魔獣「ガルム」
その場の凄まじい気迫に飲まれながら、呆然とするエイムとシラセ。
エイムは全身から力が抜け、膝をついている。
だが、シラセはハッと何かに気づいたように、目の前の巨大な狼を見据えた。
眼は大きく開かれ、何かを確かめるようにそれを凝視する。
「巨大な狼…黒い毛皮…口からあふれだす炎…漆黒の閃光…」
ぶつぶつ何かをつぶやきながら、目が小刻みに動いて細部を観察している。
そして、口を開いた。
「…あいつ…ガルムだ…」
「…え…?」
エイムが力なく聞き返す。
「…間違いない。あいつは、過去に守護英雄様が討伐したはずの魔獣『ガルム』だ!!」
「え…どうしてもういないはずの魔獣が…?」
「そんなのはわかんねえよ!でも、あれは確かにガルムだ!
何度も何度も聞いた英雄譚の特徴と、ぴったり一致するんだよ!
…なあエイム。お前、もう一回さっきの蹴り、できるか…?」
「え…力は、たぶんあと一回分残っている…けど、効かなかったんだよ…?」
「あいつには弱点があんだよ!それは腹だ!!
守護英雄様も、あいつにはどんな攻撃も通じなかったんだ!
全身が鋼鉄の毛皮に覆われてるからな…でも、あいつの腹にだけは攻撃が通ったんだ!」
「え…それじゃあ私の攻撃も、もしかしたら…」
「ああ、通るかもしれねえ!エイム、まだあきらめるのは早えぞ!!
絶対村の人を救うんだろ!?!?」
「う、うん!もう一回なら……やれる!!シラセ、他に何か情報は!?」
「ああ。英雄譚だと、ガルムは太陽の光を嫌ったって話だ!
だからあいつ、最初は森の中にいたんだろうな…
あとな、あのでたらめな黒い閃光、3回までしか打てないはずだ!
威力が桁違いなだけに、相当なマナを消費するんだろう…
守護英雄様も、途中から閃光を打ってこないことに気づいて、接近戦であいつを討伐したんだ!」
「じゃあ、あとは2回ってことだね…それに、太陽の光…わかった、何とかする!」
ゴォォオオオオ…
震えあがるような低い音が、二人の話を遮った。
ガルムを見ると、口の前に黒い炎が渦を巻きながら凝縮している。
キィィイイイイイイイイイイイン!!!!!
「危ない!」
エイムはとっさに、マナブーストで加速し、シラセを抱きかかえて黒い閃光を回避した。
閃光は1発目同様、後ろの木々を容赦なく貫いた。
「おい、エイム!残りのマナは大丈夫なのか!?」
「うん、まだ大丈夫!ブーストはインパクトに比べて消費量は少ないから!
それよりも、あと一発だね!」
「あ、ああ!
あと一発かわせれば、まだ勝機はあるぞ!」
「グルルルルル…」
ガルムは、距離を取りながらエイムを凝視していた。
先ほどと違い、近づくのを躊躇っている様子だった。
「エイム!さっきの攻撃は無駄じゃないぞ!
あいつ、お前との接近戦を警戒してやがる!」
「だったらッ!!」
エイムは一気にガルムに向かって駆け出した。
ガルムは、近づかれるのを嫌がるように後退り、口の前で再度炎を凝縮させた。
(大丈夫!あの攻撃は威力はすごいけど、軌道が直線的だった!
それに、炎が集まる予備動作もある!あとは、首の動きに注意を払えば…!)
ガルムは首を一気に横に振り、まるで空気をなぎ倒すかのように黒い閃光を放つ。
キィィイイイイイイイイイイイン!!
(横一線!)
エイムは高く跳躍した。
閃光はブーツの先をかすめ、奥の木々をことごとく破壊した。
「ヒッ…」
シラセも間一髪でかがみ、閃光を免れていた。
「あ、あぶねぇ!!!…でも!!」
「もうあの攻撃はない!」
エイムとシラセは叫んだ。
エイムはさらにガルムに向かって突き進んでいく。
「行けえええエイム!!」
シラセが叫ぶ。
その時だった。
エイムの足が何かに引っ掛かり、エイムは倒れ込んだ。
見ると、そこには引きちぎられたフラッシュバインドの蔦が散らばっていた。
ガルムはその瞬間を見逃さなかった。
「グァァアアアアアア!!!!」
ガルムはエイムを八つ裂きにしようと、とてつもない速さで突進し、そしてエイムに飛び掛かった。
「おい!!エイムッ!!!!逃げろぉぉおお!!!!」
シラセは叫ぶ。
エイムはただ、飛び掛かってくるガルムを見上げていた。
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