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エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー守護英雄の村編ー
12/60

凝縮された悪意

エイムたちは、引き続き上流を目指して進んでいた。

山の中腹くらいまで来ただろうか。

木々が生い茂っていた山道だったが、森にぽっかり穴が開いたように木々がないところに出た。

地面も比較的平らになっており、昨日歩いた平原を彷彿とさせる。

それほど広くはないが、そこには太陽の光が降り注ぐため、様々な植物が自分を誇るように色とりどりの花を咲かせていた。


「うわあ、綺麗なところだね!」


「ああ、なんかここだけ生き生きしてるみたいだな」


開けた地面の中央あたりを、さらさらと小川が流れており、エイムたちは川沿いを歩いていく。


すると、エイムは怪訝そうな声で言った。

「え…何だろうあれ…」


エイムが指さす先。

そこには、川沿いに群生して咲いている花があった。


ただ、その花の色は真っ赤な血のようであり、茎や葉は漆黒に染まっている。

その異様な色合いは、怪しい美しさを醸しながらも、それをかき消すほどの禍々しさを纏っていた。


「エイム、あれって…」

シラセが警戒した様子で言う。


「うん、あの異様な感じ。間違いなく魔法植物だ…

 慎重に近づいて観察しよう。」

エイムも、声を潜めるように言った。


二人は恐る恐る近づいて、その異様な植物を観察した。

近くで見ると、その異様さは際立っていた。

というのも、ところどころにわずかだが緑色が残っており、赤や漆黒は、血管が走るかのように全体に広がっていたのだ。

まるで、誰かが()()()()()()()()()()()()かのように。


「…ものすごく嫌な感じがする…」

エイムは額に汗を浮かべながら続ける。


「魔法植物には、普通の植物にはない違和感があるって言ったでしょ。

 でも、これはそんなレベルじゃない。

 自然に発生した魔法植物とは…到底思えない…」

エイムは、忌むべき何かを目にしたかのように顔をゆがめた。


「…もしかして、誰かが作り出した魔法植物…てことか…?」


「…その可能性は、否定できない…

 とにかく、この植物が病気の原因で間違いないと思う。

 シラセ、私に何かあったら…頼むね。」

エイムは決意を固めたようにそう言い、その禍々しい何かに、手を伸ばす。


「おい、エイム!大丈夫なのか!?」

シラセは慌てて制止しようとするが、すでにエイムはそれに触れていた。


「…うん。何ともないみたい。

 とにかく、この植物を駆除して、村の人々の経過を見よう。」


エイムがそう言い終えたときだった。



「ピィィィイイイイイ!!!!!!」



ピーちゃんがけたたましく鳴いた。

視線はまっすぐ、奥の森の中を見つめている。


「なんだ!?」

シラセとエイムも、慌ててそちらを向いた。


――――少し離れた森の中。

鬱蒼としている森は、日が当たるところから見ると、昼間でも不気味な闇が横たわっているように見えた。


そして。


その闇の中に、二つの大きな眼が鋭い眼光でこちらを睨んでいた。

明らかに、危険なもの。

二人の背筋は一瞬で凍り、全身から汗が噴き出してくる。


「なん…だ…あれ…」

シラセは、まるで足元から大地に吸い込まれるような感覚に囚われていた。

恐怖が全身を硬直させ、緊張が体を石に変えたかのようだった。


()()が、口を開いた。

その口からは、悪意が満ちたような漆黒の炎が漏れ出している。

そして、その黒い炎が口の前で一点に凝縮するような動きを見せた。


――瞬間。


「ガァァアアアアアアァァアアアアア!!!!!」


大地を震わせるような咆哮が響き渡り、空気を裂く黒い閃光が、シラセへと一直線に放たれた。


「危ない!!」

エイムはとっさに、シラセの方へ駆け出していた。

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