出るようになったのです
エイムたちは相変わらず道を歩いていた。
ずっと歩き詰めで、さすがに二人には疲労の色が見える。
しばらくすると、エイムが声を上げた。
「あっ!見て!村が見えてきたよ!」
「本当か!やっとゆっくり休めるぜ~…」
シラセの疲れた表情に、安堵が浮かぶ。
二人は期待を胸に、村へと歩みを進めた。
その村は、シラセのいた村よりも少し大きいようだった。
民家がまとまって建っており、人々はせわしなく働いている。
ただ、人々はどこか浮かないような、不安そうな表情を浮かべているのが、二人には気がかりだった。
エイムは、道行く男に話しかけた。
「あ、あの、すみません。
私たち旅をしている者で、少しこの村で休ませていただけないかと思っていまして…
村長さんと、お話をしたいのですが…」
「ああ、そうなのかい。よくいらっしゃいましたね。
村長なら、奥の方の少し大きな家に居ると思うよ。
…しかし、あんたたちも来る時期が悪かったね…」
男は少しばつが悪そうに話す。
「え、それってどういう…ことですか?」
「あ、いやあ…詳しくは村長に聞いてくれるかな。
じゃ、私はこれで。」
「あ、はい…ありがとうございます…」
エイムとシラセは不思議そうに顔を見合わせた。
「なんだろうね…?」
「わからんが、とりあえず村長の家に向かおう。」
二人は村長の家を探して、村の奥に歩いていった。
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しばらく行くと、男の言葉通り、少し大きな家があった。
エイムは少し緊張しながら、ドアをノックする。
「あの、すみません!私たちは旅の者なのですが、少しこの村でお休みさせてもらえたらと思っていまして…
一度ご挨拶をさせていただけないでしょうか?」
しばらくすると、ギィ…と音を立てて、ドアが開き、中から白髪の小柄な男が出てきた。
「やあ、旅人とは久しぶりですな。
私は村長のヘルマンと申します。
ささ、どうぞお入りください。」
「ありがとうございます。」
エイムたちは家の中に入ると、テーブルにつくよう促された。
ヘルマンはにこやかな表情を浮かべながら、柔和な様子で話しかける。
「それにしてもずいぶんお若い旅人だ。
どちらまで旅をされているのですか?」
「はい、私たちは魔法都市フィオルナを目指して旅をしています。」
「ほう!フィオルナ!それではもしかして、あなた方は魔法が使えるのですか?」
「ええ、まあ…私は全然大したことはないですが…」
「いやいや、ご謙遜なさらずに!
この時代に珍しいことだ。神に祝福されたのでしょうね、さぞめでたい!」
「あはは、どうなんでしょう…」
エイムは少し困ったように笑う。
というのも、エイムの魔法の発現は、両親が病床に付したことがきっかけだった。
エイムとしては、それが神の祝福だと言われても、素直には喜べなかった。
「それで、村長。
恥ずかしい話なんですが、かれこれ10日以上は歩き詰めで、ちょうど休憩する宿がないかと探していたところだったんです。
この村で少しの間、滞在させていただいてもよろしいでしょうか?」
「おお、それはもちろん!
この村には宿屋もありますから、ぜひそちらでお休みになってください。」
「ありがとうございます!
それで…大変お話しずらいのですが…」
「はて?どうされました?」
村長は首をかしげて尋ねる。
「実は私たち、全然お金を持っていなくて…ですね…
何かお困りごとなどありませんか?
何かあるようでしたら、そちらを解決する代わりに、宿をお貸しいただけたらありがたいなぁ…なんて…あはは…」
エイムは後ろめたそうに話す。
横に座っているシラセも、苦笑いしながら目を伏していた。
「なんと、そんなことですか!
わが村にとっても久しぶりの旅のお方だ。
それにお二人ともとても若い!お金に苦労するのもよくわかります。
宿の御代なら私が立て替えますよ、はっはっは!」
「え、いいんですか!?ありがとうございます!
でも、さすがに申し訳なさすぎます!何かお困りごとなどありませんか?
私たちにできることなら、何でもします!」
エイムがこぶしを握り、力強く尋ねる。
「…ふむ。それでは…うーん…しかし…」
村長は打ち明けるのをひどく悩んでいる様子だ。
「何かあるんですね、ぜひ話してください!」
エイムが前のめりに問いかける。
その勢いに気圧され、村長はたまらず口を開いた。
「…実は、わが村の外れに一軒、家が建っているのですが…
しばらく前から…出るようになったのです…」
「出る…一体なにがですか!?」
「………亡霊です…」
「…亡…霊…!?」
エイムとシラセは、互いに顔を見合わせた。
言葉を交わさずとも、二人の表情が、雲行きの怪しさを物語っていた。
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