘆くエイムを見つめながら、シラセはふと、視界の隅に妙な気配を捉えた。
直感的に身を低くし、茂みに身を隠す。
そして、視線の先――屋敷の塀の向こうを見据える。
そこで彼が見たのは、塀の隙間から、何かが滑り込むようにして入り込もうとする姿だった。
「……なんだ? しっぽ、か?」
「ん? どうしたの?」
エイムが眠そうな顔で問いかける。
「あ、いや、なんでもない。ただの動物だと思う。」
「そっか……うーん、あの子たち、いつ帰ってくるかなぁ……」
「やっぱり、テレパシーみたいに意思疎通はできないのか?」
「うん、残念だけど。あの魔法は意識を宿すだけだから……会話は普通にしなきゃ無理なんだよね。」
「そっか……じゃあ、のんびり待つしかないか。大変だろうけど、踏ん張ろうぜ。」
「うえーん、眠いよう……」
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そして、夕刻――
赤みがかった陽が地平線に沈み、あたりに暗がりが満ちてきた頃。
「――おかえり、みんな! 待ちわびたよ! どうだった!?」
人形たちは次々と姿を現し、エイムのもとに集まる。
彼女はひとりひとりの報告を真剣な表情で聞き、短くメモを取りながら情報をまとめていく。
「ふむふむ……手足の激しい痛み、茶色い尿……
痛む箇所には変色があって、あの斑点もその近くに……
でも、今のところ死者はいない……」
その傍らで、シラセはまたしても周囲に何かの気配を感じ取った。
ここ数日、視界の隅で何度も感じていた小さな“動き”の正体が、ずっと引っかかっていた。
今度こそ見逃すまいと、目を凝らす。
……そして、ついにその姿を捉えた。
その瞬間、脳内に電流が走るような衝撃が駆け抜けた。すべてが繋がった気がした。
「エイム!」
シラセは声を張った。
「その斑点の数は、いくつだ!?」
「え、斑点の……数? うーん、みんな、わかる?」
数秒の沈黙ののち、人形の一体が答える。
「ᚠᚢᛏᚨᛏᛋᚢ ᛞᚨᛏᛏᛖ ᛃᛟ!」
「斑点は……二つ…。」
その答えを聞いた瞬間、シラセの顔に確信の色が満ちた。
「間違いない……この病の正体は――」
沈黙の中、彼は低く震えるような声で呟いた。
「蛇だ。」
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